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26 極悪非道エルフの指導方針 1

二件目のレビューを頂きました!

山吹こより様ありがとうございます。

騎士団長の案件から一朝明け、ルナリアによる本格的な修行が始まった。

アイテルとの協議の結果、今日はあまり激しい運動はせずに基礎的な運動をする事になった。

ルナリアとしては物足りない感じだ。

まぁ、カインの基礎能力を見れるからいいんだが。



一番街を一周し終えた二人はスタート地点であるグールの歓楽庵で立ち止まると伸びをして、ふぅと息を吐いた。


「よーし、休憩!」


「わーい!」


10km走ったとは思えない笑顔を浮かべ、カインはルナリアに駆け寄る。

予想外の体力にルナリアは少し驚いたような顔をしてカインの頭を撫でた。


「持久力は問題ないな。というか、かなり良い」


「ほんと!?」


「あぁ、本当だ。速度も中々速いし、暗殺と虐殺両方できる万能型だな」


「ほっほっほ、それは将来が楽しみじゃ」


そう言って笑う老人は野次馬一号のカイザナスだ。

ルナリアが弟子をとったのを聞き付けたらしく夕方から二人に付いて回り、今は店の前で修行の様子を眺めている。


「当たり前です。カイン様が大成しない筈が有りません。あ、お水をお持ちしました」


さも当たり前のようにルナリアに水筒を二つ渡すメイドは野次馬二号のマーナだ。

再雇用先が決まらないらしく暫く地下街モルガルに拠点を置くらしい。

一日で雇用先が見つからないなんて、などとぼやいていたが、今まで一日以内に雇用先が見付かっていたのが不思議だ。

因みにマーナの祖母とカイザナスは面識があったらしく、案外二人とも仲良くしている。


ルナリアはマーナから水筒を受け取ると一つをカインに手渡した。


「ありがとな!」


「まーな、ありがとー」


「当然の事をしているだけです」


そう言ってマーナは頬を赤く染める。

成る程ショタコンか、世界は平和だな。


水筒の中身を全て飲み干すと、ルナリアは徐に口を開いた。


「なぁ、マーナ。カインに何をどれくらい教えた?」


「物語を読み聞かせるのに必要な知識だけです」


「…………一体何を読み聞かせた?」


「地下に咲く雛菊、白百合の地獄郷ディストピア、黒薔薇讃歌、他には…………」


「ドロドロした恋愛小説オンパレードだな!?」


しかも全て同じ作者の本である。


「ええ、今のうちに女の恐ろしさを伝えておかねばと思いまして」


「その割りにあんまり怖がられてないな?」


「読み終わる度に私はこんな女達とは違って、純情で可憐だとお伝えしましたから」


「洗脳じゃねぇか!」


苦々しい顔をしてルナリアが叫ぶと、マーナは人聞きの悪い、と呟いてそっぽ向いてしまう。

これ以上この話をしても意味が無いと判断し、ルナリアは水分補給を終えて退屈そうにしているカインの肩を叩いた。


「ほら、次は瞬発力を鍛えるぞ」


「うん!」


笑いながら歩き去る師弟の背中を見送りながら、カイザナスは脱力するように溜め息を吐く。


「如何なさいましたか?」


カイザナスの様子を不思議に思い、マーナは水筒を鞄に仕舞いながら首を傾げた。


「いやなに、最近の若者は随分と優秀なものだと思うてな」


「と、言いますと?」


「カインはあの距離を30分で走り終えておる。しかも息を乱さずにだ。あの子がルナリアの弟子になったとなると、世界が滅ぶかもしれん」


「まさか、そんなこと…………」


突拍子もない懸念を笑い飛ばせるほど二人は無知ではなかった。



$$$



瞬発力を鍛える、という名目で行われるのは反復横跳びの計測だ。

中央広場にチョークで三本の線を引くと、ルナリアはカインを中央の線を跨ぐようにして立たせる。


「いいか、私が始めって言ったら左右に動いてラインを跨げ。一回跨ぐごとにカウントするからな」


「うん!」


元気に答えたカインは、その場で開始の合図を今か今かと待っている。

ルナリアはポケットから懐中時計を取り出すと、針が真上を指した瞬間、声を張り上げた。


「始めっ!」


途端に凄まじい速度でカインが動き始め、衝撃で石畳がひび割れる。

道行く人は足を止めてカインを信じられないという目で見た。



「止めっ!」


二十秒経った所でルナリアは鋭く合図を出し、時計を仕舞いながら苦笑いを浮かべた。


「54回か」


「うん!」


反復横跳びを終えたカインは物足りないと言うようにチョークで描かれた線の上をピョンピョンと跳ね回っている。

その様子を見てルナリアはフッと楽しげに笑い、カインの頭を撫でた。


「カイン、真ん中の線もしっかり跨げ。今の記録は54回だが、真ん中の線を踏んでたなら90回だからな?」


「ええ、そうなの!?」


「そうだよ、昔の私と同じくらいだ」


どこか遠い目でそう言うと、ルナリアは撫でる手を止めて手をパンパンと叩く。

すると魚を咥えたマシュリがパタパタと走ってきた。


「ふぁにふぁ、ほようれふはは?(何かご用ですかにゃ?)」


「よく落とさないで話せるな…………水を持ってきてくれ」


「ふぁふぁいまひはは(分かりましたにゃ)」


器用に返事をするとマシュリは宿に戻っていった。

その後ろ姿を見送ると、ルナリアはカインの様子を確かめながら次の訓練を考える。

やがて、ある確信に至ると不敵に笑った。


「水飲んで休憩したら、今度は実戦的な修行に移るぞ」


「うん!分かった!」

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