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リオン君による某主従の観察記録 《序》
もし、そうなったのが運命だとしたら、『彼』は特に運命というものを恨むつもりはなかった。
唾棄すべき原因に憎悪し、喪失を嘆くことはあっても、ささやかな欲求が、『彼』の救いとなっていたので。
『彼』の意識は、細かな泡の集合体のようなものだ。
『彼』の中の数多の魂の叫びを聞きながら、『彼』自身はどうしようもない現実の中に浮かび上がっている。皮肉にも、『彼』の中のいかなる叫びも、『彼』を透過し誰かの鼓膜を震わせることは叶わない。
『彼』は、無数の意識と情動を包み込み内包する、泡の被膜そのものであった。




