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佐藤さん家の3つ子  作者: 夜凪


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うちの子達最強!2

お母さん視点です


神社の境内で泣いてた迷子の子を拾ったら、別の世界の住人だった。

猫耳可愛いと思ってたら実は白虎さんだったのはご愛嬌。


迎えが来るとのことだったので、とりあえずそれまで保護してたら、いざお迎えが来て帰るってなった時にセロ君が星矢にしがみつき、一緒に消えそうな星矢に慌てて飛びついた太陽と月乃まで一緒に居なくなってしまった。


一瞬呆然としたけど、セロ君のお迎えも10日くらいで来た事だし、遅くともそれくらいで帰って来るでしょ。

お礼の品として置いていかれたクッキーみたいなお菓子を頬張りながら、そう自分に言い聞かせる。

あ、これ、おいしい。


太陽はしっかり者だし、星矢はマイペースキング。月乃はチョット心配だけど、開き直ったら1番強いし大丈夫でしょ。

何より、3人一緒ならどこだってなにがあったって大丈夫。

チョット羨ましいくらい通じ合ってるもんねぇ。

さすが3つ子。




それにしても、異世界かぁ〜。

良いなぁ。

どんな所なんだろう。

セロ君みたいにケモ耳ついた人がいっぱいなんだろうなぁ。

魔法使いさんには兎耳ついてたし。


不意に脳裏をよぎるのは虹色の瞳。

あの人達も異世界の住人っぽかったよなぁ。

獣耳や尻尾は見た限りなかったから、また別の世界だったのかな?


あの子達が産まれてからやたらと運が良くなったのは、あの2人がなにかしたんだと確信してる。

じゃないと、後ろ盾皆無の孤児が3人もの子供を育てていけるはずがない。


近所の福引から宝くじまで。

総額にしたら相当なものだと思う。

のに、1つ1つは「ラッキーだね」ってくらいだからあんまり周りに気づかれないんだよね。

ありがたい。


宝くじなら5等程度。福引なら2等とか3等。

決して目立たない、けど、当たると嬉しいレベルばかりが続けば、そりゃぁ、何かの思惑を感じるってものだ。




「あ、学校。とりあえず病欠で、…………ご近所にはセロ君を送り届けにいったって事で良いかな?」

尻尾と耳隠して、ご近所ともソコソコ交流してたから、そう不自然には思われないでしょ。

ある意味本当のことだしね。

間に連休もあるし、1週間経っても戻ってこなかったら、その時考えよう。


に、しても、1人の家って広く感じるなぁ。

そう広い空間でもないはずなのに。

なんだか寂しいから、今日はお休みだけど、職場に遊びに行っちゃおう。

マスターにもセロ君帰ったって伝えなきゃだしね。


いそいそと出かける準備をして、魔法使いさんから貰ったお菓子をお裾分けに包み、家を出る。

徒歩10分にある古民家を改造したカフェが、私の職場だ。


カウンターとテーブル席が5つ程のこじんまりとしたお店で、従業員はマスターと私の2人だけ。

マスターはその道では結構有名な人らしく、遠方からもマスターのコーヒー目当てにお客さんがやって来る隠れた名店、なんだ。

私も教えて貰ってコーヒー淹れれるようになって10年以上なるけど、未だにマスターの方が美味しいんだよね〜〜。と、いうか足元にも及ばない。


まぁ、その道数十年のマスターに勝とうなんて烏滸がましいのは分かってるけどね。

そんなマスターは白いお髭が魅力のおじ様である。

人生経験豊富な包容力の塊のような人で、コーヒーもだけどマスターの人柄に惹かれて常連になるファンもたくさんいる御仁だ。

もちろん私もファンである。


子供達は学校あるし、日中お家に1人も可哀想なので連れて来て良いかと頼み込んだセロ君の事も、あっさりと受け入れてくれた強者でもある。

警戒心の強いセロ君も直ぐに懐いてたし、ね。




「そう。セロ君、お迎え来て良かったねぇ」

今日はお休みなのでお客さん扱い。

カウンターで出して貰ったコーヒーを飲みつつ報告する私に、マスターは優しく目を細めた。

「で、子供たちもついて行っちゃったんで、寂しいから遊びに来ちゃいました」

構ってアピールをすれば、マスターが困ったように笑って肩をすくめた。


「こんなオジさんに構ってないで、若い子同士遊びに行っておいでよ」

そう。

たまに子供達が修学旅行や林間学校なんかで居なくなっちゃう時は、大抵マスターと遊んで貰っているのである。


「急な事だしみんな予定ありますもん」

なんて、確認なんてしてないけど。

拗ねたふりして言ってみる。

「僕がいつでも暇人みたいじゃないか」

少し怒ったふりをされるけど、目が笑ってるのでちっとも怖くない。

ジーッと見つめれば、マスターが降参というように軽く手を挙げた。


「夜ご飯でも行くかい?」

「パスタ食べたいです!」

ハイっと手を挙げると、カウンター越しに頭を撫でられた。

子供扱いも満足です!





