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いつも月夜に血の宴  作者: 桂木 一砂
第一章:吸血鬼の夜
34/168

33.怒らせると怖いのです。



 思わず腰を浮かせた私と同様、とマリアも驚いている様子ですが、クリスは余裕たっぷりの佇まいです。


 声のした方向には、礼服に着替えたフレッドの姿がありました。見慣れない姿にすこし違和感を覚えます。その後ろにはルーナと、ヴィクターとヒューゴの姿も見えました。ヴィクターたちも同様にきちっと身を整えて、結構雰囲気が違って見えました。


 フレッドは肩を怒らせるようにして食堂に入って来ると、テーブルの手前で立ち止まりました。そのままクリスを睨みつけています。

 どこから聞いていたかはわかりませんが、もちろん元ハンターとして、いかなるものであれハンターに関わる情報は漏らせないのでしょう。クリスに軽く答えてしまいましたが、軽率だったようです。

 彼の必死の形相には、あれがただの弾丸ではないことを、如実に物語っておりました。

 フレッドのあまりに険しい表情に、私は慌てて間に入ろうとしましたが、それよりも早くクリスが口を開きました。


「……駄目と言われてもね? こちらも死活問題になるから、簡単には引けないよ? それに、そちらがわざわざくれた弾丸だ。それを返せだなんて、そんな勝手なことを言うつもりかな?」

「チッ……とにかく、ハンターの手の内をみすみす吸血鬼なんぞに渡すつもりはねえ。アベル、絶対渡すんじゃねえぞ」

「随分傲慢な言い分だね。僕の友を傷つけたんだ。その借りは返させてもらうよ」


 クリスが席を立って、すっと私の側に立ちます。慌てる私でしたが、フレッドはただクリスを睨みつけて、歯を剥き出しにして威嚇します。むろんクリスはどこ吹く風です。

 ……しかしよもや、こんな板挟みな状況に陥るとは思いませんでした。いえ、吸血鬼とハンターですし、たとえここが極夜の国でも避けられないのでしょう。私の目論見がまたも甘かっただけです。


「ちょ、ちょっとお待ちください。クリス、私は別に……」

「ああ、これは君がどうこうというより、僕の問題だから。ちょっと黙っててくれないかな」

「え、ええっと」

「おいアベル! 良くはわからねえが、こいつはやばいだろ! とにかく、あんたはもう何もするな!」

「あ、あの、フレッド……」

「僕の血族たちもお世話になっているし、僕が譲歩する必要はないよねえ? ここは極夜の国、人や、ましてや人狼がのさばって良い場所じゃない。そのくらいのことはわかっているだろう?」


 クリスは口調こそ穏やかですが、その表情は完全に挑発する者のそれです。美形ですが、その顔はどこか空恐ろしいものでした。

 そしてもちろん、フレッドはそれを軽く受け流せる性格ではありません。今にも人狼に変身しそうなほど、鋭い目つきでクリスを睨みつけておりました。


 ……こんな恐ろしい一触即発状態は、たとえ後一秒でも私の心臓が持ちません。

 私やクリス、それにハンターたちはともかく、エリとマリア、ヒューゴもおりますし、血生臭い真似はここでは控えてもらいましょう。私は勇気を振り絞って、声をあげました。


「はい、そこまでです! 申し訳ありませんが、ここは私の居城、アマデウスの地です。たとえ友でも勝手な真似は許しません。クリス、後ほど必ず埋め合わせをしますから、ここでは抑えてください。フレッド、前に言ったとおり、ここでは吸血鬼が優遇されいます。どうか堪えて、控えてください」


 私は有無を言わせずまくしたてました。ええ、主にクリスが動かないか心配なのです。

 クリスは話のわからない男ではありませんし、ヘビの血族にしてはだいぶ大人しい吸血鬼ではありますが、苛烈な性質を持ち合わせています。彼が本気になったら、この場に止められるものはおりません。


