魔王/迷子になる!!
町を出発してわずか2日。
現在地:深緑の森
現時刻:午後10時過ぎ
俺とケイトは…道に迷っていた。
看板には『強いモンスターに注意!!』と書いている。
ここは『深緑の森』。
この地区では指折りの危険区域だ。
時間も時間なせいか、辺りは濃い霧が立ち込めていた。
周りの木々も、苔やらなんやらが付いていてとても不気味である。
ケイトは、俺の左腕のぴったりとくっついていた。
「…なあ、お前ひょっとして怖いんじゃねえか?」
「ば、ばばばバカじゃないの!!」
「私は勇者よ。この程度で怖がるなんて…ありえないわ!!」
「…じゃあ、くっつくのをやめてくれないか? 非常に歩きにくいんだが…」
ケイトは、顔を赤くしていた。
「く、くっついてなんか…ないわよ。道が狭いから仕方なく…」
…人間て、わかんない生き物だな…
〜〜〜〜
森に入って、どれくらい経つだろう。
かなりの時間、森の中をさまよった気がするが…
「なあ…ここさっきも通ったんじゃないか」
「そ、そんなはずはない。方位磁石はこっちが西だと…」
方位磁石を見たケイトの動きが止まった。
「おい…どうした?」
「…この方位磁針…壊れてたみたい。てへぺろ」
…てへぺろ、じゃねんだよ。
なんなんだよ、コイツ!!
町に居た時は散々カッコいいこと抜かしてたくせに。
なんなんだ、この体たらくは。
こんなんで、どうやって俺の城まで来たんだよ。
「俺にいいアイデアがあるんだが…聞く?」
「…どんなの、取るに足らない内容だったら怒るわよ。」
こ、コイツ!!
なんでそんなに上から物を言えるんだ?
この最悪な状況を作ったのはテメーだろうが!!
「一度通ったところに目印を付けるんだ。たとえば、木に印を付けるとか・・・」
「…いいんじゃない…あんたにしては上出来よ」
だからなんで上から目線で会話してるんだよ。
「まあ、そんなアイデアなら私は30分くらい前に思いついてたけど!!」
マジなんなんだよ!!
一回死んでくれ!!
「そうだ、木に印を付けるなら、これ使いなさい。」
俺は、ケイトから『ナイフ』を手渡された…。
アイデアを実行に移してから1時間が経過した。
徐々に道も絞られてきた。
そろそろこの森からも抜け出せるだろう。
…そう思ったやさきのことだった。
俺たちは、何者かに襲われた。
「なんだ!? おいおいどうなって…んだ…これ…」
急に意識が…これは…睡魔…が…
そこで俺は…気を失った。
俺は森の外に出ていた。
辺りは朝になっている。
俺たちがこの森に入ったのが夕方だった事から推測すると…
俺はけっこうな時間、気を失っていたようだ。
「おーい、ケイト!!」
「…………」
「どこ行ったんだ?」
森の周辺と、森の中をしらみつぶしに捜索したが、
ケイトの姿は…どこにもなかった。