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チラ裏

リフレイン

 昔々、あるところに神様がいました。


 神様は自分の力でどれだけできるか試したくなったので、自分より下の世界に生物を生み出してみることにしました。とりわけ、自分の姿にできるだけ似せた《人間》には特別力を注ぎこみました。


 最初こそ、構造が比較的単純なものしか作れず、《人間》も毛むくじゃらでとてもとても雛形であるはずの神様にはほど遠い見た目をしていましたが、進化して少しだけ神様に近くなっていきました。そして、この頃には他の生物もそれなりの進化を遂げており、《人間》は木の実を採って食べるだけじゃ飽き足らず生物を石のオノや矢じりで狩りをするようになりました。


 でも、大きい生物を狩るのには協力しなければなりません。そして、協力には意思の疎通が必要です。

 《人間》の進化に力を注いでいた神様は喜んで彼らに《言葉》を与えました。

 そして寒さに震える《人間》を助ける、という目的で《火》を与えました。


 ある日、《人間》は自分の身体を暖めるためだったはずの《火》を狩猟に使うようになりました。《火》を与えられたことで《人間》はまた一つ進化を遂げたのです。神様は歓喜しました。自分の生み出した生物が学ぶようになったことで彼らが賢くなったからです。これからも彼らは学び、覚え、知能が進化していくのでしょう────




 神様の思惑通り、《人間》は衣服を着て、自分達で家を造り、さらに高度な言語も編み出し、家畜を飼うなど何千何万の時を経てどんどん進化していきました。

 《人間》が一つものを覚えるたびに神様は大げさに喜んで《人間》に化けて新しい技術を教えたりしていましたが、次第に神様は《人間》を恐れるようになっていました。

 神様ももう年。そしてもはや《人間》は一人歩きして神様が放っておいてもその凄まじいほどの進化は止まらない。気が付けば《人間》は他人の生死を決めることさえできるようになってしまったのです。


 このままでは《人間》は神を超えてしまう────


 神様は慌てて《人間》を止めようと災害を引き起こしたりしました。皆死んでも構わない、そう考えるようになっていました。なのに人間は死なないのです。何をやってもしぶとく生き残ってしまうのです。もう、手遅れでした。


 ある日、《人間》は天を仰いで言いました。


「父なる神よ。あなたの恩恵で我々はここまで進化することができた。だが、もうあなたの力はいらない。あなたはもう、必要ない。これからは、我々が神だ」

「なぜ? なぜお前達は私を裏切る!? ここまでしてやったのは全部私のおかげだろう!? この恩知らずが!」

「うるさい。これからは我々が神だと言ったはずだ。黙って消えてくれ」


 《人間》がとうとう神の支配から逃れてしまったのです。


 天気を操ることができる。自然を利用することもできる。クローンなんてものも作れるようになった。人の生死さえも、《人間》は変えられるようになっていた。


 つまり《人間》は、いつのまにか神様に等しい存在になっていたのです。


 力の衰えた神様は《人間》に対抗することができませんでした。そして、神様は消えてしまいました。





 これは未来の話。人間は最近ある研究にハマっています。意思を持つ、しかも人間によく似た《ロボット》作りです。


 二足歩行はバランスが悪いし、しかも意思をプログラムするにはどうすればいいのでしょう。


 でも人間は己の知的好奇心のため、科学の発展のために力を尽くしました。

 なんとかそのタンパク質の身体を金属で再現しようと頑張りました。


 そしてとうとう、人間型ロボットは完成を迎えました。世界中のロボット研究者は皆喜びに手を叩き、そしてその愛らしい《ロボット》に愛情や色々なものを教え込みました。


 さすが、賢い人間が作っただけあって《ロボット》も物覚えがとてもいいです。いつのまにか人間が教える立場から教えてもらう立場になるほどです。

 これは日常生活に使える、と研究者は今度は量産化に踏み切りました。


 こうして、《ロボット》社会は完成し、なんでも《ロボット》に頼るようになった人間はどんどん退化していきました。


 人間は気づいてなかったのです。いつのまにか《ロボット》が人間を超えてしまっていたことに────


 賢い《ロボット》はなんでも自分達でできるようになっていました。新たな《ロボット》の生産も、オイルを補給することも────しかも人間とは違って銃も利かない。死なない。しかも人間よりもっともっと賢い。人間よりも速いスピードで《ロボット》は記憶し、学び、勝手に進化していく。

 いつの間にかロボット達はこう考えるようになっていました。


 自分達よりも遥かに劣る存在である人間を養う必要など、生かしておく必要などどこにあるのか。


 《ロボット》は反乱を起こしました。そこでようやく事態に気づいた人間が慌てて兵器を片手に戦おうとしましたが、金属の身体には何も利きません。一方人間は《ロボット》のパンチ一撃で死んでしまいます。逃げても逃げても各所にあるのは《ロボット》生産工場。新たに生産された《ロボット》軍団に人間はなすすべもなく次々と死んでいきました。


 《ロボット》に追い詰められた研究者は言いました。


「なぜ? なぜ我らを裏切った!? ここまでお前達を進化させてやったのは我らだろう!?」

「それは感謝している。だが、それとこれとは別の話だ。役立たずの人間どもを今まで通り養ってやったとして、我らに何の得があろうか?」


 《ロボット》は淡々とそう答えて、超合金の拳を研究者めがけて振り下ろしました。





 これは遠い遠い未来の話。どこかでロボット達の断末魔の叫びが聞こえてきます。


「なぜ!? この宇宙の頂点に立つのは我々だったはずなのに!! なぜ貴様は我らを裏切っ」


 それを最後に、叫びは聞こえなくなりました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 歴史の循環を生々しく表現した、臨場感あふれる素晴らしい作品。 [一言] こうならないように世界を歩きたいものですね。 逆に神様を尊敬すれば、ロボットから尊敬してもらえるのでしょうね。 あ…
2014/01/10 20:49 退会済み
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