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40 極悪非道エルフの国滅ぼし ~セレナディア皇国編~ 2

どことなく余所余所しい態度を取るリンドール王に、違和感を抱きながらルナリアは彼の後ろについて歩き城の廊下をひたすら進んでいく。


廊下を三度右に曲がり、豪華な扉が立ち並ぶ場所に来ると、ルナリアは勝手に手近の扉を蹴り開けた。


「…………宝物庫じゃないのか」


中には高級そうな家具とベッドが置かれており、王族の部屋かと思うほど豪華な内装が施されている。

残念そうに首を振るとルナリアは静かに扉を閉めた。


「この通路にあるのは来賓用の部屋だけだ」


そう言うとリンドール王はルナリアが開けたのとは別の扉を開いて、ルナリアに入るよう促す。


ルナリアは中に入るとインテリアを物色し、やがて溜め息を吐いた。


「何だ、詰まらない部屋だな」


「そう言うな、これから貴様が一生を過ごす部屋だ」


そう言うとリンドール王は中にルナリアを残したまま部屋の扉を閉め、鍵を掛ける。


どうやら素直に部屋に入ったのが間違いだったらしい。

ルナリアは慌てて扉を確認するが内側には鍵が付いておらず、完全に閉じ込められてしまっていた。


「リンドール、どういう積もりだ?」


冷静を装いながらルナリアは彼に問い掛ける。


「馬鹿な契約者め、私が素直に詫びるとでも思ったか」


だがリンドール王は態度を一変させ、扉の先でルナリアを嘲笑する。


「あ?殺すぞ?」


ドゴォォォォオン!!


ルナリアの蹴りによって轟音が響き渡るが、扉には傷一つ付いていない。


「無駄だ。ドワーフに作らせた扉だ貴様の如何なる力も通用しない」


「何だと…………?」


「此処で我が主の偉業を指をくわえて見ているがいい、間抜けめ」


「お前、レイドールとグルだったのか……!」


「御名答、リュクセリ王もまた我が盟友だ」


嘲け笑うような声色でリンドール王はそう語る。

ルナリアは諦めたように溜め息をつくと、矢筒を外して弓と共に壁に立て掛け、部屋のベッドに寝転ぶ。


「まぁ、大人しくしていれば悪いようにはしない」


子供に語り掛けるように優しく言うと、リンドール王は何処かへ歩き去った。


去っていく足音を聞きながらルナリアは欠伸をして目を閉じる。


「…………カインがどうにかするだろ?」


呑気な師は仕事を弟子に任せ、睡眠を取ることにした。



$$$



時を遡ること十数分。

師を見送った弟子はのんびりと町の中を歩いていた。

視線避けの魔法が掛かったマントのお陰か、カインは誰にも気付かれる事無く街を歩けている。


「…………ひまだね」


誰にも話し掛けられずにいるのだから当然だ。

騒が往来を横目に、カインは行く宛もなく歩き続ける。



街を歩くこと十五分、カインは噴水のある広場に出た。

綺麗な水を吹き上げる噴水の周りでは若いカップル達がイチャついており、ここが定番のデートスポットであることが嫌でも分かる有り様だ。

カインは一人寂しく噴水の縁に腰掛けると、空を見上げる。


「つまんない…………」


「ホッホッホッ。たそがれておるな、カインよ」


ふと隣を見れば髭を蓄えて杖を持った老人がいつのまにか現れていた。


「おじーさん!」


「ホッホッホッ、師匠と呼べと何度も言っておるだろう」


そう言って老人はカインの隣に座り、ポケットから林檎を二つ取り出す。


「もう、ししょうじゃないよ」


カインはプーッと頬を膨らませてそう言うと、老人から林檎を掠め取って一口かじった。

そして飲み込む前に吐き捨てると、噴水の水で口をゆすぐ。


「ほほぉ、流石は我が弟子。毒に気付いたか!」


感心したように笑って林檎を取り返すと、老人はそれを遠くへと投げ捨てた。


「…………もう、おじーさんのでしじゃない」


殺意を込めて答えると、カインは魔力を展開して老人に脅しをかける。

対する老人は肩をすくめておどけると、スッと立ち上がり、愉快そうに笑った。


「ホッホッホッ、脅しとしては悪くない。良かろう、ならば卒業試験といこう」


「そつぎょうしけん?」


「簡単なことよ、此処で生き残って見せよ」


そう言うと老人はカインのマントを取り払い、燃やしてしまった。


「なにするの!?」


思わずそう叫び、カインは老人に掴み掛かる。


「ホッホッホッ、大きい声は出すものではないぞ。ほれ、周りの者達が見ておる」


老人は楽し気に笑って言うとカインの腕から素早く抜け出し、魔法陣を展開した。


「にげるのっ!?」


食い掛かるようにそう叫ぶカイン。

だが、老人はカインの事を歯牙にも掛けず、余裕そうに笑っている。


「カインよ、躊躇うでないぞ?我とあの娘……いやトルテナコルトとルナリアの弟子ならば、この程度の事で心を痛めるなど言語道断だ」


言いたいことを言い終えたのか、トルテナコルトはカインに手を振って何処かへ転移してしまった。



「むー、おねーさんのまんと、もやされちゃった…………」


哀しげにそう言うとカインはその場に座り込む。

だが、そんな彼に追い打ちをかけるかのように声は響いた。


「い、忌子だ!」


思わず顔を上げたカインが見たのは、自分を囲うようにして集まった人達の、恐れと蔑みの入り交じった表情かおだった。

【ルナリア用の座敷牢】

かつてドワーフが作り上げた劣化しない金属をふんだんに使った造られた部屋。

元々はルナリアが魔力を出してリラックスするために造られたが、今回は悪用された。

金属としてもかなり硬い。


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