55.ある収集家の懇願
※第三者視点:ジュリエット(アシュフォード侯爵 従者)
アマデウス辺境伯爵は変わり者だ。
私はその方をしかと見たことはないが、すくなくとも我が領主殿はそうおっしゃっている。
何でも、カラスの血族が始祖パオレの流れを汲む由緒正しき直系の血筋であるのに、公爵ではなく辺境伯爵という地位に甘んじているそうだ。血を尊び、長寿を貴ぶ吸血鬼にあって、それは異例中の異例だ。
掟を破ったとか、類似の罪を犯したわけでもないのに、それはあまりにも変わっている。
かの領地のアマデウスは、先代領主から受け継いだそうで、何やらその地には風変わりな吸血鬼が集っているらしい。
食事でしかない人間に甘い、いっそ軟弱といえるほどの吸血鬼たちが、こぞって変わり者のアマデウス卿を領主と仰ぎ、平穏に暮らしているようだ。
人間を領政にまで関わらせ、魔物討伐にも参加させているとも聞く。それはつまり、一定以上の地位と武装を許可するということで、謀反や反乱を起こさせかねない愚行だ。
……だというのに、かの領地はいたって平和だという。
すくなくとも、反乱の“は”の字も思い浮かばぬほど、その地は安穏としているらしい。
領民も人間たちも、変わり者ということだろうか?
私はオオカミの血族たる大吸血鬼、ランドルフ・トールズ・アシュフォード侯爵の従者だ。
アシュフォード卿の系譜ではないものの、私も同じくオオカミの血族であり、傍系の吸血鬼になる。
人だった頃の名はジュリエット。吸血鬼としての名はアンだが、爵位を持たない私には、それを名乗ることは出来ない。
私を吸血鬼にした者が、どんな吸血鬼だったかは知らない。覚えていないのだ。
それは夜風のように私に忍び寄り、そして私は呆気なく命を奪われたということだけは薄っすら覚えているが、それ以上の記憶はあやふやだ。
生前の記憶をしっかりと持ちながら蘇る者もいるが、そうでない者も多い。むしろ、人だった頃の記憶は吸血鬼にとって邪魔にしかならないそうだから、私のように忘れた方が幸せなのだろう。
その頃の記憶がないせいか、よくわからないのだが。記憶のある者はみなそう言う。
……さて、私がなぜこんな自己紹介のような真似をしたのかといえば。
まさに今目の前で、件の辺境伯がお連れの方と一緒に、バラの鑑賞会にみえているからだ。
私はかの人に、自分を売り込むつもりなのである。
そう。かくいう私も、自他共に認める変わり者だと自負しているのだ。
大吸血鬼プリムローズ殿主催のこのバラの鑑賞会は、有力な吸血鬼が多く呼ばれている。
そんな中、傍系の吸血鬼である我がアシュフォード卿が招待されたのは、僥倖のひと言に尽きるだろう。周りを見ても公爵の位、直系の偉大な血を宿す吸血鬼ばかりで、傍系で最高位になる侯とはいえ、格も位も低い領主殿は、その居心地の悪さなどどこ吹く風で、せっせと自分を売り込んでいる。
吸血鬼の地位など、その血と年齢ですべてが決まるというのに、熱心なことだ。
変わり者の私の主であるからか、領主殿もすこしばかり変わり者のようだ。
「ふむ、なかなかに美しい。私はこの虎柄のバラが気に入ったぞ」
「……私はもっと、ふつうの色合いが好きなのですが。こちらの花とか、綺麗ですよ」
「なんじゃ、つまらぬ男じゃの。たまには変わり種を愛でるのも良いものぞ」
かの辺境伯爵は、小柄な美少女吸血鬼を連れている。
少女は口調が年寄りじみているが、どうやら大吸血鬼であるようだ。こうして遠目にしているだけでも、全身に震えが走るほど、畏怖してしまう。
吸血鬼はその力量の差に敏感だ。詳細まではわからずとも、戦って勝てる相手かどうかは見ただけでわかる。
一目瞭然だ。私は逆立ちしてもあの少女に勝てない。
