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いつも月夜に血の宴  作者: 桂木 一砂
第一章:吸血鬼の夜
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34.色惚け仲間が増えました。



「あんた色惚け過ぎてねえ?」

「失敬な」


 翌日の執務室には、大量の書類が届けられておりました。私はそれを捌きながら、書類の山の向こうで豪快にクッキーをかじるフレッドを、横目で見ます。

 フレッドたちの書類も届いておりましたので、私はさっさとサインをして双子に回しました。今日中には手続きも終わって、三人はれっきとしたアマデウス領の領民となります。


「いや、昨日庭から見えたんだけどさ……傍から見て恥ずかしくなるくらい、いちゃつきやがって」

「恋人同士なのですから、構わないでしょう? それに、人の目の前ではいたしませんよ」

「目立つ場所でも止してくれよ……」

「ここは私の城ですから」


 ひょいとひとつの書類の山を、まとめて箱に入れました。

 執務机は広いですが、処理した書類はすぐに片づけないと、置く場所も無くなってしまいます。


「いや、そうなんだけどよ……俺らなんてただの居候だってのはわかってるけど……」


 ぶつぶつと呟きながら、フレッドはもりもりとクッキーを咀嚼しています。いつ見ても良い食べっぷりです。

 昨夜の晩餐の時もそうでしたが、ハンターと言うものは、よほどよく食べる種族なのでしょうか。ヴィクターも歳に似合わぬ食べっぷりでしたし、育ち盛りのヒューゴは言わずもがなです。料理長が喜んでおりました。

 城に住む人の人数も増えましたし、エリたちのために雇った者たちも、正式に長期雇用いたしましょうか。本人たちに確認を取って、トーマスかジェシカに手続きを頼みましょう。


 晩餐の席で、エリたち四人とフレッドたち三人の紹介もしました。落ち着くまでこの城で一緒に暮らすこととなります。庭で見た時と同様、みんな和やかな雰囲気でしたので問題ないでしょう。


 フレッドはこの執務室で、こうして私を相手に油を打っておりますが、極夜の国に好奇心いっぱいだったヒューゴは、ヴィクターと一緒に城下町へ降りています。エリたちの時と同じように、行政区の人員も回してもらいましたし、観光だって出来ます。この国に馴染んで、すこしでも楽しんでくれると良いのですが。

 心配なのは吸血鬼に対する彼らですが、クリスとの騒ぎを見て、大人しくすると誓ってくれたので、そうそう何事も起こらないでしょう。彼らを信じて、彼らに任せておきます。


「それにしてもフレッド。ヴィクターたちみたいに町のようすを見に行ったりしないのですか? 人狼とはいえ、私の紋章を見せれば問題も起きないと思いますが」


 人狼は吸血鬼の天敵で、極夜の国にはまずいません。ビアンカのように居場所を追われてやって来た者が他にもいるかもしれませんが、すくなくとも私は知りません。フレッドでふたり目ですね。

 フレッドはうんざりしたように、ソファに上体を預けてだらけています。いつの間にかクッキーの入った大皿が空になっておりました。食べるの早いですね。


「ジジイの孫自慢とガキの世話を同時にだなんてやってられっか。まあ、この城で働いてる奴には話を聞いたし、残りは後でいい。どうせ他に行くあてもねえんだし」


 やさぐれた口調ですが、そう強い不満はないようではありました。正直、何をしていいのかわからず困っているのかもしれません。

 まあ、いきなりハンターの仕事を取り上げられて流刑となったのですから、そうなってもおかしくないでしょう。


 ここではもちろん、吸血鬼ハンターなど出来ませんしさせません。吸血鬼だって罪を犯せば罰せられますが、吸血鬼を裁くのは吸血鬼だけです。吸血鬼以外の者が吸血鬼を殺すのは、掟に触れるのです。

