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 その花冠は色褪(いろあ)せ、下手に乱暴に扱えば呆気なく崩れ去ってしまう程に(もろ)かった。

 枯れ果てた花冠を、白い手がそっと持ち上げる。

 荒れていたとはいえ、女性らしい柔らかさを備えていた掌は、硬くなって久しい。

 そして、陽だまりの香りがした指先は、当の昔に浴び続けた血肉の腐臭がこびり付いて離れなくなっていた。

 花冠が置かれたのは、真っ赤なドレスの上。

 血や炎の色をした布地は、一目で分かるほどに上等な代物で、野の花で作られた花冠には不釣り合いだった。

 星の光一つ見当たらない朔の夜。

 何もかもが闇の中に沈んでいる。

 仄暗い照明の(ささ)やかな(ともしび)だけが、枯れた花冠を照らし出していた。


 ——その花冠を頭にのせ、愛しい人達と微笑んでいた娘は、もういない。


 どこにも。




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