吸血鬼となって百年ほど。私もようやくいっぱしの吸血鬼であると胸を張れるようになったが、どうやらまだまだのようだ。ひとりであの少女の前に立てと言われたら、思わず逃げ出したくなるに違いない。
それに平然と相対している辺境伯は、やはり直系の吸血鬼だ。まだまだ若いが、有望なお方なのだろう。
アマデウス辺境伯爵は、すらりと背の高い男性だ。服装はいたってふつうだが小洒落ているし、立ち振る舞いからして洗練されているのが良くわかる。
スタイルも素晴らしく均整がとれていて、他のどんな装いだって似合うだろう。顔は吸血鬼にあるまじき穏やかさで、そう派手なものはない。整っていて一見地味だが、その優しげな目元は見る者を惹きつけるだろう。
きつく影のある美貌が多い吸血鬼にあって、その風貌はやはり変わっている。
私はと言えば、整ってはいるがどこか無表情なその顔に、能面のようだと言われたことがある。
美形の多い吸血鬼にあってはふつうだが、それなりに美しいとは自負している。豊かに波打つ黒髪も、きりりと鋭い目元も、ひとりやふたりの吸血鬼から褒められるどころではない。
だが、前述のためにどうもとっつきにくいらしく、恋人どころか友人もいない。
……いや、内心はけっこう感情豊かなのだが、それが表に出ないだけなのだ。何を考えているかわからないとも言われるが、内面はいたって単純。興味のあることしか気にならない。
そんなところが冷たいとされるようで、なかなかわかってもらえないのが悲しい。
ともあれ、私は遠目に、アマデウス辺境伯に話しかけるチャンスを窺っている。
どうやら彼にまとわりついていた少女は、同じく彼につき従っていた別の少女に連れられて、どこかへ行ってしまった。主催者のプリムローズ殿に挨拶しにでも行ったのだろう。
辺境伯はその場に留まり、少女が気に入ったとされる毒々しいバラの花を、首をかしげて眺めていた。
いぶかしげな顔である。
どうやら変わり種のバラの花は、変わり者の吸血鬼にはお気に召さなかったらしい。
「――アマデウス卿」
私は意を決して、かの人に声をかけた。
ふつう、無爵の者が辺境伯爵相手に声をかけるなど許されないが、この観賞会では主催者のご配慮もあって、それが許されている。バラを愛する者同士、地位など気にせず話題に花咲かせることを目的としているのだ。
なのでよほどの偏屈者でない限り、私が叱責を受けることはない。
すくなくとも、辺境伯を観察した限りは平気に思えた。いかにも優しげな顔の雰囲気の男だからだ。
「はい。ええと、あなたは――」
思った通り、アマデウス卿は穏やかに微笑み、私に向き直ってくださった。
貴族でありながら丁寧に過ぎる言葉に、ひどく耳に柔らかい声だ。吸血鬼にしては穏やかに過ぎないだろうか。
けれど、相手が優しいのであれば、私も話を持って行きやすい。与しやすいと言えば失礼だろうが、私も必死だ。
私はここぞとばかり、腰を折って礼をする。
「お初におめもじつかまつります。私はアシュフォード領、ランドルフ・トールズ・アシュフォード侯爵の従者で、ジュリエットと申します。オオカミの血族、傍系に当たる吸血鬼です」
ここでふつうなら、己が系譜の大吸血鬼の名前を挙げるものだが、残念なことに私はそれを知らない。もっとも、地位ある吸血鬼であれば挨拶も仰々しくなければならないが、ただの従者ならそんなこともない。これで十分だろう。
実際アマデウス辺境伯は気にすることも気分を害することもなく、同じように礼をしてくださった。
「これはご丁寧に。私はアベル・アーサー・アマデウス。偉大なるミラーカの系譜にして、カラスの直系の者。辺境アマデウスの領主をしています。お見知りおきを」
