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聞こえてきた声に、高丘先輩は過剰に反応して髪の毛を振り乱しながらその声の聞こえてきた方を向いていた。その動きに合わせるように私も視線を向けると、そこには垂直に上げた手を額の近くに寄せて陳謝のポーズをとっている男の人の姿が。
「瞬!? ――ってか、何だよ『スマン』って!!」
「いや、邪魔しちまったかなぁと思って」
「何言ってんだよ! ……んなことねぇよ」
「そうか? ……なら良いんだけどよ」
男の人は、高丘先輩と親しげに話している。高丘先輩の友達……なのかな?
どうしたら良いものかわからずに男の人のことをぼんやりと眺めていた私に気付いたのか、高丘先輩は少し焦った様子を見せながらこの男の人のことを紹介してくれる。
「あ、コイツは三浦瞬。……クラスメイトなんだ」
「どうも~! ってか高丘、俺のことより彼女のこと紹介してくれよ。――例の子なんだろ?」
「あ、あぁ。……彼女は優莉。うちの一年生だ」
「は、はじめまして。……水上優莉です」
「優莉ちゃんね。ヨロシクっ!! 俺のことは『瞬くん』って呼んでね!」
「は、はぁ……」
私の言葉に敬礼のポーズで応える三浦先輩。何だか気さくで明るい性格の人みたい。……さすがに先輩のことを『瞬くん』とは呼べそうにないけど。
そんな三浦先輩に、高丘先輩は小さく頭を抱えながら問いかける。
「お前なぁ、そんな風に呼べるわけないだろ。……ったく、で、こんなとこに一人で何しに来たんだよ?」
「ん? あぁ、俺の目的はアレだよ、アレ」
三浦先輩はそう言うと、ある一点を指差す。ビリヤード場の壁際の辺り――そこには、ダーツで遊べるスペースがあった。
私と高丘先輩が揃ってそのダーツのスペースに視線を向ける中、三浦先輩は腕を振る仕草を見せる。
「俺、結構上手いんだぜ?」
「……お前がダーツやるだなんて話、今まで全然聞いたことないけどな」
「そりゃそうだ、言ってねぇし。……で、高丘は優莉ちゃんとデートですか」
サラッと放たれた三浦先輩の言葉。――その言葉に、高丘先輩は思いっきり身体をビクッとさせる。
私はと言えば……あまりのことに言葉も出ない。
「だ、だからそんなんじゃねぇって!」
「おいおい、そんな力いっぱい否定しなくたって良いだろ。……それって、優莉ちゃんに失礼じゃね?」
「えっ? あ、いや、別にそういうつもりじゃ……」
慌てて弁解する高丘先輩の言葉を聞くと、三浦先輩はそっと私に囁きかけてくる。
「だってさ。とりあえず許してやってくれる?」
「あ、あの、許すも何も……失礼なことを言われただなんて思ってないです……よ?」
私の言葉に、三浦先輩はフッと破顔する。
「――だとよ。……良かったな、高丘」
三浦先輩は、そう言って高丘先輩の肩をポンと叩いていた。
目に見えない何かで高丘先輩と三浦先輩が繋がっている――何故だか、そんな風に見えた。




