おにぎり積み木崩し
ツイッターお題小説。「夕焼けの見える駅のホーム が舞台で『積み木』が出てくるご飯を食べる話を5ツイート以内で書け」。
ちょっと字数が足りなかったので加筆。
ローカル線の閑散とした無人駅は、かろうじて雨除けのあるベンチに、頼りない街灯、ぼろぼろになった駅の標識と言ったものしかない、寂しい島式のホームだった。
夕焼けでオレンジ色に染まるベンチでは、若い母親と男の子の親子が、二人でそろって次の普通電車を待っていた。
「おなか減ったね、早いけど、ごはん食べようか」
母親のアサミは、持っていたハンドバッグから、コンビニで買ってきたおにぎりをいくつか取り出した。
「うん、食べる」
アサミの息子のケイタは、取り出したおにぎりを一カ所に集めた。
「どれにしようかな……そうだ」
そういうと、ケイタはおにぎりを、一つずつ積み始めた。
「ケイタ、何やってるの?」
五つすべて積みあがったところで、アサミはケイタに聞いた。
「えっとね、ここからおにぎりをとって、くずれなかったら、たべられるの」
「え、何それ、積み木崩し?」
「じゃあ僕からね」
そういうと、ケイタは真ん中のおにぎりを引き抜こうとした。が、上の方が崩れてしまった。
「あら、残念」
崩れたおにぎりを積み直し、「つぎはママのばんだよ」と言う。
「どこからでもいいの?」とアサミが尋ねると、「どこからでもいいよ」とケイタは返した。
「じゃあ」とアサミが言うと、おにぎり積み木の一番上をつかんだ。
「え、ママ、ずるい!」
「どこからでもいいって言ったじゃない」
「えー、じゃあぼくもー!」
そういって、ケイタは上からおにぎりを一つつかんだ。
結局アサミが三つ、ケイタが二つのおにぎりを手に取っていた。
「ママのほうが多いね」
「そうね」
そういいながらおにぎりの袋を取ると、きれいな夕焼けが目の前に広がっていた。
「夕焼けがきれいね」
「うん」
二人がおにぎりをほおばって夕焼けに見とれていると、待っていた電車がやってきた。
たまには、のんびりした話を書きたくなるものです。