ご丁寧にと言いつつ、アマデウス卿は至極丁寧な返答をくださる。
変わり者というが、こういった風変わりさはありがたい。傲慢で偏屈、ついでに気難しい吸血鬼が多い中で、これは貴重だ。
これならば私の願いも叶えてくださるだろう。私は遠慮なくアマデウス卿へ懇願する。
「この度は、アマデウス卿にお願いがあって参りました。唐突で不躾なのは重々承知の上ですが、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか」
「はい、構いません。プリムローズ殿に部屋をお借りしましょうか」
彼はにこりと微笑んで、主催者にお声をかけて部屋を借りてくださった。
たかが傍系の、それも無爵位の、それもいち従者でしかない吸血鬼の私に、ここまで丁寧な対応をするなど他の吸血鬼に類を見ない。
いや、まったくありがたいことだが、まったく変わり者だ。
「どうぞ。……さっそく、お話をお伺いしても?」
プリムローズ殿が快く部屋を貸してくださって――かの大吸血鬼がここまで配慮してくださるとは、やはりアマデウス卿は只者ではない――、彼は応接のソファに腰を下ろした。
進められて私も席につき、咳払いをひとつする。
「――どうか、私のアマデウス領への編入を認めていただきたい!」
着席してすぐ、再び立ち上がって腰を直角に折った私に、卿がどんな顔をしたのかは知れなかった。
アマデウス卿は変わり者だ。
私はその方をよく知っている訳ではないが、すくなくとも数日観察しただけでそう思える。
私が自分をアマデウス卿に売り込んで数日、さっそくかの領地にお伺いしてすぐに、私は宝物庫へ足を運んだ。
私は、いわゆる骨董品収集家と呼ばれる種族だ。
美術品芸術品をはじめ、変わったもの、いわくつきのものに目がない。貴重品などの鑑定も出来るし、考古学もちょっとしたものだ。目利きには自信を持っているし、アシュフォード卿にも頼りにされた。
従者という立場で、貴重な骨董品収集なぞ出来たのは、その好意に甘えてのことだ。
だが私は、お金を出して手に入れられるものに、あまり興味はない。
あるのはふたつとしてない、変わった“モノ”だ。
「……確かに色々なものがあるのですが、目録もないようですし、ほんとうにあるとは限りませんよ」
「ええ、構いません。一から全部、私が作ります」
「それは助かりますが、ほんとうによろしいのですか?」
重ねてたずねるアマデウス卿は、相変わらず腰が低い。
こうして私の願いを叶えてくれたというのに、さらに私を慮る。高慢な吸血鬼の中で、さらに居丈高な態度を示すばかりの高位貴族であるのに、非常に珍しいことだ。
幾度でも思うが、やはり彼は変わっている。
「私いち個人の我儘を聞いてくださったのですから、全く構いません。むしろ任せてもらえて幸せです」
「……ですけれど、ほんとうにあるかはわかりませんよ? その、何でしたっけ? 加護の瞳? 聞いた限りでは加護というより呪いといった感じですけれど、私も城の者も知りませんでしたし、確かな情報ではないのでしょう?」
アマデウス卿が言う加護の瞳だが、とある変わった製作者による道具で、呪いに使うものだ。
とはいえ、希少なのだがそう高価なものではない。私が製作者のファンだというだけなのだ。
「ええ。ですが、収集家仲間がやっとつき止めた手掛かりです。いわくつきの骨董品というものは、持ち主に不幸があってよく他人の手に渡ったり、質に流されたりして、その後を追うことは難しいのですが、こうして骨董品に興味のない方の元へ辿りつくということが多々あるのです」
「そういうものなのですか」
アマデウス卿はいちおう納得して下さったようだが、良くわかっていない風も漂っていた。
