魔王/新たな町に!!
現在位置:ハレル火山
西の魔王の城まで1500㎞
「マオ~、おなかすいた」
「お前らはさっきからそればっかりだな」
「…だって、マオが後先考えずに宝を全部あの村に置いてきたから…」
それは、森のダンジョン攻略に成功した4日前までさかのぼる。
俺は、大きな袋を抱えて村に向かっていた。
「マオ、その袋は?」
ケイトは袋の中が気になる様子だった。
「これか、これは宝石と1000Gコインだよ。あの部屋にあった宝の一部をちょっとな」
「なんという金への執念、崩れゆく神殿の中でこんなに持ってくるなんて」
フォレスは少し呆れ顔でそう言う。
「いや違げえよ。あそこに村が見えるだろ。」
前方に見える村を指さしながらそう言う。
「あそこの村は貧困で困ってるんだ。それにダンジョン攻略の世話になったからな」
「おお、勇者さまご無事で!!」
村の中から村長が出てきた。
「村長、こたびは世話になったな。これは礼だ」
俺は村長に袋を手渡す。
「お、おもい、これは!!」
村長は、袋を開け感嘆の声をあげる。
「ダンジョンから持ってきたはいいが、欲張りすぎてしまってな。旅の邪魔なので受け取ってはくれないか?」
「ありがとうございます…勇者さま…」
これだけあれば、もう貧困に困るようなことは起きないだろう。
自己満足かもしれないが、俺は人助けをしたのだ。
そう考える…ととてもうれしかった。
「そうだ、これを持っていきなされ。これからきっと役に立ちます」
村長はそう言うと、俺の肩にネックレスをかける。
『謎のネックレス』には王冠をかぶった男の顔がついていた…。
そして今、
「ねえ、思ったんだけどさあ」
ケイトは眉間にしわを寄せる。
「あの、村に全部置いてくる必要はなかったと思うんだけど。生活費と食費くらいは」
完全忘れていた。
俺は、数日分の食費を女村人に渡していたのだった。
恰好つける前に、自分の所持金を確認するべきだった。
…まあ、そんなことを思い返し後悔しても、もう遅いのだが。
俺たち『逆襲連合』の腹の音が、鉱山に響き渡る。
「…腹減ったな、このままじゃホントにやばいかも」
しばらく歩くと、前方に町が広がる。
『鉱山都市ガレル』
看板にはそう書いてあった。
町のいあたるところから煙が上がっている。
硫黄のにおいも少しする。
どうやら、ここは鉄鉱と温泉の町のようだ。
この町で、なにかしらの依頼を受けて金を稼ぐとするか…。