 フレッドたちもこの国に着いたばかりで疲労もあるでしょうし、不安でしょう。ここは一度頭を冷やしてもらいます。

 クリスには後で埋め合わせをしましょう。何を求められるか恐ろしいですが、ここまでフレッドが荒ぶる原因となった弾丸は、どうもかなり重要なようです。一旦留めてもらいましょう。


 フレッドはぐっと喉に息を詰まらせて黙り込みました。人や人狼よりも上にいる存在がここでは当たり前なのだと、まだ呑み込むことが出来ていないのでしょう。

 クリスははじめから何事もなかったのかのように、にこにこと笑っています。


「ああ、そうだね。ここは君の居城で、君はこの領地の支配者だ。親友の頼みでもあるし、ここは引いてあげるよ」


 思ったよりあっさりとクリスが引いてくれたので、私は心底ほっとして肩を撫で下ろしました。


「だけどね……」


 不穏な声が聞こえたと思った瞬間、私は首筋の辺りに衝撃を受けました。

 ……クリスです。私には見えないほどの動きで、一瞬で距離を詰めたかと思うと、私の背後に回って首筋に噛みついたのです。


「う、ぁっ……!」


 激しい痛みに、私は思わず呻き声を漏らしました。

 以前噛まれて血を吸われた時よりずっと乱暴で、遠慮のない行為でした。

 音を立てて血を啜られ、文字どおり全身から血が引ける感覚を覚えます。

 クリスの内心は実は、相当業腹だったのでしょうか……。


 がしりと手のひらで顔を抑えられ、肩口にもがっちりとクリスの腕が回っています。私は身動きひとつ取れません。

 フレッドやエリたちが驚いているだろうな、と思った時、不意に膝と両手が固いものに触れました。気づけば私は床にしゃがみ込んでおり、かろうじて両手をついて身を支えていたのでした。


「――アベル!」


 エリの声が聞こえて、肩に温かい手が触れます。激しい眩暈で見ることも動くこともできませんが、心配してくれているのでしょう。大丈夫だと伝えたかったのですが、口を開くことも無理でした。ずいぶんと大量に、血を啜られてしまったようです。


