不死討伐と西の魔王
おれが魔力を溜め始めて2分ほどが経過した。
ラミカは俺に言われた通り、不死鳥の注意を俺からそらし戦う。
「こーれーでーどうだっ!!」
ラミカは不死鳥の背に回り込み連撃を打ち込むが、やはり目立った外傷などは見当たらない。
あの程度ではダメなんだ、もっと強く、もっと早く、一瞬で全てを切り裂く一撃を打ち込まなければ奴は死なない。
あと少し、もう少しだ。
もう数秒で奴を殺せる一撃を撃てる。
「……………ふう、ここまで魔力を溜め込んで剣を振るうのは生まれて初めてだ」
ついに魔力を最大限まで溜め込み、俺は剣を奴の心臓に向ける。
もう足に力が入らない…全ての魔力が剣と剣に触れる手のひらに集中している。
もう体は限界だ…立っているのが不思議なくらいだ。
「全く…遅いよマオくん。危うく殺されるところだった……」
ラミカも張り詰めた集中の糸が切れ、その場にぺたりと座り込んだ。
「ああ悪い…でもこれで俺たちの勝ちだ」
瞬時に不死鳥は体の向きを変え俺に向かって猛スピードで迫る。
それは不死鳥の第六感が、今までに感じたこともない圧倒的な『死』というものを感じ取ったからにほかないだろう。
「不死の鳥フェニックス…俺は俺を殺すぜ!!」
音速まで迫ろうかというほどのスピードで羽ばたく不死鳥に、俺は瞬きせずに狙いを定め一撃を食らわす」
《斬・不死殺し》
俺の剣から放たれたその一撃は、まるで不死鳥を丸ごと飲み込むようにして襲い、一瞬のうちに不死鳥を消しとばした。
一切の音を立てず、静かに、対象の全てを亡き者にした。
「ハア…ハア…ハハッどんなもんじゃいこの野郎」
もう力が入らない…体から魔装が解けて消えていく。
俺はそのまま地面に倒れこんだ。
「すごいね君は…本当に倒しちゃったよ。想像以上のチカラだねマオくん」
「ハハッなめんなよラミカ…俺が本気出せばこんなもんだよ」
「君なら…私たちの国を魔王の手から救えるかもしれないね」
〜〜〜〜〜〜〜〜
戦いを終えたマオ達の元に大勢の人駆け寄ってくる。
その中にはもちろんケイトとフォレスの姿もあった。
「お疲れマオ…今回は随分手強い相手だったみたいね」
「よおケイト…わざわざ迎えに来るとはお前も心配性だな」
「ち、違うわよ!! 急ぎの仕事ができたからあんたを迎えに来ただけよ」
「そう…詳しくはあいつらに聞きなさい」
ケイトが指差す先にいるのは鎧をまとった屈強な男たち、そしてその中心には先ほどまで俺と一緒に戦っていたラミカの姿があった。
「なるほどね…只者ではないとは思ったけど、ラミカお前は一体何者だよ」
ラミカは不敵に笑い一礼した。
「申し遅れた…私の名前はラミカ=ディル=オディナ。西の国、フィオナ騎士団団長よ…よろしく」
「西の国の騎士長様か…そんなお偉いさんが俺らに何の用だ?」
「マオ…あなたのチカラを見込んで頼みがあるの。私たちフィオナ騎士団とともに西の国を占拠する西の魔王討伐に協力していただきたい!!」
ラミカはそう言って、また深々と頭を下げた。
〜〜〜〜〜〜〜〜
俺たちはダンジョンから出て街に戻り、ラミカたちから今の西の国の現状を聞いた。
その上で俺はラミカたちの申し出に応える。
「ああわかった…いいだろう、この戦いに協力させてもらう。元々俺たちの旅の目的は魔王を倒すことだからな、それで西の国に恩を売れるのなら一石二鳥ってもんだ」
「そうか…ありがとうマオくん。君たちがチカラを貸してくれるなら百人力だ。早速出発の準備をしよう、準備が出来次第我々の用意した馬車に乗っていただきたい」
「わかった…早々に準備して出発しよう」
マオ、ケイト、フォレスの三名はそれぞれ身支度を始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後、西の国………。
瓦礫の山が町全体を埋め尽くし、いたるところから煙が立ち込める。
町中を魔族がはびこり、民衆の姿はない。
そんな国の様子を、城の最上層で眺め不敵に笑う男が一人。
その男こそが、この国をこんな姿に至らしめた張本人である。
「魔王様…脱走したフィオナ騎士団の所在をつかみました」
一匹の魔族が部屋の扉を開け男にそう告げた。
「ほう…それで、奴らは今何をしているのだ?」
「は…なんでも手練の勇者を連れこちらに向かっているとのこと」
「ふん…せっかく逃げ出したものをわざわざ殺されに戻るか…低脳な猿どもだ」
男はそう言って再び不敵に笑い、部屋を後にした。




