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いつも月夜に血の宴  作者: 桂木 一砂
第二章:月夜の宴
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57.自分の住処への理解が足りませんでした。


「社会科見学、ですか」


 その書類を手に、私は思わず間の抜けた声を出してしまいました。

 メフィスト学園初等部からの、アマデウス城への社会科見学の要請書です。ヒューゴが学び、ヴィクターが教師を勤めるあの学園ですね。

 こういうこともするのだなあと思いながら、執務室にそれを持ってやって来た長官へ目をやりました。


「ええ、後学のために閣下の城を是非にと。もちろん、閣下の居住区には足を踏み入れさせませんし、他の立ち入り禁止区域も同様です。危険ですからな。見学の指導にはジュリエット殿がついてくれるとかで。行政員も三人までなら確保できます」


 フィリップは楽しそうに、そのダンディなひげを撫でています。

 ……しかし行政長官って、いちおう行政区のトップであるはずなのですが、どうもこのフィリップは腰というか、フットワークが軽すぎるようです。仕事熱心でそれを楽しんでいる彼ですが、この手のことも長官である彼の手を経ているものなのですね。子ども好きなのか、自分たちの仕事ぶりを見てもらえるのが嬉しいのかはわかりませんが。

 そういえばフィリップはお子さんがいたはずですが、もしかしたら学園に通っているのでしょうか。

 そう思いましたが、ひとまず仕事の話を優先します。


「ジュリエットがですか? 担当の人員が確保できるのでしたら、臨時で指導員を雇って教育せずに済みそうですね。わかりました。子どもたちのためでしたら、いくらでも城を開放しましょう」

「そういっていただけると思っておりました。あ、閣下はその日の予定はいかがでしたかな?」


 とんとん拍子に話は進みます。とはいえ詳細などは人に投げるだけで、私は最終判断するのと、あとは認可のサインをするばかりですから、難しいことはありません。

 学園にはヒューゴとヴィクターが寮住まいをしており、しばらく顔を見ておりませんでした。たまに遊びに来るのですが、やはり学業や就業で忙しいですからね。

 ヴィクターもヒューゴの学年を受け持っているはずですが、引率としてやってくるとは限りません。非常勤教師ですし。


 私は先の予定を思い出そうとしておりました。大抵のことはヘレナやルーナに管理を任せておりますので、たまに度忘れしかけてしまいます。気をつけねばなりません。


「ええと……予定日当日は外出の予定が入っていますね。見学が丸一日なら、帰り際に挨拶をすることくらいはできますが」


 しかしながら、今現在の私はすこしばかり疲労気味です。

 このところばたばたとしていて、なかなか休めなかったものですから、ゆっくりしたいのです。


 先日のプリムローズ殿のバラ鑑賞会への参加以降、ジュリエットのアマデウス編入手続きですとか、彼女を受け入れて案内しようとしている時にやって来た、ふたりの厄介な吸血鬼の仲裁ですとか……。

 はっきり言いましょう。最後のそれで、ごっそりと精神と体力を擦り減らしたのです。


 クリスなど会うのも久しぶりだったのですが、以前とまったく変わらぬ態度と雰囲気でした。ローラは言わずもがな、何事もなかったかのようにいがみ合っておりました。

 ……ふたりは大喧嘩をしていたはずですけれど、そのしこりが残っている気配がありません。いえ、しこりはそこここにあるようですけれど、まあこれはいつものことです。


 とにかく私が珍しく、アマデウス領に吸血鬼を受け入れたために、ちょっかいをかけようとやって来たローラと、これもまた珍しく思ってやって来たクリスと、間の悪いことにはち合わせしてしまったのです。

