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目の前に並ぶ候補たちに、俺はどれかを選びかねてかれこれ五分近く悩んでしまっていた。――たかだか自動販売機で買う飲み物を選ぶだけなのに、いったい何で俺はこんなにも時間を掛けてしまっているのだろう。優莉に何がいいか聞いておけば良かったな……。
……ってか、別に飲み物選ぶのにこんなに時間掛けてるわけじゃねぇか。そうじゃなくて、こうして一人になって、改めて今の状況について考えることができるようになって……そのせいだ。
優莉のことをどう思っているのかに気付いて、俺は明らかに焦ってる。この気持ちに嘘はない……と思う。でも、あまりにも突発的すぎて、あまりにもその気持ちが俺の中で一気に膨れ上がりすぎて……。
何だかんだ言って、あのタイミングで瞬が来てくれて良かったのかもしれない。……あのまま二人きりのままだったら、多分お互い気まずいまま何もできないでいたような気がする。……瞬にも買ってってやるか。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか五分どころか十分近く時間は経過してしまっていた。いい加減、適当に買うもん選んで戻らないと。
とりあえず適当にコーラとミルクティーとジンジャーエールを買って、小走りにビリヤード台の方へと戻る。すると、そこでは優莉と瞬がビリヤードの試合中だった。瞬のやつ、勝手に優莉とビリヤードやりやがって。……後でビリヤード代請求してやる。
「おまたせ。……ってか瞬、何でお前がビリヤードやってんだよ?」
「何でって、お前が優莉ちゃんをほったらかしにしたまま戻ってこないからだろ。全く、女の子を一人で待たせるだなんて、なんてヤツだ。ねぇ、優莉ちゃん」
「えっ? あの、別にそんなこと……思ってないですよ?」
「あ~、待たせたのは悪かった。……でも、それとお前がビリヤードやってるのと関係があるとは思えないんだけど」
「まぁまぁ、堅いこと言うなって! そんなことより、優莉ちゃん結構上手いな! 今日初めてだって言うからハンデあげたんだけど、ついさっき負けてしまいましたぜ。……こんなことならハンデなんてあげなきゃ良かった」
「あっ、ホントに。すごいじゃん優莉!」
「い、いえ……やっぱりハンデがあったから偶然勝てただけで……。やっぱり三浦先輩の方が断然上手かったですよ」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるね! ……俺、高丘より上手かった?」
「えっ? えっと……その、上手かったかもしれないです。……あっ、その、そうじゃなくて!」
……おそらく、優莉は深く考えることなく思わず口にしてしまったんだろう。何だか悔しいけど、確かに俺よりも瞬の方がこういう遊びに関しては上手い。
でも、事実だとわかってはいても、そんな優莉の言葉に嬉しそうにニヤニヤ笑う瞬の姿を見ると、何だか無性に腹が立つ。
「あ、気にしなくていいよ。優莉ちゃんは事実を言っただけなんだから。なぁ高丘~」
「ったく、好き勝手言いやがって。……今もそうかはわからないだろ?」
「おっ、ならいっちょ勝負してみるか? まぁ、高丘にしてみたら負けて恥かくだけかもしれないけどな~」
「……言ってくれるじゃねぇか。いいよ、勝負してやろうじゃないか!」
悔しい気持ちを払しょくするために、俺は瞬のその提案にのることにした。……でも、何だかんだ言って、別に瞬に対して怒っているわけじゃない。
その証拠に、俺も瞬も笑ってる。ずっとそういう中だし、瞬の言葉に冗談が混ざっていることも、なんとなくわかるから。
……まぁ、とは言っても、やっぱり悔しいものは悔しいけど。
そんな流れで、俺は瞬とナインボールで勝負することになった。こうなったら、瞬にひと泡吹かせてやる!
なんてことを思いながらビリヤード台の上の球を集めていると、瞬は何やら優莉に話し掛けていた。何の話かはわからないけど、その内容は聞き取ることができた。
「――優莉ちゃん、約束通り後で教えてあげるから。家に帰ったあとにでも、掛けてみな」
そんな瞬の言葉に対して、恥ずかし気に頷く優莉。……ヤバっ、何か凄く可愛らしい。




