魔王/ダンジョンへ!!1
俺がダンジョンに入ってから半日が経過した。
今のところ、村長に言われた通りに物事を進めている。
…それにしても、とんでもない臭いだな。
臭気を放っていたのは、村長から頂いた『木の実』である。
今より約8時間前。
村長宅…。
「勇者殿、あなたにダンジョン攻略の助言を授けよう。」
俺は、出発する直前、村長から助言をもらっていた。
「ダンジョンには必ず終着点が存在するのです。ゴールの無い迷路ほどつまらない物はないですからな」
「そのゴール、つまりダンジョンの中枢にたどり着くには…それは魔力を感じることです。」
「ダンジョンには強い魔法がかかっておりましてな、それはすべてダンジョンの中枢から出ているのですよ。つまり、森の中で一番魔力が強い場所…そこがゴールなのです。」
俺は不思議に思った。
なぜ小さな村の村長が、ダンジョンについてこうも詳しいのか。
俺にとっては好都合なのだが…。
「そして問題点が一つ。」
「たとえゴールにたどり着いても、帰り道がわからなくては意味がありますまい。」
言われてみれば…確かに。
「そこで活躍するのがコレなのです。」
村長は戸棚から何やら『木の実』のような物を取り出した。
それはこげ茶色に変色していて明らかに異彩を放っていた。
「…あの、なんでしょう…これは。」
「これは獣除けにも使われる、悪臭を持った木の実です。」
「…なぜそんなものを?」
「ここらはコレの生息地でしてな。そこらじゅうに自生しているのですよ。」
俺は恐る恐るその実を嗅いでみた。
…あれ、臭くないぞ。
「その実じたいには臭いはありません。臭うのは実の中の果汁です。」
「森に入ったら使ってくだされ。」
「魔法にかかっているといっても、コレの臭いまでごまかすことはできますまい。」
現時刻20時30分
俺は、果汁を通った道に垂らしながら進んでいた。
村長の言っていた通り…すごい臭いだ。
直に嗅ぐと意識が飛びそうだ。
これなら道が変化しても迷わずに済みそうだ。
魔力の中枢もだんだん近くに感じるようになった。
ゴールはそろそろだろう。
ケイトを連れて行ったのが守護獣ならば、
中枢にはおそらく…ケイトがいる。
俺が守護獣なら、間違いなく宝のある中枢を守るからな。
俺は今までで一番近くに魔力を感じた。
森が開けて、神殿のような建物が目の前にあった。
これがダンジョンの中枢?
とても古い建物のようだ。
造られてから1000年近く経過しているのではないだろうか。
…ここにケイトが。
森の神殿 地下5階
…マオ…早く助けに来なさいよ…。
少女は、助けを待っていた………