 今までにアマデウス領にやって来たいというような、奇特な吸血鬼もあまりおりませんでしたしね。ふたりの興味を惹いてしまったのかもしれないです。


 というか、この人たち……じゃなかった、吸血鬼たちは暇なのでしょうか。

 領主の地位にある者同士、忙しいと思っていたのですが。


 なにはともあれ。

 何とかふたりを接待し、追い出……送り出したのはつい昨日のこと。これでようやく落ち着いた日々が戻って来ると思っていた矢先の、見学会です。

 まあ、まだすこし日数に余裕はありますし、それまでにどうにか癒してもらいましょう。エリに。


「では、そのように手配いたします。……いや、それにしてもジュリエット殿は面白い方ですな。私も骨董品に目覚めそうです。いや、今まで美術にはあまり興味がなかったのですが、面白いものですな」


 書類を丸めてにこにこと笑う長官ですが、どうやら新参者であるジュリエットと仲良くなったようです。

 ジュリエットは以前、アシュフォード卿の元で従者をしておりましたが、つい先日アマデウス領へ編入いたしました。この城で働いてもらっておりますが、ここでは従者というよりも、宝物や骨董品を含めた財源の総監督官として勤めてもらっています。私には出来た先輩兼従者の双子がおりますから、そちらの空きはないのです。


 適材適所ですし、ジュリエットも存分に、美術品だかがらくただかわからない宝とも知れぬ品物をいじれるので、楽しそうに仕事をしておりました。問題ないでしょう。

 彼女はすこしばかり無表情ですが、仕事には非常に真面目です。山のようにあった訳のわからない品の目録もきちんと作ってくれましたし、思わぬ拾いものだったようですね。

 ……ただ、目録を埋め尽くさんばかりにびっしりと書き込まれた、品物のいわくつき文章がなければ、なお良かったのですけれど。


 ……まあ、中にはそういった背景からも、取り扱いに注意を要するものもありますし、餅は餅屋、彼女に任せてしまいましょう。

 私のお得意、人に投げっ放しです。


 ですが、そんな骨董品愛に溢れている彼女が、子どもたちの指導まで引き受けてくれるとは思いませんでした。

 吸血鬼らしい吸血鬼であったジュリエットですが、この城に来てすこし気持ちが変わったのでしょうか?


「いやはや、私の屋敷にあったがらくたを持ち込んでみたらですね、それはもう面白いうんちく話が出るのなんの。古い物というのも楽しいですな。金銭的な価値だけにとどまらない」


 フィリップは楽しそうです。私は施政への財源以外の資産についてにはあまり関心がなかったと申しますか、よくわかっておりませんでした。骨董品にも美術品にも詳しくはありませんしね。

 とにかく、無駄なほど物が溢れていた宝物庫でしたが、どうやらかなりの資金源になりそうなほど、価値のあるものが詰め込まれていたようです。

 その持ち主である私がそれに興味がないというのは、文字どおり宝の持ち腐れでしたね。


「そ、そうですか。……私にはあまり良さがわからないのですが、みなさんが楽しそうで何よりです。オオカミの血族ということですこし心配していたのですが、余計なお世話だったようですね」