 そのことについても、もちろん言い含めてありますし、大丈夫だとは思います。ですがそうすると、元ハンターの彼らにはやることがありません。

 ハンターとしての技術を生かすことができる仕事は、何かあるでしょうか。この城でごろごろしていても構いませんけれど、フレッドもエリと同じく、窮屈な場所に押し込められると腐ってしまう性格のように思えます。何かしてもらった方が良いでしょう。


 となると、魔物災害時の討伐隊などでしょうか。ハンターについては良くわかりませんが、彼らの戦い方の基本は、吸血鬼の弱点や有効な術具などで、敵を無力化したところを仕留めるもののはずです。怪力の怪物と直に殴り合うことはできなくても、戦闘自体は想定しているはずです。戦いのプロフェッショナルと言えるでしょう。

 とはいえ荒れ地に巣食う魔物は、吸血鬼のようにパターンが決まり、ある程度の行動の予測がつくものばかりではありません。それに、魔物と相対するのは圧倒的に吸血鬼……それも爵位持ちが多いですから、そこに元ハンターのフレッドを放り込むことにはまだ抵抗があります。

 やはり、しばらくは様子見でしょう。もしかしたら城下町で喫茶店を開きたいとか、そういう夢ができるかもしれません。


「……しばらくは何も考えず、ゆっくりと考えたらどうですか? 暇でしたら観光しても構いませんし。結構楽しい場所も多いですよ」


 我ながら暢気なことを提案すると、フレッドは呆れた目でこちらを見て、それから大きくため息をつきました。


「あんたの相手をしてると、余計に深刻さが薄れてくな。まあ、実際こうなっちまった以上、後はなるようにしかならねえんだが……」

「人生なんてそう言うものです。一度終わらせた私が言うのですから間違いありません」


 その言葉にフレッドがどんな表情をしたのか、視線を落としていた私にはわかりません。

 口を動かしながらも、手元は動いて必死に書類を片づけています。ですが羽ペンを走らせていると、どうやらインクが切れてしまったようです。引き出しを漁っても予備がありません。

 仕方なしに、ベルでビアンカを呼び出しました。双子はこの時間は行政区に詰めているでしょうから、彼女に備品を補充してもらいましょう。


「しっかし妙だな。吸血鬼どもの技術は進んでるってのに、変なところで古臭えのがそろってんだよな」


 フレッドはベルの音を耳にして、執務机の上を眺めています。魔法の道具もあるのですが、確かに原始的な仕組みのものも多いです。羽ペンですとか、ベルですとか。

 インクがなくても書ける筆記具もあるのですが、双子もこういう道具ばかりそろえてくれるのです。

 私はできませんが、クリスのようにテレパシーを使って人に意思を伝える魔法もあります。便利ですけれど、いきなり頭の中で話しかけられる驚きには、慣れそうにありません。


 まあたぶん、そういったもののほうが雰囲気が出ますとか、あるいはあまりに高度な技術……魔力を使用した術具などでは、人が使うことができません。アマデウス領では人にばんばん働いてもらっていますから、それでは困ることもあるのでしょう。

 しかしそれは恐らく、趣味のひと言で済みそうです。魔法技術で何でもできる吸血鬼ですから、簡単なことにもわざわざ手間暇をかけることに、何か琴線に触れるものがあるのでしょう。私も嫌いではありませんし。


