魔王/勇者になる!!
「私と一緒に魔王倒しに行かない?」
女勇者は元魔王の俺にそう持ちかけてきた。
どうやら、俺がその魔王だということには気づいていないようだ。
「なんなんだよ、いきなり
」
「話の流れが掴めんな、いつ、どうして、どのような考えのもとそうなった?」
「私は勇者のなかでも指折りの実力者なのよ」
…自分で言うなよ、そんなこと…。
「そんな私に君は『尻もち』をつかせたんだよ、君もそうとうな実力者のはずだろ?」
「ん…まあな、俺はかれこれ『10年』近く、大魔王に復讐するために修行してきたからな」
もちろん嘘だ。
…実際のところ、復讐を考えたのは、リストラされた時。
つまり『3日前』なのだが…。
「そう、よかった。それならあなたにも魔王と戦う理由はあるのね!!」
ぎゅうっとさらに強く手を握り、女勇者は俺の方を一直線に見つめてきた。
コイツ…やっぱり超美人だな。
それになんだか…とてもいい匂いだ。
何の匂いだろうこれは……花の香りかな?
「さぁどうなの、 一緒に旅にいく?」
まあ、俺にとっても悪い話ではないからな。
ガキとはいえ相手は『大魔王』。
俺1人では心もとないという気持ちもなくはない。
この女勇者と手を組めば…100%倒せる!!
「いいだろう女勇者。一緒に大魔王を倒そうでわないか!!」
「交渉成立ね。えーと・・・君、名前は?」
…魔王です!!
だめだ、そんなこと言ってしまったら命が…
「…ま、マオだ。よろしく女勇者!!」
女勇者は顔をむっとした。
「女勇者じゃない!!…私の名前はケイトよ!」
「ああうん、よろしく『ケイト』!!」
「ええ、よろしく『マオ』!!」
がっしりと、握手をかわした。
「じゃあまず、『西の魔王』を倒しに行くわよ!!」
…え?
西の魔王ってなに?
魔王に西も東もないだろう。
「…あの、西の魔王ってどういう」
「あれ?…もしかして知らないの?」
いや、知らないって…なにを?
「魔王は『西』、『東』、『北』、『南』の4人がいるのよ。私はこの前、『東の魔王』に負けちゃったばかりだけどね…」
「……………」
……なんてこった!!!!
元魔王の俺が、そんな『初期設定』も知らなかったとは…。
よくこれで…魔王やってこれたな…。
「それじゃあ行くわよ!! 目指すは、ここより西へ50000㎞!! 西の魔王の住まう城へ!!」
「……うん…そうだね」
この世界は……魔王の知らないことばかりだった。