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14 極悪非道エルフと猫少女 4

「お待たせにゃ!鼠を三匹捕まえてきたにゃ!」


そう言って笑うマシュリの髪は、色が黒からピンクに変わっている。

髪の長さは相変わらず肩までと変わらないが。


その上彼女は、左手に暴れまわる二匹の鼠を、右手に縄を持っていた。

縄の先を見たルナリアとホルトは互いの顔を見合わせ、何も言うことができなくなる。


「おい!縄をほどけ!さもないと殺すぞ!」


縄の先には髭面のいかにも悪そうな男が縄でぐるぐる巻きにされ、引き摺られていた。


「なぁ、マシュリ。そこで汚い声を上げてるのは何だ?」


ルナリアが憂鬱そうに額を押さえながら聞くと、マシュリはニコーッと笑う。


「地下の薬品庫に入り込んでた鼠にゃ!」


「鼠の意味が違ぇよ!まあ良い、残りの二匹をくれ」


「はいにゃ!ってホルト君生きてるのにゃ!?」


鼠を渡しながらマシュリはホルトを見て驚く。

ホルトはそんな彼女を見ると、どこか嬉しそうに笑って頷いた。


「えぇ、少し寝ていただけですよ。マシュリさんこそ髪の色が変わってますよ?」


「鼠を追いかけてるときに薬壺を割っちゃったのにゃ。散々薬を被って気が付いたらこうなってたにゃ。……変、かにゃ?」


「変じゃないです。とても可愛いですよ」


幸せそうな雰囲気を醸し出す二人を横目に、ルナリアは鼠二匹を掴み上げる。

心なしか鼠もイチャイチャしている様に見えた。

……別に羨ましくはない。


自分にそう言い訳しながらルナリアは二匹に向けて手をかざす。


「ルナリア・フォルメールの名において、貴様等の魂を召し上げる」


そう言うと鼠の体から光の玉がフワフワと出てくる。

それと同時に鼠達は糸が切れたように全く動かなくなった。

二つある玉を左手に載せると、ルナリアは空いた右手で印を結ぶ。


「【療霧よ来たれ。彼の者を包み、癒し、傷を塞げ】」


途端に玉は緑色に光りだし、細かく砕けて光り輝く霧になる。

ルナリアがホルトを指差すと霧は彼を包み込み、しばらくすると消えた。


「これで体はいつも通りの筈だ、直ってない所があるなら言えよ?生け贄の在庫はまだある」


そう言うとルナリアはニヤッと笑って髭面の男を指差す。

苦笑いを浮かべながらホルトは体の調子を確かめていたが、やがて信じられないというように目を見開た。


「凄いですね、どこも痛みません!」


「当然だ、わざわざ私が術を使ってやったんだからな」


そう言ってルナリアは胸を反らす。

一方手を叩いて喜んでいたマシュリは、足元に転がる大鼠の事を思い出して首を傾げた。


「ルナリアさん、この鼠はどうするのにゃ?」


「そいつか……」


ルナリアは顎に手を当ててしばらく考えていたが、何か思い付いたのか手をポンッと打って笑った。


「マシュリ、ペンと紙を寄越せ」


「はいにゃ」


ルナリアが手を出すと、マシュリは受付のカウンターからメモ用紙と万年筆を拝借して彼女に渡した。

すぐさまルナリアは紙に何かを書き付け、三回読み直してからマシュリにそれを差し出す。


「何にゃ?これ」


「紹介状だ。これを三番街三区にあるベヒモスの極楽館っていう店に大鼠と一緒に持っていけ」


マシュリが首を傾げてそれを受け取ると、男は目を見開いて驚きの声を上げた。


「げっ!?何だってそんなところに!?」


「にゃ!分かったにゃ!」


「分からないでくれ!いっそのこと殺してくれ!」


男の悲鳴を黙殺したマシュリは彼を引き摺りながら外へと走っていった。


笑顔で手を振って見送りをしていたホルトは二人の姿が見えなくなると首を傾げる。


「何故あれほど嫌がるのでしょうか?」


「そうかお前は知らないのか。ベヒモスの極楽館はな……ゲイの相手を専門にしてる娼館なんだよ」


どこか楽しげにそう答えるルナリアに対して、ホルトは顔を真っ青にしてカタカタと震える。


「それでは彼は……」


「安心しろ、私が送り込んだ奴は全員大成した。あいつも新しい扉を開いてしぶとく生き残るさ」


そう言って笑うと、ルナリアはポケットから干し肉を取り出して、美味しそうに食べ始める。


二度とこの人には嘘を吐かない。

ホルトは心の底からそう誓った。



$$$



【最終リザルト】


報酬

マシュリが格段に可愛くなった

金貨10枚(ベヒモスの極楽館からの紹介料)


備考

男は入店直後から指名が殺到し、店の看板男として名を馳せている


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