女騎士
〜火炎のダンジョン5階:とある一室〜
宝を探している俺は、あることに気がつく。
………つけられているな。
後ろからわずかだが人の気配がする。
部屋の中を見渡す。
………あそこか。
…あそこの物陰から視線を感じる。
それにしてもいつからだ…いつからつけられていた?
今まで全く気がつかなかったぞ。
とりあえず、隠れてる奴には出て来てもらうとしよう。
「おいそこで隠れてる奴…出てこいよ。一緒におしゃべりしようぜ」
「……………」
返事がない、バレてないとでも思ってんのか?
「…出てこねえなら、力ずくで出てきてもらうけどそれでもいいのか?」
気配のする物陰に向けて拳を構える。
「わかったわかった…今出るよ」
そそくさと物陰から人が出てきた。
出てきたのは女だった。
しかもすごい美人…180センチくらいはあるんじゃねえか?
白髪で髪は結構長め、碧眼の切れ目がとても鋭い。
歳はケイトよりちょっと上くらいか…。
少し大人びて見える。
それに声が妙に艶っぽい。だから大人びて見えるのかもな。
「驚いたわ…よく私に気がついたわね。完全に気配は消していたつもりだったけど」
「俺も今まで全く気がつかなかったけどな…まあ『野生の勘』ってやつだ」
「野生の勘って…」
「まあ厳密に言えば少し違うんだが…まあそんなに変わらないからそういうことでいいだろう」
「…随分と適当な説明ありがとう」
「いえいえどういたしまして」
さてと…
与太話はこれくらいにして、話を本題へと移そうか。
「お前はいったい何者だ? このダンジョンの者か? なんで俺をつけまわす」
「いきなり三つも質問とは欲張りね」
「茶化すなよ…」
「ふふ…まあいいじゃない。あなたなんか可愛いんだもの」
「……はぁ…ッかわいい?」
そんなこと言われるとリアクションに困るな。
「ええ…なんだか母性本能をくすぶられるわ」
それってただ俺が子供っぽいってことなんじゃ………
「私の名前はラミカ。しがない『騎士』をやっている者よ」
「騎士って…じゃあこのダンジョンの者じゃないのか?」
「ええ…私はこのダンジョンの者ではないわ。私は今ワケあって地方のダンジョンを回っているの」
「ワケって…どんな」
「それは言えないわね。そこまで話せる関係じゃないもの…でしょ?」
確かに、知らない奴にそんなこと話せねえか。
少なくとも、俺なら話さない。
「じゃあ次、なんで君をつけていたか。それは私がダンジョンをまわるワケに関係するから。君の実力を見させてもらったの」
俺の実力を…それはいったい。
「君強いのね。いろいろなダンジョンでいろいろな勇者を見てきたけど、その中でもあなたが一番強い。それにその姿…何? とても人間には見えないけど…」
咄嗟に自分の体を見た。
しまった………!!
そういや、今俺は魔王の姿だった。
まずいなどうする。
この女にはここで気絶しててもらうか?
「いや…あの…これはその…」
「ああなるほど、ピンときたわ。それ『魔装』の類のものでしょ」
「………ッ?」
いや全然違うけど。
魔装…なんだそれ。
随分と勝手な解釈だな。
…まあその勝手な解釈のおかげで助かったぜ。
どうやら、俺が魔王だとは気づいていないようだからな。
ここはとりあえず、この女に口裏を合わせるとするか。
「あーうんそうそう魔装」
「ブフ…それにしてもその魔装カッコつけすぎ。狙いすぎでしょそれ」
全くもって余計なお世話だよ!!
そもそも魔装じゃねえし!!
「ああそーだな。じゃあもう俺先行くから…じゃあな女騎士」
なんかもういろいろと面倒なので、この女とはこれ以上関わらないようにしよう。
「ちょっと…待ちなさいよぉ。まさか私を一人にするつもり?」
「………そのつもりだけど?」
「そんなの無責任よ。もし私が猛獣にでも出くわしたらどうするのよぉ〜」
いやいや無責任も何も、お前は自分の意思でダンジョンに入ったんだろうが。
無理やり連れて来られたような事言ってんじゃねぇよ。
それくらい自分でなんとかしろ!!
女騎士はその美しい顔を膨らませこちらを睨む。
そんなことは気にも止めず俺は道を急ぐ。
「むう…優しくないのね」
「お前に優しくする『義理』はねぇ」
「『義理』はなくとも、あなたには私を守る『義務』があるわ」
「お前を守る義務もねぇよ!!」
「もういいわ、私は勝手にあなたをついて回ることにするから」
「ああ…そうかよ」
結局…そうなるのか。
まったく、まためんどくさい奴に会っちまったな。
「そういえば…あんたの名前聞いてなかったよな。あんた名前は?」
女はそう後ろから問いかけてきた。
「……マオだ」
女はニコリと笑う。
「そう、よろしくねマオくん。このダンジョンの攻略も、『その後』も…よろしく」
その後とはどういうことなのか、今の俺はまだ気にも留めなかった。




