ボス攻略①
〜火炎のダンジョン:最上階〜
ひときわ大きな鉄製の扉の前に、俺と女騎士ラミカは立っていた。
扉の奥、幾層にもなる魔力が渦巻きここから放出されている。
間違いない…ここが魔力の中心だ。
それにしても凄い魔力だ。
魔力だけなら俺と同等…いや…それ以上か。
「この扉の奥…いったい何がいると思う?」
そんなことを俺に問いかけてきたラミカ。
「さあな…これほどの魔力はそう拝めねえからな。相当の怪物がいるんだろうぜ」
「あれマオくん、君はこのダンジョンのボスについてどれくらい知っているのかしら? もしかして、何も知らないなんてことはないわよねぇ」
突然そんなことを聞いてくるラミカ。
その質問に俺は何の迷いもなく答える答える。
「…まったく知らないけど、それが?」
…………。
「…そんなのでよくこのダンジョンに入ったわね」
呆れ顔でこちらを見てため息をつくラミカ。
こっちだって…入りたくて入ったわけじゃないのに。
むしろ入りたくなかった。
どちらかというと女勇者に無理矢理入れられたと言ったほうが正しいだろう。
それなのに、なぜ俺が呆れられなければならないのだ。
いろいろと腑に落ちない。
「火の鳥…俗に言う『フェニックス』は有名よね…あなたもそれくらいは知ってるでしょ?」
「ああ…灰のなかから生まれる死と再生を繰り返すとかいう『不死鳥』だろ」
「そう…不死の鳥。このダンジョンのボスは…その不死の鳥よ」
「ッんだと!?」
不死鳥…フェニックスは有名だ。
それは永遠に生きるとされる伝説上の鳥。
その涙は、癒しを齎し、血を口にすると不老不死の命を授かると云われている。
だが、それはあくまで伝説上の生物だ。
そう、伝承されている。
「空想上の生物だと思ってたぜ」
「あなたがそう思うのも当然よ。このダンジョンが見つかったのはわずか十数年前。以後一度も攻略されたことがないのよ。だからこのダンジョンに不死鳥がいることは誰も知らなかった。このダンジョンの難易度はBなのはそれが理由。ボスが不死鳥だと分かれば、難易度『A』は確実ね」
なるほどな…
いろいろと誤報があったってわけか。
あれ…ちょっと待てよ。
今の説明、矛盾してねえか?
「攻略成功者がいないのなら…なんでこのダンジョンのボスが不死鳥だとお前は知ってるんだ?」
「簡単よ、ダンジョンを攻略した者は一人としていない。でも、攻略はできなくても、『生きて帰ってきた者』は一人いるのよ」
ああ…そういうことか。
それなら辻褄が合う
「ちなみに…それは私よ」
「お前かよッ!!」
「私よ…何か問題でも?」
話し方から、それは第三者の話だと思ったんだが…まさか自分の話だったなんて。
「いや問題はない。それでどうだった、噂に名高い不死鳥様は…強かったか?」
「分かりきってることだけど、やっぱり不死というのは厄介よね。大抵のダメージは瞬時に回復してしまうのだから。それと熱攻撃が厄介ね。体表が炎で覆われているから、羽ばたくだけで百度近い熱風が襲いかかるわ」
「ふーん…なるほどね」
ラミカの話を聞いていて思った。
「それって…絶対勝ち目ないよな」
〜鉱山都市ガレル〜
暖かな日のした、ケイトとフォレスは街中を歩いていた。
「おやおや勇者様、散歩中ですかな? わしもです。やはり今日のようなポカポカ陽気の日は散歩に限りますな」
前方から歩いてきた老人がケイトに話しかけた。
「これはこれはタタラ長老、お元気そうで何よりです」
ケイトとこの老人には面識があった。
勇者であるケイトは世界中を旅する。
旅の途中、立ち寄った町、関わった人々とはご縁かあり、そこから交友関係が広がることも多のだ。
「このおじいちゃんとは知り合いなのかケイト?」
フォレスが首を傾げながらそうケイトに問いかける。
「ええそうよ。私は以前もこの町に来たことがあってね、その時このタタラ長老には色々と世話になったのよ」
タタラ長老はフォレスに目を向ける。
「おや勇者様、そちらの子は?」
「ああ、この子はフォレス。私の新しい旅の仲間です」
「ほう!! この小さな子どもがですか?」
長老は驚きの声をあげる。
その反応を見て、フォレスは不満そうに頬を膨らませる。
「むぅ〜子どもあつかいしないで欲しいな。こう見えても僕は500年以上生きてきたんだ。つまりおじいちゃんよりも歳上ってわけ」
どうやら、フォレスは自分が子どもあつかいされたのが気に入らないようだ。
「ほっほっほっ元気な子だねぇ。そうじゃのう君も長生きできるといいのう」
フォレスの話をまったく本気にしないタタラ長老。
「僕の話を無視するなー!!」
地団駄を踏むフォレス。
フォレスの話を本気にしないのも仕方のないことだ。
それはフォレスの外見は人間の子どもとほとんど変わらないからだ。
フォレスが人外の生物だと知らなければそれも仕方のない。
「そうじゃ、二人ともワシの家に招待しよう。色々と世間話もしたいしからのう」
タタラ長老はそう二人に提案した。
「…せっかくのお誘いは嬉しいのですが、すみません。長老にご迷惑はかけられませんので」
「そうか…残念じゃのう。『美味しいお茶請け』があるんじゃがのう」
お茶請けと村長が言った刹那、ケイトの体がピクンと反応した。
「…まあせっかくの誘いなのですからやはりお言葉に甘えさせていただきましょう。誤解のないよう言っておきますけど、これは別にお茶請けが食べたくて行くわけではないのですからね」
「はいはいわかってますよ。では参りましょうか」
「………はい」




