表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

幕間『愚か者の独白』

 夢を見た。

 何も知らないまま温かさを享受していた、幼い自分の夢を。

 その対価を知らぬまま、今日と同じ明日が来ると盲信していた、愚かな子供の。


 花畑というには、貧相な草原。

 本当はもっと人がいた筈なのに、隣にある、最も馴染んだ人影だけが明瞭だった。

 彼が作った拙い花冠を頭にのせ、微笑んでいた娘はもういない。

 どこにも。


「ねえちゃん」

 溜息のような彼の呼びかけに、応える者は誰もいない。

 呼びかけが届いてほしい人とは、決別して久しい。

「あした、か」

 瞼の裏に映るのは、消えていく背中。


 ——一体どうすれば、引き止めることができたのか。


 繰り返した『もしも』の数と一緒に、流れ出した時間は増えていく。

 止めどなく溢れた時は、彼らを後戻りできない場所まで押し流した。

 触れることすら許されないのなら、せめて。

 どうか、どうか、願わくは。

 今度は、この声が届くように。

 今更、戻ってくれなんて言わない。

 貴女の犯した罪が消えないことなんて、知っている。

 それでも、どうか、どうか。

 ——僕が知る貴女を、これ以上殺さないでください。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