「然り。まあ、郷に入れば郷に従えと申しますのかな、閣下のような方には逆らわないのが、吸血鬼のわかりやすくて良いところですな!」


 フィリップはかかと笑っておりますが、私は褒められても何とも申せません。

 吸血鬼の直系ですとか真血ですとか、他から与えられたものばかりを寿がれても、私自身は偉くとも何ともありませんからね。

 まあ、それでうまくまとまるのなら、他に何も要らないでしょう。無問題です。


「とにかく、安心しました。……見学会については学園への返信と、認可の草案をお任せして良いですか?」

「承知いたしました。ジュリエット殿にも伝えておきます」

「お願いします。……当日は、ヘレナかルーナも立ち会わせましょうか?」

「いえ、ジュリエット殿がおられれば問題ないでしょう。少々急なお願いですし、都合が悪ければ調整せずとも構わないと」

「そうですね。見学が行政区だけなら、特に問題はないでしょう」


 予定表を眺めながら、最低限の確認をします。

 お城の見学など、誰が言い出したかはわかりませんが、どんどん人と吸血鬼との間が狭くなりそうな話題を、人間側が打ち出して来たのは面白いですね。

 とにかく詳細の詰めはフィリップたちに任せるとして、その場の話はすぐに終わったのでした。




「――遭難した?」


 またも間抜けな声が私の口から漏れましたが、それを取り繕う余裕はありませんでした。

 学園の子どもたち数人が、城の立ち入り禁止区域に迷い込んでしまったようだ、というその報告は、まさに青天の霹靂です。


「も、申し訳ありません、旦那さ……閣下。私がすこし目を離した隙に、列から飛び出して行った者がいると報告がありまして」


 珍しく、無表情気味の顔を焦らせたジュリエットが、しどろもどろに答えます。


 ――アマデウス城見学会当日。

 その夕刻に、外出先から戻った途端、ジュリエット他行政員たちに私は捕まっておりました。

 城には行政区や居住区の他に、夜会などを開く大広間や食堂、それからさまざまな施設が付属しており、敷地内だけでひとつの国のようなありさまです。それを見学するというのは、学童にとっては良い刺激になるだろうと、それを許可した訳ですが、どうやら大変なことになってしまったようです。


 引率としての講師や、城側で手配した指導員たちで、立ち入ってはいない区域や危険な区域の説明をしたようなのですが、そこは悪戯好きな子どもたち、つい興味を惹かれて飛び出してしまった子がいたらしいのです。


「吸血鬼の隙をつくなんて、末恐ろしい子どもたちですね」


 見当違いの感嘆が漏れてしまいましたが、それどころではありません。

 屋内で遭難などと、冗談のように聞こえますが、ここは吸血鬼の城。ごくふつうの城だと思ったら、たとえ吸血鬼でさえ無事ではいられない場所です。

 人間も使う居住区や行政区はその限りではありませんが、特に封印して立ち入りを禁止している区画も多いのです。


「あの、閣下。ジュリエット殿は悪くありません。他の悪ガ……もとい、お子様たちを抑えてくださっていたのですから」

「そりゃあもう、あの年頃の子どもというのは、一度悪ふざけしますとなかなか収まらないもので」

「油断も隙もない、凶悪な悪戯小僧がおりまして。わたくしどもも油断しておりました」


 苦渋の表情を並べて、指導員たちも説明してくれました。

 行政区の政に関する部屋を巡り、仕事内容を説明する堅苦しい見学会は午前で終わり、午後からは城の外縁部や庭園、空中回廊や図書室など、夜会の際にも開放する部分の案内をしていたようです。

 人間社会のことだけでなく、吸血鬼の暮らしぶりも学んで欲しいという学園側の希望でしたが、安易に許可を与えるべきではなかったのでしょうか。

 せめて、もうすこし吸血鬼の指導員をつけるべきでした。軽率を悔いても遅いですね。


「ヘレナとルーナは?」


 双子について問いただします。彼女たちも見学会の担当をしていたわけではありませんが、こういう時に頼りになる姉たちです。ふだん甘やかされるのを気恥かしく思いながら、こういう時にばかり頼りにするというのも情けない話ですが、子どもたちの身の上に危険が迫っている可能性があるのなら、そんな気遅れなどしていられません。


