魔王/森のダンジョンへ!!
ケイトは…消えてしまった。
いや、ケイトなどという者は、最初から居なかったのか?
今までのが、すべて夢だったのだろうか?
…いや、そんなはずはない!!
俺は実際にケイトと旅をしていたはずだ。
地面に目をやると、そこには『ナイフ』が落ちていた。
それは、森の中でケイトが俺に貸してくれたナイフ…。
これで証明された。
ケイトは夢なんかじゃない。
まだ森のどこかで、俺の助けを待ってるに違いない。
待ってろよケイト、かならず探し出してやる。
森から目測で500m。
川を隔てた向こう側に、小さな村が見えた。
…まずは人手を集めないと。
それと、ここらの土地に詳しい人も必要だ。
村の前までやってきた。
とても小さな村だ。
村民が100人居るかどうかと思うほど…とても小さい。
皆貧しい恰好をしている。
貧困で苦しんでいるのがよく分かった…かわいそうに。
とにもかくにも、今は人集めだ。
女村人が子供と一緒に歩いていた。
「あの、すまない。旅の勇者だ、村長さまはどこに居られるので」
女村人は無言のままある一軒を指さした。
「あそこにいらっしゃるのだな。すまない、助かった。」
「…少しだが、これは手間賃だ。受け取ってくれ…」
俺は子供に100Gのコインを3枚手渡した。
パンが1つ10Gほどだから…五日ほどの食費代にはなるのではないだろうか。
もっとあげたいのだが、こちらもそこまで金銭に余裕はない。
女村人とその子供は深々と礼をしていた。
ここが村長の家か…。
俺は木製のドアを二回ほどノックした。
中から男の声がした。
「どうぞ、入りなさい。」
「失礼する。」
平屋建ての民家のなかは、とても質素なつくりになっていた。
生きていくために、必要最低限の家具や食器があるだけでなんの飾り気もない。
家の中に、ひげを生やした老人が立っていた。
「私は、旅の勇者だ。あなたにお願いがあって参った。」
俺は村長に、今の現状を説明した。
「…あの森に入ったのですな…」
村長の、顔はとても暗かった。
「あの森は…『生きている』のですよ。」
「森が…生きている?」
村長は補足を付け加えた。
「いえ…正確に言えば少し違いますな。」
「あの森は『ダンジョン』なのです。」
ダンジョン。
財宝が隠されていたり怪物が住み着いていたりするかの有名なダンジョンが…あの森?
「森はダンジョンの魔法にかかっておりましてな」
「ひとたび入ればなかなか出られぬしくみになっておるのですよ。」
「じゃあ、昨日俺たちを襲ったのは…」
「おそらく、ダンジョンの守護獣かと…」
「すぐに森へ向かいます!!」
「一人で向かわれるので?」
「…はい。ダンジョンなどという危険なところに大勢で行くのは『自殺行為』です。」
自分の鼓動が早くなるのが分かった。
これが『不安』という感情なのだろうか。
たかが数日、一緒に旅をしただけではないか。
たったそれだけの仲…なのになぜ、こんなにも胸が苦しいのか…。
魔王をやっていた頃は、こんな気持ちになったことはなかった。
最悪の事ばかりを想像して、気持ちだけがからまわりする。
ケイトは無事なのだろうか、
もう死んでしまっているのではないだろうか・・・。
そんな事ばかりを…考えていた。
「私にあなたを止める権限はありません。」
村長は、重くのしかかる空気のなか口を開いた。
「ですが…一人で行くのでしたら、私の言葉、『助言』と思い聞いていきなされ。」
そよ風の気持ちい草原を1歩、また1歩。
…俺は、ダンジョンへと向かう。