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33 極悪非道エルフと騒動の気配 2

「ルーナ、あんた今度は何をしたんだい?」


「エルフには何もして…………るな。フォールンエルフの王女の指を折らせた覚えがある」


しかしフォールンエルフとエルフは仲が非常に悪く、口実にするには無理がある、というのがルナリアの見解だ。


「その程度でハイエルフとやらが動くのかい?」


落としていた杖を拾い上げ、サリアナはハイエルフ達に鋭い視線を向けた。

だが、彼等は動ずることなく包囲の輪を縮めつづけている。


「いや、普通なら動かないな。まぁ、ここ数日気配は感じてたけどよ」


「何で殺さなかったのさ?」


訝しげにそう聞くサリアナ。

対するルナリアは魔法陣を展開しているエルフを射抜くと、ばつが悪そうに頬を掻いた。


「殺意は時々しかないから放っておいた…………やっぱり始末するべきだったか」


「随分と平和ボケしてるじゃないの」


呆れたように眉をハの字に曲げると、サリアナはルナリアの背中をポンポンと叩いた。


「煩い、弟子の前では極力優しく振る舞ってるんだよ!」


不機嫌そうにそう返すと、ルナリアは再び矢をつがえ、魔力を込める。

すぐさま矢はポゥと赤い光を帯び、ルナリアの邪悪な笑みを照らしあげた。


すると弓を構えていたハイエルフは歯をギリギリ鳴らし、怒りに満ちた顔をルナリアに向ける。


「エルフの恥がっ!ここで死ね!」


そう言って彼は怒りを籠めた矢を放つ。

だがルナリアにその程度の矢が通用する筈もなく、彼の矢は指先で摘ままれ、軽々と受け止められた。


受け止めた矢を別のハイエルフに投げ付け、その頭を貫くと、ルナリアは嘲笑うように笑い、先程矢を放った男に侮蔑の視線を向ける。


「エルフの恥?世界の恥が何を言ってるんだ?」


「貴様ァァァァア!!」


種族全体を侮辱する言葉に怒り狂い、彼は仲間の制止を振り切ってルナリアへと突進し始めた。

やれやれと言うように首を振ると、ルナリアは魔力を籠めた矢をつがえ直し、彼の腹部に正確に照準を合わせる。


「中身のない会話は終わりだ、【禁弓三式 黄釣船】」


ルナリアが放った矢は見事な速さでハイエルフまで到達し、彼の腹部に突き刺さった。


「あっ…………が……!」


思わず膝を着き、痛みに苦しむハイエルフ。

だが禁弓がこの程度である筈がないのを彼は知らなかった。


「…………始まったな」


突き刺さった矢を中心に魔法陣が展開され、瞬時に彼の腹部は円状に白骨化された。

そして数秒後には魔法陣から発動された魔法が、彼の身体中に巡る魔力に干渉しはじめる。

満足そうにそれを眺めながら、ルナリアは懐中時計を取り出してカウントダウンを始めた。


「3、2、1―――」


何が起こるのかと膝をついた仲間に不安の目差しを向けるハイエルフ達を他所に、ルナリアは冷酷にカウントダウンを続けた。


「―――0」


次の瞬間、彼の体が爆散した。


「「っ!?」」


途端にハイエルフ達に緊張が走る。

中には呆然として座り込む者もいた。


「怯むなっ!構えろ!」


だが、隊長と思われる男の一声でハイエルフ達はハッと正気に戻り、剣や弓を構える。


しかしそんなことを気にすることなく、顔に張り付いた肉片を剥がしながら、サリアナは不機嫌そうにルナリアをバシバシ叩いた。


「ルーナ、誰が掃除をすると思ってるんだい?」


「どうせトンジャだろ?…………痛ッ!」


ルナリアが笑いながら言った瞬間、彼女の頭に林檎が炸裂する。

ルナリアが慌てて周囲を確認すると、先程と同じ窓からトンジャが首を出してギャーギャー喚いていた。

…………マイブームか何かなのか?


「ざっけんじゃねぇぞっ!!誰が後始末なんかやるかっ!!スカトンチキッ!!」


それだけ叫ぶと再び首を引っ込めて窓をバタンッと閉めた。


「サリアナ、後でこき使ってやれ」


「元からそのつもりさね」


フンッと鼻を鳴らしてサリアナは窓を忌々しそうに見詰める。



そんな和やかな雰囲気を壊すかのように、ハイエルフ達はなにも言わず二人に対して一斉に弓を射かけてきた。


咄嗟にルナリアはサリアナに足払いをかけて地面に転がし、ナイフを使って矢を叩き落としていく。


矢の雨が収まるとルナリアはサリアナを立たせ、彼女の小さな背中をポンポンと叩いた。


「サリアナ、今のうちに中に戻ってろ。流石に遊んでる場合じゃないらしい」


「おやそうかい。それなら高みの乾物とさせて貰おうかい」


「高みの見物だろ?」


…………干されるつもりなのだろうか?

ルナリアは眉をひそめて聞き返す。


「私等は乾いてシワシワだからね乾物みたいなもんさ!」


そう言ってケタケタ笑いながらサリアナは豪邸の中へと逃げていった。


彼女が逃げたのを確認すると、ルナリアはハイエルフ達に冷たい目を向ける。


「さぁて、珍しく戦ってやる。覚悟しろよ?」


そう言うルナリアの目は真っ赤に光っていた。

【禁弓三式 黄釣船】

刺さった物体の魔力を暴走させ、対象の内側から壊していく術。

エルフやドラゴンなど、高い魔力を保有する者に使うと大抵爆散する。


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