「……ちょっとだけ、気に入らないな。こういうのを嫉妬って言うんだっけ? まあ、今日のところはこれで許してあげるよ。お腹も膨れたしね」


 ぐわんぐわんと割れそうな頭の隅で、クリスの気配を感じました。


「それじゃあ、アベル。また会いにくるよ。友達を大事にね」


 ……その声を最後に、またも私の意識は途切れたのです。




 はっと気づいた時には、私はソファに横になっておりました。

 目の前には心配そうなエリの顔と、その向こうに気まずそうなフレッドの顔が見えます。体に何か掛けられたと思ったら、マリアがブランケットを持ってきてくれたようです。

 どうやらここは、食堂の近くの休憩室のようでした。大きく場所を取るベッド代わりにも使えそうなソファが並んでおり、私はそのひとつに寝かされているようです。


「……すみません、ありがとうございます」


 私がかすれた声を漏らし、呻きながら起き上ると、エリが慌ててそれを押しとどめようとしました。


「アベル、平気!? 無理はしないでいいのよ。っていうか……何なのよ、あいつ、いきなり血を吸うだなんて!」

「はいはい旦那様、大人しくしておきな。ああ、無理するんじゃないよ」

「……悪い、アベル。俺が軽率過ぎた」


 エリとマリアはせっせと世話を焼いてくれ、フレッドとヴィクター、そしてヒューゴはすこし居心地悪そうにしておりました。

 アマデウス領に着いて早々、とんでもないところを見せてしまいました。

 申し訳なさに、私まで居心地が悪いです。血を吸われたせいだけでなく、頭もかなり痛んで難儀いたしました。


「……こちらこそすみません。とんでもないところをお見せました」


 背もたれに寄りかかりながら身を起こすと、肩口から胸元までべちゃりと嫌な感覚があります。

 見れば首筋からかなり派手に出血し、せっかく着替えたシャツが血みどろになっておりました。かなりの大惨事です。

 クリスは何を考えてあんなことをしたのでしょう。考えても仕方のないようなことですが、痛みもあって私は思わず頭を抱えました。


「失礼いたします」

「ああ、閣下! お帰りになって早々災難でしたな!」


 ルーナの声と共に、場違いに明るいフィリップの声が聞こえました。

 彼は慌ただしく駆け寄ると、私の前に膝をつきます。エリがつと身を引いて立ち上がりました。


「詳細はまた後でお伺いします。まずは閣下の傷を癒しませんとな」


 そしてフィリップはおもむろに腕をまくりあげました。血を提供するために、ルーナが呼んでくれたのでしょう。

 エリの目の前ですし、他にも人目があるうえに、中には元ハンターもおります。そんな中で人の生き血を吸うだなんて気まずいどころではありませんが、みんな心配してここに居てくれるようです。追い出すのも気が引けました。

 急激な貧血でだいぶ参っていたこともあって、私は大人しくフィリップから血をいただくことにしました。何でしょうね、羞恥プレイですか。


「あ、私はしばらく血の供給をしておりませんでな! 多少多めでも大丈夫ですぞ」

「……ありがとうございます」


 気恥ずかしいのでさっさと済ませようと、私はその腕に噛みつきました。フレッドたちの視線が怖いです。

 急いで済ませたかったのですが、一気に吸うとフィリップの体調が悪くなってしまうでしょうし、ゆっくりと飲まねばなりません。見られていて落ち着かないですが、我慢しましょう。

 熱い液体が喉を通り、腹が温まるような感覚になってやっと、ぐらぐらする視界も収まりました。


「……すみません、ご馳走様です。数日は体調に気をつけてくださいね」

「このくらいでしたら平気です。まだまだ若い者には負けません」


 にかっと笑うフィリップは、何故かだいぶ調子の良いようすです。ですが今の血の味から、私は彼の健康状態がすこしわかってしまうのです。注意しておきましょうか。


「……フィリップは少し、お酒が過ぎるみたいですね。健康にもうすこし気を使ってください」

「やや、閣下にはすぐばれますな! 他には不具合はないでしょうか?」

「吸血を健康診断代わりに使わないでください……」

「はっはっは、吸血鬼のほうが血には詳しいですからな。血液検査の項目を吸血鬼診断にした方が良いのでは、という声もありますぞ」

「私は勘弁してください。吸血鬼の医師で、希望があったら考えますね」

「お願いいたします、閣下」


 気まずいのを誤魔化すように、フィリップと無駄口を叩いておりますと、何故かフレッドたちハンター組がぽかんとしています。何だか面白い表情で、気にはなったのですが放っておきました。

 とりあえず、フィリップにフレッドとヴィクター、ヒューゴの編入手続きとその手配、マリアに同じく三人の世話を頼みます。ふたりは返答すると、きびきびと動きだしました。


「では、速やかに。書類が出来ましたらすぐに執務室に届けさせますので」

「はい、お願いします」

「お客様のことはお任せください。さあ、お部屋にご案内いたします。とんだ騒ぎでしたが、まずは旅の疲れをとっておくつろぎくださいな」


 私がフレッドを見てうなずくと、彼は慌てたようにうなずき返しました。あとはマリアが万事やってくれるでしょう。

 マリアが促してフレッドが立ち上がり、ヴィクターもヒューゴもやっと我に返ったのか、戸惑いながらも部屋を出て行きました。気を悪くしたようすはありませんし、興味深げに辺りを見回していましたから、たぶん大丈夫でしょう。冷や水をかけてしまったでしょうし、後できちんと説明しておかねばなりません。


 そしてフィリップや双子もさっと立ち去って、やっと私はエリとふたりきりになれたのです。


「……大騒ぎをしてすみません、エリ。あと心配もかけました」

「ほんとうよ、まったく……でも、平気そうで良かった。ちゃんと帰ってきたし、許してあげるわ」


 エリの微笑みに、私は一連の気疲れがあっという間に解きほぐされたのを感じました。

 ……仕事は溜まっているでしょうけれど、すこしいちゃついても罰は当たりませんよね?

