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幕間『廻(めぐ)る鞘の意義』
全ては盤上の上だった。
何もかもが終わった後、彼らはようやく知ったのだ。
◆◆◆
今、自分が生きていることが理解できない。
「ニコっ!」
茫然と立ち尽くしていた青年は、のろのろと、駆け寄って来る友人へと顔を向ける。
濃い目の茶色の瞳には、ただ、友が無事であったことへの安堵が溢れていた。
自分が命を使い潰しても構わないと感じた、ただ独り。
だから、道を切り開くために、彼の血筋の忌まわしい遺物と対峙したのだ。
死ぬだけだと分かっていても。
『次は、お前の番』
愉しげな少女の囁きが、耳にこびり付いて、離れない。
血と腐臭に塗れた血統が代々継承してきた呪詛は、今度は自分に焼き付いた。
『いつか自分の主君を殺すためだけに、生きるの』
その為に生き、その為に死ぬ。
——その為だけに、生み出された。
赤銅色の髪の青年は、己の掌を強く握りしめる。
一度は拒絶した自らの存在理由が、再び、彼の目の前に立ちはだかっていた。