すこしばかり寂しいが、彼は収集品にあまり興味がないのだろう。自身がどれだけ貴重な物を持っているのか、理解できないらしい。嘆かわしいことだ。
だから、価値の分かる女である私がこうして使わされたのだな。
ご真祖の配剤に違いない。感謝しよう。
……アマデウス城には、歴代の領主から伝わる膨大な量の骨董品がある。
それは美術品、芸術品に及ばず、武器防具に日用品、歴史的遺物や魔法の品、ありとあらゆる分野に及ぶという。それが月の目を見るまでもなく、城の奥深くに埋没してしまっているのだという。
その中にはなんと、あの始祖パオレ縁の作品まであるというから驚きだ。
そういった話を聞いた時、私はすぐさまアシュフォード卿に直談判した。
アマデウス領へ編入する許可をいただきたい、と。
幸い、私の性癖を知っているご領主は、快く私の願いを聞き届けてくださった。
とはいえ吸血鬼の居住地の移動には、それが領地をまたいている場合、双方の領主の認可がいる。これが人間も同じだが、吸血鬼の数に偏りがあるのも問題だから、慎重に吟味されるのだ。
人も吸血鬼も、多過ぎても少な過ぎてもいけない。私は政にさほど興味はないが、その程度のことはわかる。
アマデウス領は災害も戦もほとんどないようだから、私ひとりが入る隙間はあるだろう。
辺境伯で、しかも歳若い吸血鬼とはいえ、直系のそれも大公の覚えもめでたい方に、傍系の侯爵であるアシュフォード卿は、簡単にお願いをできる立場にない。
アマデウス卿はその血の尊さに釣り合わぬ地位にいるので、少々ややこしいのだ。
なので私の熱意を認めてもらうために、直接アマデウス卿へお願いしようと思ったのだ。
幸い、直近でプリムローズ殿主催のバラ鑑賞会に、かの人が参加するという噂を聞きつけた。
思い立ったらすぐ行動。
私の骨董品に対する熱意を知って、アマデウス卿もすぐに、編入許可をくださった。
「……宝物庫はここで、この区画一帯は城の立ち入り禁止区域になります。人手も吸血鬼の手も足りていないので。それと、問題のある品でなければ他の区域に持ち出しても構いませんが、いちおう確認はとってくださいね」
「承知いたしました」
アマデウス卿自ら足を運んでくれた宝物庫は、確かに宝の山だった。
一見してガラクタに見えないものも、明らかに高級であるものも山積みだ。これは腕が鳴って仕方がない。
何故これほどまでに、宝がここに集まっているのか。
それは、ここが歴代領主によって穏やかに統治されていたからに他ならない。
吸血鬼の国たる極夜の国では、人の間での争いはない。起こったとしても吸血鬼によって捩じ伏せられてしまうし、人は吸血鬼に逆らえるほど強い生き物ではないからだ。
けれど度々、領地では争いが勃発する。吸血鬼同士の諍いだ。
最強の血族である不定形の者でなくとも、吸血鬼は強力な力を有する。私たちが暴れれば人などはひとたまりもないし、力を持つ者同士が争えばその類は多大に及ぶ。
私たちは血縁を尊ぶ。それは直系傍系に留まらず、大吸血鬼の系譜、あるいはひとりの吸血鬼による血族仲間など、区切りは様々だ。血縁を大事にするということは、それ以外に辛かったり冷酷であったり、無関心であったりするということだ。
だからこそ、一度諍いが起こると、ことが大きくなってしまう。
……そして何より、吸血鬼は混沌を好む。
喧嘩上等、売られた喧嘩はチップ付きでお買い上げする者ばかりなのだ。
そう言う意味でも、ここアマデウス領の領主は変わっている。
代々カラスの者が受け継いできたようだが、かの血族はたしかに、吸血鬼の中では大人しいものが多い。もっとも、当代の領主はその比ではないようだが。
ともかくだ。私が心を痛めるのは、吸血鬼が喧嘩っ早いという点ではない。
