表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
枯れた花冠はあなたに  作者: 詞乃端
番外編
23/28

番外編『星無時に頑張る子供』おわり

 溢れだしていた何かが急速に(しず)まる。

 星無時の終わりは、いつだって唐突だ。

 取り戻した平穏の中、昨日と同じような蒼い空を、子供は見上げる。

「ありがとうございました」

 娘は子供に向かい、優雅に頭を下げた。

 教本のような貴婦人の礼に、子供は微妙な顔をする。

「……なぜなのだろうな」

 不思議そうに顔を上げ、娘は子供を見た。

 子供の老いた瞳は、娘ではなく、己が通り過ぎた過去に向けられていた。

「父は、居場所が欲しかっただけで、国も、王座も必要としなかった。……それなのに、どうして、皆、……縛るのだろう?」

 始まりの王の末子は、迷い子のような表情を浮かべて独白する。

「——他の方々のことは分かりかねますが」

 血肉の山河を歩むことを決めた娘は、ふと笑みを浮かべた。

「私は、欲しいものがあるのです」

 何も知らない童女のような、透明で無垢な微笑。

 

「幸せになって欲しい人が、幸せになれる国が欲しい」

 

 敵にならないと分かっている存在だけだから、口にすることができた言葉。

 陳腐(ちんぷ)で使い古された願いを、いっそ夢見るように娘は(ささや)いた。

 

 

 

 ——そして、国が手に入った、それからは?

 その時子供の心に湧いた疑問は、最期まで、娘の耳に届くことはなかった。

 

 

 

 

 蛇足であるが、数々の意味不明な妨害により、子供が大霊廟に帰還できたのは、星無時の一週間後であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