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……何だかもう、俺の中であまりにも衝撃的すぎて、放つべき言葉を模索することなんてとてもできる状況じゃなかった。変な例えかもしれないけど、まるで実体の無い矢で射抜かれたような、そんな衝撃が俺の心を直撃していた。
――見事に一番の球をポケットに沈めた優莉が見せた行動と……あの表情。
多分……いや、間違いなく、優莉は何の意図もなく素直に一番の球をポケットに沈められたことの喜びを表現しただけなんだと思う。もちろん、優莉が喜んでくれたことはとても嬉しい。
でも、優莉が見せた表情は、俺にとって一瞬意識を混濁させる麻薬のようなものだった。……そういうものだった……らしい。
正直、自分でも良くわからなかった。冷静になって考えてみれば、優莉は喜びのあまり少しはしゃぎ気味に笑顔を見せただけだろう。
でもその笑顔に、こんなにも俺の心が過剰に反応するとは思いもよらなかった。どう例えればいいんだろうか。あの、混じりけのない笑顔を。
……そう、良くわからなかったんだ。でも、確かなのは俺にとって優莉の存在がとても大きなものになっているということ。そうじゃなきゃ、こんなにも衝撃を受けることなんてあるはずがない。
前に環に優莉のことについて聞かれたときに言った通り、確かに優莉といるとホッとする……というのはある。でも、本当にホッとするだけなんだろうか。
向こうの世界で優莉と出会って、同じ隆総の生徒だってことを知った。何かこう、放っておけないような雰囲気を持つ優莉に、助けてあげたいという感情を持った。
……でも、優莉は単に弱い人間ってわけじゃないんだと思った。学校に行くのが怖いって言ってたけど、けして何に対しても臆病なわけではない。
同じ境遇の仲間になった優莉。俺のことを頼ってくれる優莉。俺のことを心配してくれる優莉。俺のことを……助けてくれる優莉。
そのどの優莉のことも、はっきりと頭の中に浮かぶ。瞳を閉じれば、まぶたの裏に優莉の姿を焼き付けることができる。
不安そうな顔の優莉も、泣きそうな顔の優莉も、怒った顔の優莉も、ふてくされた顔の優莉も、笑った顔の優莉も。
……俺はどこかおかしくなってしまったんだろうか。いくらなんでも、まだ知りあってそれほど経っていない人の様々な姿をこんなにも簡単に浮かべることができるだなんて。
やっぱり、普通じゃない気がする。どう考えてもおかしいよな。それこそ、相手がカノジョだったりするならまだ――。
――そのとき、ふと気がついた。全てのつじつまが合う推論が導き出されていた。
いたって自然なことだったんだ。確かに、それが事実であればこれまで感じた感情全てのつじつまが合う。
でも、その推論を認めてしまったら、俺はこれから優莉とどう接すればいいのか分からなくなってしまう。……そんな気がする。
ただ、もしそれが事実であれば、事実を覆すことなどできるはずがない。けして認めたくないというわけではないけど、そもそも選択肢などなく認めざるをえない。
俺――高丘倫人は、水上優莉のことを好きになったんだ。ただ仲間としてではなく、恋愛対象として……好きになってしまったんだ。




