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オトナなシチュエーション、再び

「……ごめんなさい……。……ごめんなさいっ……」

 娘は、両手で顔を覆った。

 指の隙間から、止め切れなかった雫が滴り落ちる。

「……私は、あなたを、……望んで、あげられないっ……」


 それが、彼女が自分のために零した最後の涙だった。


 恨んでいい。

 恨んでいいの。

 だから。

 だからどうか——


 ***


「——もう少し、ですね。我が君」

 気だるげな臣下の声に、女は僅かに目を伏せた。

 情事の後の倦怠感に支配された肢体を、ひんやりとした手が撫でる。

 その愛撫は、埋もれた熱を呼び覚ますものではなく、ただ優しいものだった。

 女は目を閉じ、傍らの温もりに身を寄せる。

 何度も繰り返した夜と、同じように。

 仄暗い灯りに照らされた室内は、上等な設えとはいえ、必要最低限の家具しか置かれておらず、殺風景だった。

「あと少しで」

 昏いものを宿した言葉は途切れ、おもむろに吐息が重ねられる。

 赤銅色と濃い目の茶色の視線が絡み、女は、乾いた血の下に不気味に(うごめ)く熱を見る。

 白いシーツの上に惑う、長い髪。

 触れ合う肌が、再燃した欲望を互いに伝える。

 貪るような口付けに酔いながら、女は、いずれ来る道の果てを思った。


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