そのことは私自身もよくわかる。作品を貶されたら、その口をもぎ取って彫像に飾ってやりたいくらいだ。戦いだって必要とあれば辞さないつもりだ。
だが、それに巻き込まれて貴重な芸術品が灰となってしまうのだけは、許せない。
ひとたび吸血鬼が本気で争えば、町など簡単に灰燼に帰す。そしてそうなってしまうと、私の愛する骨董品はあえなく灰となってしまうのだ。
戦火の及ばなかった地に、生き残った品々が集まるのは道理だろう。
管理する当人たちにその気がなかったとはいえ、貴重品保管庫として立派な役目を果たしたのだ。
ここアマデウス領は、私をこそ求められている。そんな場所なのだ。
「……えっと、いちおう雇用条件と、手続きの書類があるのですが……」
「いえ、まずは私の仕事ぶりを見て、アマデウス卿……旦那様がお決めください。きっとお気に召していただけるはずです」
私がきっぱり言い放つと、かの領主は手にした書類をしおしおと懐にしまい込んだ。
これもまた丁寧なことだ。そんな資料など、部下に声をかけるか、あるいはただ単に口頭で命令を下せば良いのに。
当然のことながら辺境伯は、それをできるだけの権力がある。
「わ、わかりました。あと、城の者なのですが、ここアマデウス領ではすこし他と違いまして、食事の時なども――」
「了解しております。すべて旦那様のお望み通りに」
「……ええ、はい、それなら構いません。気が済みましたらお声かけください」
「承知しました」
私が返事をした時は、たぶん宝のことに目を奪われ、そして顔を輝かせていたのだろう。
すこしばかり呆れたようすの旦那様は、それでも苦笑を返して、私に宝物庫の鍵を預けてくださった。
私が喉の渇きを覚えたのは、それから丸二日後のことだった。
まずはどのような宝があるのか、その目録を作ることからはじめたのだが、これが一筋縄ではいかない。
マニア垂涎の品が出るわ出るわ、私も涎が止まらないほどだったのだ。
噂どおり、加護の瞳も見つかった。禍々しい蜘蛛の複眼が飾る宝珠に、うっとりと見入ってしまう。
この品にはいかにもな曰くがあり、それを資料にまとめるのも楽しみでならない。
……しかし、私は一旦、幸福な作業を中断する。
腹が減っては戦が出来ぬ。吸血鬼にとっての食事の時間は至福時。
まずはこの喉の渇きを癒してから、旦那様に途中報告をすることとしよう。
私は城に来てすぐ案内された宝物庫からやっと出たのだ。
食事を頼もうにも、立ち入り禁止区域という付近には誰の姿もない。不便だが、直接私が探した方が良いだろう。
そもそも、アマデウス城には吸血鬼が少ない。
すくなくとも、アシュフォード卿は自身の城に私のような従者も含め、血族の者を集結させていた。
それでなくても連日のように、貴族たちがやれ夜会だの鑑賞会だの音楽会だの、あるいは決闘や武芸披露会の催しを開いている。より血の気の多い者の歓待のために、晩餐会と称して多くの人間が贄とされ、その片づけに眉を顰めたものだ。
人間は大事な食糧である。あのような馬鹿騒ぎで消費するものではない。
アマデウス城には吸血鬼がすくないが、領主とその血族である少女たちが住んでいる。
そのためにきっちり管理された人間がいるはずだが、さて、どうしたものか。
声をかけてくれと旦那様に言われたが、まさか私の食事のために、領主の手を煩わせる訳にはいかない。
よって私は散歩がてら、城内をじっくりと見て回ることにした。
……先日は、旦那様自らご案内してくれようとしてくださったのだが、気が逸って先にこちらに来てしまったのだ。
反省せねばなるまい。
……さて、人のいる場所はどこだったかな?
私は血を求めて、暗い廊下を明るい方へと進んで行った。