「大広間に残りの学童をすべて集めて、監督されておられます」

「あ、魔法で手品のようなものをしておりましたよ。子どもたちも不安はないようすでした」


 意外や意外、双子も子ども好きだったのでしょうか。私にばかり甘いと思っておりましたが、年下の者には優しいのでしょうね。

 ……そうしたら人間すべてと、吸血鬼も中級以下はすべて年下に含まれますけれど。

 当人たちこそ年端もいかぬ少女に見えますが、こういう時にややこしいです。


「……それで、遭難したという子どもたちは」

「ええと、初等部の子が三人で、名前が――」


 嫌な予感は的中するもののようで、指導員が告げた名には、ヒューゴもものも含まれておりました。


「……ヴィクターも引率者でしたよね? 彼は」

「ひとまず控えさせております。特に取り乱したりはしていないようでしたが」


 あれだけ孫に甘いヴィクターです。表には出さずとも、心配しているでしょう。

 元は城に住んでいたふたりですから、引率としても子ども仲間としても、頼りにされていたようですけれど、仇になってしまったようです。


「……立ち入り禁止区域には、私でもわからない区域がたくさんあります。とにかく、吸血鬼たちで探すしかありません。人は危険です」

「では、城下の警邏から吸血鬼の方を引き抜いて――」

「ヘレナとルーナは、そのまま子どもたちの監督をするように伝えてください。そちらも目が離せませんしね。いなくなった子を探しに出てしまったら、二次遭難になりかねません。あと、学園にも連絡を。私も捜索に加わります」


 指示を飛ばした私の言葉に、指導員たちは一斉に働き出しました。

 残された私はジュリエットを伴い、子どもたちを見失った区画へ急ぎます。


「……ほんとうに申し訳ありません、閣下。自ら引き受けたというのに、この体たらくでは……」

「謝るのは私にではありませんよ。とにかく、一刻を争います。危険なものや部屋にはあなたのほうが詳しいでしょうから、詳細に説明してください」

「はっ」


 いたたまれない様子だったジュリエットは、すぐにその表情を引き締めました。

 私は内心不安に思いながらも、捜索範囲を脳裏に描きます。


 ……子どもたちがアマデウス城で遭難した、というのは、比喩でも何でもありません。

 呆れるほど広く、大きい城ですので、山や荒野で遭難するのと大差ないのです。


 屋内ではありますが、区画は部屋も廊下もやたらと広く高く、馬で隊列を組んで行進したってまだ余ります。

 居住区と行政区、歓待用の部屋が密集している区画以外は、多くは閉め切られており、ジュリエットに目録作りを頼んだような、訳のわからない物品が大量放置されている部屋もあります。

 そして何より、城の使われていない場所……立ち入り禁止区域には、異空間に繋がっている扉もあるのです。


 そう、文字通りの別の空間……どこに繋がっているかわからない場所も多々あります。

 空間を捻じ曲げる魔法がかかり、とてつもない広い場所に出る扉や、一歩階段を登っただけで数階ぶん移動するような仕掛けや、城外の別の建物の扉に繋がっているようなものまで。

 アマデウス城は敷地も外観も大きく広いですが、内部の実態はそれよりも遥かに広大なのです。


 ……この城は本来、吸血鬼のためだけのもの。

 人が使用するにあたって、危険だからと封印した個所もありますが、すべてに人が近寄れないほどの強力な封印を施してあるわけではありません。単純に閉じているだけの部屋もありますし、そこへ子どもたちが迷い込んだら心配です。

