16-6
テーブルの上にポツンと置いた携帯電話。そして、それに手を伸ばそうとしては引いてしまう私。
……そんな行動を、私は帰宅してからすでに数十分も繰り返していた。
ビリヤード場で三浦先輩と勝負をして勝った私は、約束通り高丘先輩の連絡先を教えてもらっていた。その時に、すでに携帯電話には赤外線通信で高丘先輩の連絡先を登録済み。
携帯電話を手にとって数回ボタンを押せば、すぐにでも高丘先輩の声を聞くことができる。
私は、高丘先輩の連絡先を知ることができて嬉しかった……んだと思う。……だって、高丘先輩に電話したら喜ぶと思うって、三浦先輩が言ってたから。
それが本当なのかどうかはわからない。けど、もし私が電話することで高丘先輩が喜んでくれるんだったら、私は嬉しい。だからこそ、私は三浦先輩との罰ゲーム付きの勝負に乗ったんだから。
……でも、いざ高丘先輩に電話しようと思うと、不安で押しつぶされそうになっちゃう。
当然高丘先輩は、私が電話してくるだなんてこと想像もしてないはずだし、そもそも連絡先を知ってることすら知らない。何の承諾も得ないまま、三浦先輩に連絡先を教えてもらっちゃっただけ。
それなのにいきなり電話したりしたら、高丘先輩はどう思うんだろう。三浦先輩は喜んでくれるって言ってたけど……本当にそうなのかな?
……もしかしたら、喜ぶどころか怒られるかもしれない……よね。……だって、勝手に連絡先教えてもらっちゃったんだもん。
でも、やっぱり高丘先輩に電話したい……とは思う。喜んでもらえる可能性があるのなら、それに賭けてみたい。喜んで……もらいたいもん。
――でもどうして? どうしてそんなに、高丘先輩に喜んでもらいたいと思うの?
ふと、そんな疑問が浮かんでいた。当然のように思っていたけど……どうしてこんなに強く思うんだろう?
向こうの世界で助けてもらったから? 私のことを友達だって言ってくれたから?
――本当に、それだけ?
疑問はすぐさま私の心の中を侵食していくけど、その答えを導き出すことができない。
高丘先輩に対する感謝の気持ちは当然ある。……それだって、立派な理由の一つだろう。
でも、どうしても理由がそれだけだとは思えない。何か、別の大事な理由が存在するような……そんな気がするんだけど……。
「あぁもぅ! わかんないよっ!!」
そんなことを叫んでる自分に、私自身驚いちゃった。
――そして、叫ぶだけでなく目の前の携帯電話をしっかりと手に取っている自分に。
考えたって、わからない。……でも、高丘先輩に喜んでもらいたいと思っていることは確か。
だったらもう、行動を起こすしかない。不安だし、怖いけど……やるしかないよ。
緊張で震える指で、携帯電話を操作する。そして、数秒で高丘先輩の携帯電話と通話状態になった。
「……もしもし?」
聞こえてきた声は、間違いなく高丘先輩のものだった。その声に、私の鼓動は急速に高まっていく。
ど、どうしよう。……何を話せば良いのかな? とにかく……何か話さなきゃ。
心臓の音に気が狂いそうになりながらも、私は何とか高丘先輩への第一声を放つ。
「――高丘先輩ですか? あの……水上です」