 私はそっとエリの頬に手をやると、彼女はきょとんとしましたが、やがてその頬を赤く染めました。

 だから可愛いです。悶えさせないでください。

 大真面目にそんなことを考えながら、私はふと微笑んで、その柔らかな唇に口付けたのでした。




 屋外が良いとエリが言ったので、バルコニーにお茶を用意しました。

 エリはアップルティーが好きなので、私も練習したのです。彼女と一緒に楽しめるお茶の時間は、得難い空間でありました。

 私は留守にしていた時のことをエリにたずね、彼女は私がクリスに語ったことをより詳しく聞いてきます。ヘルシングの遊撃隊長が美人だったと言うと拗ねておりました。可愛いです。


「あなたって出かける度にこんな大騒ぎするの? どっと疲れちゃったんだけど」

「いえ、エリの時と今回だけですよ、こんなおおごとになるだなんてことは。今までにも、人を連れ帰るだなんてありませんでしたし」


 温かいお茶を口にしながら、私はしみじみと二連の騒動を振り返りました。

 エリの時は、エリだけを連れ帰る予定でしたのに、ヨハンとイザベラ、マリアまで一緒になってしまいました。私はそれに悔いもありませんけれど、三人はまだわかりません。

 フレッドたちは、主にディートリンデの企てです。吸血鬼が人にとって有益となるのを防ぐのと、追っ手を指し向けて命を奪うには忍びないという、フレッドたちの救命が目的でした。吸血鬼の私を見逃すという、ハンターにあるまじきことをしてでも、そちらを優先したのです。結果、フレッドたちもここに来るはめになってしまいました。

 ですが案外、元ハンターの彼らもそれを受け入れているようですし……まあ、クリスのような吸血鬼を前には、なかなか上手くいかないでしょうけれど、そもそもこの城に他の吸血鬼、別の血族がやって来るのは稀です。もう、そうそう騒ぎにはならないでしょう……ならないと思いたいです。


「フレッドたちって吸血鬼ハンターなのよね? アベルってそんな人たちとも知り合いだなんて。やっぱり変な吸血鬼だわ」

「否定はしませんしできませんけれど、フレッドたちのことを言いましたっけ?」

「あんたがぶっ倒れてた時に、簡単に聞いたの。後でちゃんと自己紹介しなきゃ」


 私は思わずテーブルに突っ伏しました。何故、格好付けたい女性の前でばかり、こうもみっともない姿を晒すはめになってしまうのでしょう。クリスが恨めしいです。

 くすくすとエリが笑って、私の頭を撫でてくれました。恥ずかしいですが、それだけですこし嬉しくなってしまう私はやはり単純です。


「フレッドって人狼だし、ヴィクターさんとヒューゴって子もハンターだったのよね?」

「ええ。でも資格を剥奪されてしまったのでもう名乗れませんし、ここでは吸血鬼ハンターなんて出来ませんし、させませんけれど」

「まあ、それはそうよね。ここで私やマリアたちは楽しくやってるけど、あの人たちはどうするのかしら」


 そんなことをしゃべっていると、城の庭のほうが何やら騒がしくなりました。

 バルコニーから見下ろすと、マリアとイザベラ、そしてヨハンに、件の三人が一緒になっておりました。ヨハンが運動に連れ出した黒い一角獣を連れており、ヒューゴだけでなくフレッドやヴィクターも興味を示しているようです。