少し足を伸ばして、開店したばかりという評判のイタリア料理店に連れていって貰った。

パスタも石窯ピザも美味しかった。

カプレーゼもトマトが程よく甘く、生が苦手な私でも美味しく食べれたのにびっくりだ。

一緒に飲んだワインも口当たりが良く、スルスルと入っていく。


「しかし、相変わらず星矢君は子供に懐かれるねぇ」

「そうなんですよね。太陽の方がシッカリしてるんだけど、相手が子供ってなると断トツで星矢に軍牌があがるんです。同じような顔なのに、やっぱり違うんですよね」

食後のコーヒーをのんびり楽しみつつ、子供達の話で盛り上がる。


マスターも子供達の成長を一緒に見守ってくれた人の1人だから、こんな話でも楽しくできる。

ちなみに3つ子の中では太陽が断トツでマスターに懐いてる。

どうも個人的にもちょくちょく構って貰っているらしい。

親子共々お世話になってます。


「心配、しないの?」

「しませんよ〜。私よりもあの子達の方がよっぽどシッカリしてますもん。セロ君のお家、チョット大変みたいだから、様子見に行ってくれて実はチョット安心してます」


5歳児の話から読み取っただけでも、いろいろゴタゴタしてそうだった。

なんなら命の危機がありそうなレベルで。


だから。

あの子達のラッキーパワーが、少しでもセロ君のためになってくれたら嬉しい。

少なくとも、大好きな人たちに囲まれて子供らしく笑っていられるようになる位には。


ほうっとついた息は思ってたより熱かった。ご飯が美味しかったから、調子に乗ってワイン飲みすぎたかな?

少しフワフワする感覚に押されるようにするりと言葉が滑りだす。


「たぶん、離れられないのは私の方ですよ。………でも、早ければあと数年でみんな独り立ちしちゃうんですよね………」

つぶやきと共に寂しい気持ちがジワリと湧き出てくる。同時に視界が滲んで見えた。


突然、思いもしない形で授かった子供達は、人によっては不幸の種になったのかもしれない。

だけど、独りきりだった私にとっては、紛れもなく「幸せの形」だった。


あの子達が側に来てくれて、嬉しかった。

自分に繋がるもの。

けして私を1人にしない存在。


だけど、成長と共に子供達は少しずつ離れていく。

正に身の内だった時から2つに分かれ、1人で歩き、繋いだ手は離れ、世界は広く広く、広がっていくのだ。

親としてはそれを喜ばなきゃいけないのに、浅ましい私の心は「独りにしないで」と泣きわめく。

こんな事、意地でも口にできないけど。


「うちの子達、優秀だから。あっという間に巣立っちゃいそう」

「しまった、飲ませすぎた」と向かいで困ったような声がするけど、歪む視界が恥ずかしくて顔を上げられなかった。

私、酔ってる?これって泣き上戸って感じ?

ほろほろと溢れる涙が制御できそうにない。


「大丈夫。みんないい子だから、君を1人になんてしないよ。それでも、もし、離れていく距離が寂しいなら、いつでも僕が付き合ってあげるから」

大きな手が優しく頭を撫でていく感触に、俯いた顔をあげられないまま少し笑った。

繰り返し撫でていく手が温かくて「ああ、幸せ」と脈絡もなくぼんやり思った所で意識が途切れた。













しゃくりあげる声がいつの間にか止んで、静かな寝息に変わった。

どうも、寝落ちしたらしい。

子供達が出かけた事で独りになって、寂しそうな顔が可哀想で、つい、酒量を見誤ってストップをかけそびれた。


机に突っ伏して眠っている姿に、ため息がもれる。


知人の紹介でまだ若い彼女を雇ってから、もう、十数年になる。

正直、こんなに長い付き合いになるとは思わなかった。


小さな子供達を抱えてたった1人で頑張る彼女に好感を持ったのは最初からで。

だけど、その頃は本当に保護者のような気持ちだったんだ。

だって、彼女はまだ20にもなっていない子供で僕は40に足突っ込んだおじさんだったから。


でも、流れる年月の中で、ゆっくりと気持ちは変質していった。


「まいったね」

机の上に流れる艶やかな髪をそっと一房摘む。

胸に溢れる想いは間違えようもなく。

眠る彼女を「愛おしい」と叫んでいた。


「本当にまいる…………」

若い彼女の周りにはたくさんの良い男(・・・)達がいて、この歳でいまさら参戦する気にもなれなかったし、見守るだけで良いと思ってたんだけどな。

彼女が僕を無邪気に慕ってくれるのは、色恋とは違う物だとちゃんと認識してたから、行儀よくしてたのに。


「そんな風に泣いたら、欲がでちゃうよ?」

ツンっと軽く髪を引いたくらいの刺激では、眠り込んでしまった彼女の意識を戻すことは出来ない。


そっとため息をつくと、僕は先に会計を済ませてしまおうと立ち上がった。

このまま鬼の居ぬ間に据え膳いただいて、本人含め周りを丸め込むのも出来ないではないけど、そんな悪事を働くには僕はチョット3つ子達に近すぎる。


「ちゃんと、手順踏まないと、ね」

少なくとも、彼ら(・・)の誰よりもこの家族の1番近い場所にいるのは確かなんだから、そのアドバンテージを危険に晒す真似は止めておこう。


「さて、帰るか」

クタリとした華奢な体を抱き上げた僕の顔に浮かぶ笑みを誰にも見られなかったのは、たぶん幸い、な事なんだろうな。






読んでくださり、ありがとうございます。


マスター。

名前はまだ無い。

母親の職場のマスター。

コーヒーの腕はほにゃららマスターの称号を得るほど確か。

本当は母親を仕込んで昼の部を任せ、自分はお酒も出す夜の部をやる予定だったが諸事情の元断念。

朝の8時から夜7時の健全経営なカフェとなる。(母親は9時6時勤務)

今後、母親の求婚者にシフトチェンジする模様。

現在アラフィフのナイスミドル。

ムッツリと言わないであげて下さい。

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