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カフェMay'sと読書少女  作者: 深那 優
14.確かな『現実』と読書少女
81/117

14-1

 今日は土曜日。私の中で土曜日というのは、一週間の中で最も落ち着ける曜日。学校はないし、次の日も日曜だから明日のことを考えて気落ちすることもない。

 外出さえしなければ、学校の知り合いに会うことなく過ごすことのできる、何とも素晴らしい曜日。自分の部屋で、ただ好きなことをしていられる。

 普段の土曜日は、その恩恵を受けながら自分の部屋で本を読んでいることが多い私。……でも、今日は違っていた。


 どこか空気がよどんでいるように感じる、狭い密室の空間。そのくせ絶えず聞こえてくる、騒がしい音。

 密室の空間には、面の部分がガラスでできたテーブルがあり、その周りを三人掛けのソファや一人掛けの椅子が囲んでいる。

 大きいサイズのテレビ画面には絶えず何やら同じ映像がループして流れていて、ふと天井を見上げればミラーボールみたいなものがあったりもする。

 この密室の空間には、見知った顔をした人が三人ほど存在していた。三人掛けソファの真ん中に座る私の左に座っているのは高丘先輩。右に座っているのは大河くん。そして、一人掛けの椅子に座っているのは諸岡先輩だ。

 ……その諸岡先輩が、テーブルの上に置かれた機械を操作しつつ、誰にでもなく話し出す。


「――ねぇ、誰も入れないんだったら、先に私が入れちゃうよ?」


 誰も反論しないことを確認すると、諸岡先輩は更に機械を操作。程なくして、テレビ画面に何かが表示される。……そして、密室の空間に流れ出すメロディ。

 テレビ画面に映し出された映像を確認すると、諸岡先輩はテーブルの上に置かれていた物を持って立ち上がる。諸岡先輩が手に取った物――それはマイク。

 私は今、高丘先輩と諸岡先輩、そして大河くんと一緒にカラオケボックスにいるの――。


 + + + + +


 現実世界で目を覚ました私が今日が土曜日だということにホッとしていると、朝早くから一本の電話が家に掛かってきた。眠い目をこすりながら受話器を取ると、電話をしてきたのは大河くんだった。


「――えっ、大河くん?」


 大河くんがうちに電話してくることなんて今まで一度しかなかったから、つい驚いてそんな言葉を漏らしてしまう。

 私がそういった反応を見せることを見越していたのか、大河くんは「いきなりゴメン」と前置きしてから、何だか話しにくそうに告げてくる。


「実は、姉ちゃんが……」

「えっ、諸岡先輩が……どうかしたの?」


 私がそう呟いていると、受話器越しに何やらやり取りが聞こえてきた。


「ちょっと大河、代わりなさいよ!」

「ちょ、ちょっと待てって姉ちゃん!!」

「――もしもし、水上さん?」

「あっ、諸岡先輩……おはようございます」

「あのさぁ、ちょっと色々と聞きたいことがあるんだけど、今日ヒマ?」

「えっ? あの……はい。特に予定は無いですけど」


 諸岡先輩の言う『聞きたいこと』が何なのか、少し不安になりながらもそう返す。


「ホント! じゃあ、一時くらいに隆山駅の前で待ち合わせしよっ!! 大河と一緒に行くから」

「あ、はい、わかりました。あの……その、聞きたいことっていったい――」

「あぁ、それは会ったときに聞くことにするから。あっ、そうそう、高丘くんも誘っとくからね」

「高丘先輩も……ですか?」

「うん。――その方が、話がスムーズに進みそうな気がするから」


 諸岡先輩のそんな言葉に、私は何か直感的に嫌な予感を感じていた。大河くんと高丘先輩、それに私。このメンバーを揃えた上で、諸岡先輩は何かを聞きだそうとしている。

 ……そうなると、自然とその話題が何なのかは限られてくる……よね。


「じゃあ、そういうことで。また後でね!」



 + + + + +



 そんな流れで高山駅に集合した私達が、諸岡先輩に連れられてやってきたのが今いるカラオケボックスなの。

 ――密室の空間に流れ出したポップなメロディとは正反対に、私は諸岡先輩に何を聞かれるのか不安で不安で仕方が無かった。


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