「……まあ、私たちもまだここに来て日が浅いし、あの人たちもいい人そうだったから、上手くいくわよ。吸血鬼に喧嘩を売って貰っちゃ困るけど」

「そうですね」


 エリが微笑みながら、庭を見下ろしています。仲良くなれそうなのは良かったです。

 ヒューゴはまだ子どもですし、教師を手配したほうが良いでしょうか。義務教育はありますけれど、彼は実際ですから学園には中途編入となります。本人の希望もありますし、どういう方式で学ぶか決めてもらいましょう。


「エリは学園に通ったりはしないのですか?」


 彼女は城で家庭教師に就いてもらっています。歳の近い者たちと一緒に、学びに通いたくはないのでしょうか。

 私がそんな疑問を口にしますと、エリは困ったように首を振りました。


「私っていちおうもう成人だしね。調べたんだけど、こっちにある学校って入学に年齢制限はないみたいだけど、やっぱりずっと若いうちから通う人が多いみたいだし。それで、私の頭もそんなに良くないから、付いて行くのも大変だと思うと気が引けちゃって……」


 おや、と思いました。幼い頃から病弱で、ほとんど家とあの小屋から出たことのないエリですが、だいぶ行動的で前向きな彼女です。何でも挑戦しようと片っ端から手をつけるだろうと思ったのに、意外と引っ込み思案なのでしょうか。

 それともやはり、この国の雰囲気に馴染みづらいのでしょうか。


「……心配ですか? たとえ私の目の届かない場所に居ても、領主の紋を持っていれば大丈夫ですよ。吸血鬼だったらそれを見れば一発でわかりますし、人だって……」

「ううん、違うの。えっと、それにほら、私も勉強より体を動かすほうが楽しくって。元気になったし、運動も嫌いじゃないし。頭を使うことは最低限できればいいかなあって……」


 エリは目を泳がせて、何だかしどろもどろです。確かに乗馬やキャンプなどをしたいと言っておりましたが、そんなに頭を使う勉強は苦手という訳でもなかったはずです。

 それに、学園はただ学ぶ場所というだけではありません。目標を持つ者同士が一緒に学んで、生涯の友を作ることだって出来るでしょう。きっとエリにとっても、得るものが多くあるはずです。


「ですが、ヨハンやイザベラ……それにフレッドもですか。彼らもいますけれど、同世代の友人だって欲しいでしょう? それだとやはり、この城にいては作れませんよ」

「えっと、そういうことでもなくって」


 エリはもどかしそうに、それでいて顔を真っ赤にしています。私が首をかしげますと、ううと小さく唸りながら、やがて俯いてしまいました。そんなに嫌だったのでしょうか。

 私は慌てて、嫌なら無理に通わなくても良いのだと伝えようとしましたが、それより前に、エリは小さくこぼしました。


「……アベルったら、ふだんから仕事が忙しくて、あんまりおしゃべりも出来ないから。学校に通うことになったら、ますます一緒にいられる時間が取れないかなって……」


 私はテーブルに額を落としました。ごん、と景気の良い音がしましたが、痛みなど感じるはずもありません。

 何故神はこのような可愛いらしい存在を生み出したのか。小一時間問い詰めたいです。


「ア、アベル?」

「だから私の前でそんなに可愛いことを言わないでください……心臓が止まります」

「元から止まってるじゃない! ちょっと何よ、わたしがせっかく――!」

「あああ、ごめんなさいすみません。嬉しかっただけです許してください」


 私は慌てて顔を真っ赤に染めたエリに許しを乞いました。怒らせたい訳ではないのです。

 ほんとうに心臓に悪い娘ですが、嬉しさからつい表情筋が緩んでしまいます。

 ですが、確かにあまり長い間、エリと一緒にはいられません。また仕事をさぼってばかりになるのも気が引けますし……現在もさぼっていますが、まあ、身内や領民に対して、もうすこし真摯でいようと決めたのです。


 ですが、それでエリを寂しがらせてしまうのであれば、話は別です。

 長時間は無理ですが、すこしでもエリといちゃつく時間も取らせてもらいましょう。

 私はエリに謝りながら、彼女の怒りの拳を受けて、だらしなく笑ったのでした。



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