魔王/無職になる!!
「きみ、もう魔王やめていいよ。」
そう…
俺は魔王をリストラされた。
3日前、俺は大魔王様に呼び出された。
そこでまさかのリストラ発言!!
「なぜです、なぜリストラなのですか?」
俺は納得いかなかった。
仕事もまじめにやった。
勇者も全部倒した。
大魔王に反発したこともいっさいない。
なのに…なぜ!!
「え~だって、お前が魔王やってるとつまんないだもん」
……………は?
「それは一体…どういうことでしょうか?」
「お前まじめすぎなのだ。お前が勇者全部倒しちゃうから毎日が暇なんだよ。それでリストラしようと思ったのだ!!」
何言ってんだこの『ガキ』は。
調子にのんなこの野郎!!
しかも、お前はまだ12歳だろーが!!
お前が小さいころから、親の代わりに世話してきてやった恩を仇で返すなんて…許さねー!!
こうして、俺(魔王)をリストラしたクソガキ(大魔王)への復讐の道が、
今始まった!!
それから三日後の今日。
俺は人間に化けて、人間界のとある町に来ていた。
最初の数分は、人間ではないことがばれないか心配だったがなんてことはなかった。
リストラされて、立場を失った俺が魔界にとどまることはできず、人間界で暮らしていくしかなかった。
「…人間界に来るのは初めてだな」
俺は、生まれてから一度も魔界から出たことがなかった。
「…なんてにぎやかなんだ、それにいい匂いもする」
食べ物や何やらいろいろな匂いが混ざってる。
でも…なんだかとてもいい匂いだ。
「……きゃっ……!」
あちこち見まわしていると人とぶつかってしまった。
今思うとそれは、運命の出会いだったのかもしれない。
ぶつかったのは女だった。
「いった~い!!」
…なんて美人なのだろう。
きれいな顔立ち、大きな青い瞳、スラリとした体つき。
何をとっても完璧だった。
でも、コイツ…どこかで会ったような…
「あんた、ちゃんと前見て歩きなさいよ!!」
げ、コイツは!!
思い出した、俺はこの女に面識があった。
以前、俺に勝負を挑んで、敗北した女勇者だった。
勝ったと言っても、それは『痛み分け』の勝利。
俺をあそこまで追い詰めたのはこの女が初めてだった。
「…ん~、あんた。どっかで会ったことあるっけ?」
ヤバい!!
「いや、気のせいじゃないかな~。はっはっはっは」
頼む、気づかないでくれ!!
もう俺魔王じゃないから。
武器とか持ってないし、今戦えば死んじゃうって!!
「…そうね。ごめん、気のせいだったわ。」
助かった、どうやらバレずに済んだみたいだ。
「そうだ!!」
女勇者は、俺の手を取り顔を近づけてきた。
自分の鼓動が早まるのが感じられた。
…こんどこそバレた!?
「ねえあんた、わたしと一緒に、『魔王』倒し行かない?」