「こういうもののほうがおもむきがありますからね。ただそれだけですよ」

「そういうもんかねえ……」


 フレッドが胡散臭そうに溜息をついたところで、扉がノックされました。

 ビアンカが用向きを聞きに来てくれたので、インクの補充と、あと書類運びを頼みます。


「すみませんが、お願いします。あ、あとペーパーナイフがどこかに行ってしまったのですが、知りませんか?」


 ビアンカはその狼の首をかしげると、鼻を上に向けてひくひくと臭いを嗅ぎました。

 それからフレッドの座るソファの下を指差します。どうやらその下に潜り込んでいるようです。


「何だってそんな場所に……あ、フレッド、どいてくれませんか」

「…………」

「フレッド?」


 何故か彼は沈黙して、ビアンカの顔を凝視しています。

 ここで同族に合うとは思わなかったのでしょう。実際極夜の国にいる人狼はこのふたりだけでしょうし。

 ですが、私はフレッドの表情にあるものを発見しておりました。まあ、それは後にしましょう。

 私は動かないフレッドの座るソファの下から、魔法で目的のものを取り出しました。黒曜石で出来た美しいナイフです。薄くて欠けやすいので気をつけねばなりません。


「ありがとうございました、ビアンカ。ところで、こんな道具など使わなくても簡単に紙を切れるのに、何故道具を使うのかってわかります?」


 私が問いかけると、ビアンカはすこしだけ首をかたむけて、それから私を見てうなずきます。私はにっこりと笑いました。


「ええ。魔法で切るよりそのほうが楽しいからですよね。吸血鬼って難儀な生き物です」


 こっくりとビアンカがうなずき、私は笑ってフレッドを示します。


「ああ、あとお茶菓子が切れてしまったので、その補充もお願いできますか? 味はほどほどで良いので、大量に」


 これにもうなずいて応え、ビアンカはきびきびと動いて書類の箱を手に取ると、執務室を退って行きました。フレッドは固まったまま、それを見送っています。

 先日、ビアンカは休暇中でした。マリアからスーは紹介したと聞いているので、ビアンカも後で三人に会わせようとは思っていました。常に狼顔のビアンカは、妖精のスーよりも驚かれてしまうでしょうし。


 ……フレッドが人狼のビアンカを見て、どう思うかと思っておりましたが、こんなことになるとは思いませんでした。

 私はゆっくりとフレッドの向かいに腰を下ろし、脚を組んで肘かけに肘をつきます。悪党ポーズです。


「……で? 誰が色惚けてるって言いました?」


 弾かれたように私に向き直ったフレッドに、私は我ながら邪悪な笑みを向けたのでした。




「……で? さっそく出歯亀しようって? あんたもいい趣味してるわよね」

「光栄です」


 私はエリと並んで茂みに潜みながら、こっそりと視線の先を凝視しておりました。

 アマデウス城にある広大な鳥籠状の植物園、その中心にある噴水広場です。水の流れる涼やかな音が響き、そろそろ月も沈む時間、極夜の国の星夜が近付いている時刻です。

 月がなくても、光を放つ植物が多いこの国の、それも手入れをされた園ですから、視界はそう悪くありません。ふつうの人であるエリにだって見通せるでしょう。


 視線の先には、ベンチに並んで座るふたりの人狼。スーは事前に城へ移動され、むくれた彼女のために本物の鳥籠をプレゼントしました。中には彼女の好きな文鳥が入っています。合掌いたしましょう。

 根回しとしてビアンカに臨時休暇まで与え、後はこうして網を張っただけです。いきなりかち合うとは思いませんでした。


「私が協力を申し出たら飛び上がって逃げたくせに……やはり女好きでしたねフレッドは」

「……あの人のことはわたしはあんまり知らないけど、女にだらしないっていうなら、そんな人にビアンカを渡して大丈夫なの?」

「二股ですとか、浮気はしない奴ですので。まあ、ビアンカを悲しませたら問答無用で叩きのめしますけど。そうでないなら後はビアンカ次第です。私は文句を言える分際ではありません」


 ひそひそと小声を交わします。出歯亀目的というよりは、エリとも一緒にいられますし、どちらでも美味しいと思ってこうしている訳です。このために必死で仕事を終わらせましたしね。

 フレッドは女好きではありますが、基本的にいい奴ですし、ビアンカにとっても身近にいる唯一の同族です。もしかすると一族から追放された彼女は、同じ人狼に対して複雑な感情を抱いているのかも、と心配いたしましたが、そうでもないようすでした。なのでここは、友人のフレッドを応援してやりましょう。


