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25 極悪非道エルフの報告会

「あ、おねーさん!みてみて!ほんとにしたが、おどってるよ!」


厨房に行ったルナリアを待っていたのは無邪気な笑顔を浮かべたカインと、青白い顔をして座り込んでいるマシュリ、そして我関せずというように明後日の方向を見ているホルトだった。

あと、熱したフライパンの上で元気に跳ね回る元騎士団長の舌もいる。


ルナリアは心配して損した、と楽しそうに呟いてカインに笑いかけた。


「どうだ、面白いだろ?」


「うん!」


「何も面白くないにゃ!何なのにゃ、この子!?正直、怖いにゃ!」


笑い合う師弟に向かってそう叫び散らすと、マシュリはホルトの後ろに隠れる。

その様子を見て二人は再び笑っていたが、暫くするとカインがマシュリを指差して首を傾げた。


「ねー、おねーさん。なんであのひとねこのみみがついてるの?」


「その方が可愛くなると思ったから私が付けさせた」


「おねーさんはつけないの?」


「似合わないし、柄でもないから付けないな」


「ふーん」


つまらなさそうに頷いていたカインだが、何か思い付いたのか膨らんだポケットから心臓を取り出した。

何をする積もりだ?


「ねー、ねこみみのひと。これとみみをこうかんしてほしいんだけど……」


「ひ、にゃ…………」


カインによって差し出された心臓を前に、マシュリは白目を剥いて気絶した。

まぁ、初めて見たなら気絶するだろうな。

何せまだ鼓動してる。


何故気絶したのか理解できないのかカインは首を傾げていたが、おもむろによしっ!と頷いてルナリアを見上げた。


「おねーさん、ないふかして!」


「…………何をする積もりだ?」


「あのひとのねこみみをとって、おねーさんにつける」


ルナリアはカインにデコピンをかました後、腰に手を当てて溜め息を吐き、あきれたような顔をする。


「あのなぁ、仲間を手に掛けるのは御法度だ」


「なかま?」


そう言って首を傾げるカイン。

あのメイドのせいか?知識が偏ってる。


「自分の命を預けられる人間だと思え」


「うん!」


「いい返事だ。今気絶したマシュリと、そこに突っ立ってるホルト、後はさっき叩いてきたアイテルも仲間だ」


「わかったよ、おねーさん」


笑ってそう答えるカインとは対照的に、ホルトは苦々しい顔をルナリアに向ける。


「所でルナリア様、その方はご子息ですか?」


「お前の目は節穴か?どこも似てないだろ」


「えぇ、似てますね。趣味が」


「煩い、黙れ…………全部説明してやるからエントランスに来い」


吐き捨てるようにそう言うとルナリアはエントランスへと戻っていく。

その後をカインはトテトテとついていった。



$$$



エントランスには笑い声や、悲鳴など舞台劇を見ているかのような声が響いている。

その原因であるルナリアは、全て話し終えるとワインの代わりに飲んでいる葡萄ジュースを飲み干した。

一方、話を聞き終えた三人はふーっと息を吐いて食事を再開する。

感心しているのか、呆れているのか、分からないな。


「で、嘘を省くとどうなるの?」


「五分間必死に話し続けた人間に言うことがそれか?」


今日あった事を簡単に説明したばかりのルナリアは、そう言って不服そうに眉をひそめる。


「申し訳無いと思ってるわよ。でもね、調査を依頼された筈なのに、到着と同時に門番を殺害して、明らかに待ち伏せしていた部隊を壊滅させるなんて信じたくないのだけれど?」


「その後、物騒なメイドの戦術指南もやったぞ?」


「使用人の大虐殺もね」


皮肉めいた口調でそう言うと、アイテルはハンバーグを切って口に放り込む。

それを横目にルナリアはパンを美味しそうに頬張るカインの頭を撫でた。


「あと、肉のオブジェも作ったよな?」


「うん!」


吐き出しそうになったハンバーグをなんとか飲み込むと、アイテルは抗議の視線をルナリアに送る。


「お願いだからその話はやめて。お肉が食べられなくなるわ」


「何だよ一番面白いとこなのに」


「ねー?」


イカれた師弟は揃って残念そうに首を振ると食事を再開する。

二人の反応に納得がいかないのかアイテルは不服そうな目でルナリアを見ていたが、溜め息を吐くと諦めたように笑った。


「まぁ、いいわ。それよりカインがここに住むことについてだけれど、全部屋貴女が借りてるわけだから一緒に住むのは反対しないわ」


「迷惑掛けると思うが大目に見てやってくれ」


「貴女がいる時点で多大な迷惑を被ってるから、今更一人増えたって大したことないわ」


したり顔でそう言うと、アイテルは徐に立ち上がり、ドアを開けて宿の外へ向かう。


「どうした?」


「決まってるでしょ?今日の収穫がどれくらいか見たいのよ」


そう言ってアイテルがパチンッと指を鳴らすと、宝物庫にあった物が次々と広場に現れる。

全ての財宝が転移し終えると、アイテルは目を輝かせてルナリアを見た。


「流石、私のルナリアね!」


「黙ってヨーソルから商人をかき集めろ、セクハラレズ野郎。競りの時間だ」


そう言ってルナリアは弓を肩に掛けて広場に出ていく。

あまりにも常識を逸脱した光景に、マシュリとホルトは数時間前に聞いたアイテルの言葉を思い出した。


帰ってくる頃にはルナリアは億万長者になっている、と。



$$$



【最終リザルト】


報酬

前金……金貨5枚

競りでの儲け……金貨1000枚強

弟子一人

その他情報多数


備考

リリが作ったケーキは案外美味しかった

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