 そのことは、ヒューゴたちが城にいた頃に話しておりましたが、使うこともなかろうと簡単に済ませてしまいました。

 それが彼の好奇心を刺激し、今回の騒ぎとなってしまったのであれば、私の責任も大きいでしょう。


 一刻も早く、ヒューゴたちを探し出し、みなを心配から解放させなければなりません。




「わたしも行きたいんだけど」

「却下です。エリは待っていてください」


 私はエリ相手に珍しく、ひと言でそのお願いを切って捨てました。


 行政員たちの素早い手配により、捜索員は集まりました。さっそく組を作って二次遭難を防ぐ手はずを整え、捜索に入ります。

 ですが、その数はさほど多くありません。元々吸血鬼自体の数は少ないですし、警邏で働く者も同様です。

 吸血鬼個々の能力は小さくありませんが、捜索範囲があまりに広大です。ですが、それは私のせいでもあるので、私は人一倍も二倍も働こうとしたのです。

 そこへエリがやって来て、ヒューゴたちの捜索に加わると言ってからの、先ほどの物言いです。


「ちょっとアベル! 人手が足りないんでしょう? そりゃあ、吸血鬼たちほど役に立てないのは確かだけど、でも、すこしくらいなら手伝えるわ」

「……駄目です。というか、何があるのかわからないので、とてもエリ……いえ、人には任せられません」

「……そんなに危険なの? この先って。確かに不気味だけど……」


 エリは気味悪そうに、立ち入り禁止区域の奥を窺いました。

 吸血鬼は暗いところでも先を見通せますが、人であるエリにはほとんど何も見えないでしょう。

 暗がりに沈んだ広い廊下と、立ち並ぶ扉。角を曲がった先からは得体の知れぬ呻き声や、何かが動く気配。

 不気味のひと言に尽きる場所です。ジュリエットはよくこんな場所で、ひとりで黙々と作業できたものです。


「はい、私にも全部把握はできていませんし、気をつけるだけでは駄目です。その扉の先がふつうの部屋だとは限りませんし――」


 突然、エリがつかつかと歩き出し、近くの扉を開きました。

 大きな扉ですので、そう簡単には開きません。ですが、指の太さほどの隙間が開き、その先をエリは覗き込みます。


「エ、エリ! 危ないですよ! 何があるのかわかりませんから!」


 私は慌ててエリに飛びつき、扉から引きはがしました。

 エリは何故か硬直しております。


「……エリ? どうしました?」

「え、えっと……」


 彼女は戸惑っていたように視線をさ迷わせておりましたが、私にそれを合わせると、はっと気を取り直したかのように言い募ります。


「あ、ありのまま、今見たことを話すわ。扉を開けたと思ったら、その先に砂漠が広がっていたの。何を言っているのかわからないけど、わたしにもわからないわ。見間違えとか寝ぼけてたんだとか、そんな単純な話じゃあないの。もっと恐ろしい何かの片鱗を味わったわ……」


 ぶるりと震えて自らの肩を抱く彼女に、私はそっと囁きます。


「エリ、それは魔法です。空間がねじ曲がっているんですよ。一寸先は闇どころか、断崖絶壁や活火山の火口に繋がっているかもしれません。危険です、どうかヒューゴの無事を祈って、待っていてください」


 私の言葉に、まだすこし混乱しているようすの彼女でしたが、ぎこちなくうなずいてくれました。

 この場所の恐ろしさを理解してくれたようですので、私は急ぎ、捜索に入ります。


 暗がりに身を溶かし、気脈に乗って、禁止区域を奔り抜けました。

 ……我が城ながら、想像以上に広いところです。




 捜索自体はそう難しくないと思っていましたが、なかなか子どもたちの姿を見つけられません。

 ただ、想像したくない痕跡……何かに襲われた痕ですとか、事故の痕跡、あるいは子どもたちの持ち物などが乱雑に放置されていることもなく、ただただ不気味な通路と部屋が連なっております。


 空間がねじ曲がった場所もあり、そこは気脈の中を上手く走ることができませんから、足で稼ぎます。

 カラスの姿でも良いのですが、あの姿ではしゃべれませんからね。

 時折立ち止まっては、私は声を張り上げます。


「ヒューゴ! 聞こえたら返事をしてください!」


 反響音さえ聞こえてきますが、それに反応する声は聞こえません。

 私が城に変えるすこし前に、子どもたち三人がいなくなったことが発覚したのですが、それから数時間。

 ふつうでしたらそう長い時間ではないのですが、焦燥と不安から焦りが先に立ちます。

 私が探しているのと別の場所で見つかっていれば良いのですが……。


 その時ふと、人の……いえ、何かの気配を感じました。


 嫌な気配ではありません。得体の知れないものでもなさそうですが、子どもたちのものともわかりません。

 とにかく、その微かな手掛かりを元に、私は闇の中を進みました。

 向こうから見えるかもと、魔法で明かりを造り出します。


 ……気づけば、そこは屋内ではありませんでした。

 城の中ではなく、ただ一面の闇のようです。


 私は一体、どこへ紛れ込んでしまったというのでしょう?



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