 ベンチのふたりは、時折フレッドが彼女に語りかけ、それにビアンカは首をかしげて返しています。彼女はしゃべれませんし、フレッドは好意的なのはわかっているのでそう嫌がってはおりませんが、やはり意思疎通を図るのに苦戦しているようです。

 フレッドの察知能力が低かったら悲惨でしょう。ビアンカはそもそも主張をあまりしませんが、打ち解けるとそれなりに意思を伝えてくれるのです。それがわからなければ恋人になどなれません。


「……面食いのフレッドをひと目で溺れさせるとは、ビアンカもやりますね。やはり人狼にとっても美人なのでしょうね」

「人の顔にはなれないって聞いたけど、たぶんそうよね」


 私の出歯亀に呆れたようすのエリでしたが、やはり彼女も気になっているのでしょう。かなり真剣な目でふたりを見つめています。

 ビアンカは珍しい白の人狼です。大きく対象な三角形の耳と、すっと通った鼻筋。ひげもぴんと立っており、艶やかな毛並みも美しく健康的です。大きな瞳は涼しげな青で神秘的ですし、格好良さと美しさが両立しているのです。人の顔は無いとはいえ、十二分に美人でしょう。


「それにしても、フレッドもがんばりますね。しゃべれないのを全く気にしないで、それでいてちゃんと気配りが出来ています」

「なかなかやるようね。やっぱり人を好きになるっていうのは、その人を強くさせるんでしょうね」

「直前までだらけきっていましたのに、急にやる気が出たみたいですし」


 エリとふたりでフレッドを見直していると、不意に彼が立ち上がりました。

 夜空にはもう月がありませんが、その格子状の園の天井を見上げて目を瞑ります。次の瞬間には、そこに黒い狼の顔が現れていました。


「おおっ、変身した! すごい、わたしはじめて見たわ」

「それはそうでしょうね。人狼はそう人前に出てきませんし、変身だってそうしません」


 出歯亀中の私たちですが、変身したフレッドがまたビアンカに向き直り、それに彼女がうなずいて応えているのが見えました。

 どうやら、何か雰囲気が変わったようです。声も何も聞こえませんが、これ以上は止めるべきでしょうか。


「……だいぶ良い雰囲気みたいですね。これ以上はさすがに控えましょうか」

「え、何で? わたしもうちょっと見たいんだけど」


 エリがものすごく名残惜しい声を出します。出歯亀を非難していた彼女はどこへ行ったのでしょうか。

 ちらりと目をやると、フレッドがビアンカに手を伸ばして、それを彼女がしっかりと握り返したところでした。

 どうやら今のところは問題もなく、順調なようです。ビアンカが困っていたり、フレッドがしゃべれない彼女に苦戦しているようでしたら、余計なお世話を焼こうと思ったのですが、何事もなく収まるところに収まってしまったようです。


 これでビアンカにも春が来れば良いですし、フレッドもやる気になるでしょう。

 そう思いながらエリをそっと抱きしめて、その場から転移したのでした。




 跳んだ先は城の庭園です。このくらいの距離の移動でしたら全く問題ありません。

 突然の転移に驚いたエリでしたが、何回か目ですし多少は慣れたのでしょう。出歯亀に夢中になって火照っていた頬を叩いて、庭園の池を覗き込んでいます。


「うーん、やっぱり恋っていいなあ。見てるこっちまで元気になっちゃう」

「玉砕したら落ち込みますけどね」

「違いないわ」


 くすくすと笑って、エリは上機嫌です。

 そのまま軽く、庭園を散歩することにしました。エリに寂しいだなどと言われてしまったので、しっかり仕事をした後でしっかりといちゃつくのです。メリハリのある生活はやはり良いですね。吸血鬼らしいかと言われると疑問ですけれど。


 寝るにはまだすこし早い時間ですが、この時間帯ですと行政区も閉め切っておりますし、勤める者もすっかり帰宅しています。双子は離れの尖塔に部屋を持っておりますし、私とエリたち、そして新しくフレッドたちしかおりません。誰に邪魔をされることもなく、ゆったりと庭を眺めました。

 じっくり歩くと一晩は余裕でかかる庭ですから、池の縁をなぞるように歩くだけです。月見草が光を零して咲く幻想的な雰囲気に、否が応でもロマンチックな気分になります。


「……うん、お城での生活にも慣れてきたし、結構好きかも、ここ」


 エリは眩しそうに目を細めて微笑みました。私も嬉しく思います。

 ……ほんとうでしたら今すぐにでも、エリにここにずっといてほしいと伝えたいです。ですが、それを吸血鬼である私が言って良いのかどうか、不安でもあります。

 やはり、彼女たちがどこか不満を抱いていて、それを押さえつけてしまうような真似はできないと、そう思って二の足を踏んでしまうのです。

 そんなことを考えていると、エリが困った顔をして私を見上げました。何なのでしょう。


「アベルったら、また変なことを考えてない? 告白した時みたいに……告白より先に、吸血鬼になろうだなんて言った時みたいに」


 ……エリは鋭いです。吸血鬼の読心術に似たようなことができるのかと、疑ってしまいそうになります。

 変な奴だとか何を考えているかわからないとか、そんなことを言われる私ですが、エリの前では形なしです。エリが関わると、フレッドにすら考えを読まれそうになりますし……にやけていたりですとか。きっと、実にわかりやすい表情をしてしまうのでしょう。

 私は人の機微にそう聡い訳ではありません。気配りも下手ですし、頑張って気を使おうとするのですが、それがつもり(・・・)で終わってしまうのではないかと気にしてしまう、肝の小さな吸血鬼なのです。


 ですが、エリが今、私の言葉を待っています。下手な気遣いなど要らないと、砕けるのを心配するなら当たってから砕けろと、そう雄々しく応援してくれているようです。

 ……彼女に頼ってばかりですが、もう一度お世話になりましょう。

 私は腹をくくり、勇気を振り絞りました。まっすぐに伝えます。


「エリ、どうか私とずっと一緒にいてくださいませんか」

「……喜んで。こんなわたしでいいなら、ずっと一緒にいるわ」


 エリがぱっと私に飛びついて、抱きついてきました。

 以前の告白の時と比べて、健康になったエリの衝撃が心地良いです。


「何かもう、アベルってぐだぐだ考え過ぎなのよね。やる時は案外強引だったりするのに。どこかアンバランスよね」

「情緒不安定なのかもしれないです。エリが安定剤になってくれますか?」

「ふふっ、いいわよ。わたしがついてなきゃ駄目みたいだし。けど……」


 エリはすこし言葉を詰まらせました。その先は言わなくてもわかったので、私はぐっとエリを抱く腕に力を込めます。


「今はその先は言わないでください。エリの気持ちだけで十分嬉しいですから」


 心がほっかりと温かいのに、どこか冷える感覚を覚えています。

 彼女は吸血鬼になるとは言っておりませんし、それを恐れているのが良くわかったからです。


 “ずっと一緒”は、“人の命のある限り”。“死がふたりを分かつまで”、ですから。


 ……エリに吸血鬼となる素質があるのかどうか、それはまだ調べておりませんでした。

 無いとわかればそれまでだからです。それが恐ろしくて仕方ないのです。

 たとえ強制的に吸血鬼とする、不定形やヘビの血族にお願いしても、理性を失くしたモノとなってしまう場合もあります。そしてもちろん、私はエリにそんな危険を冒してほしくはありません。


 ……そうなると、私はいずれ置いて行かれてしまうのです。

 それが、ただ悲しくてたまりませんでした。



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