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「――いやぁ、素晴らしいですね。やはり私の見込みは間違ってはいませんでした」
一通り着替えを終えた後に対面したリギュンさんは、そんな言葉で私を褒め称えてくれていた。正直、自分がそんなに褒めてもらえるような容姿の持ち主だとは到底思えないんだけど、それでもそういう風に言ってもらえることに、私は少し喜びを感じれるようになっていた。
もしかしたらお世辞なのかもしれないけど、例えお世辞だったとしても何だか嬉しかったの。
「さて、それでは早速みんなに挨拶をしに行くことにしましょうか」
……だからなのかはわからないけど、私はそんなリギュンさんの言葉に多少の戸惑いはあったけど頷いていた。どんな反応をされるか、不安ではある。でも、その不安よりもリギュンさんの言葉やステラさんの表情を信じる気持ちの方が上回ってくれている。
最初の目的地は、ステラさんと私の部屋のすぐ隣の部屋。部屋を出て数歩進めばすぐ到着するその部屋の前で、私はリギュンさんに問いかける。
「あの、挨拶って……普通に挨拶すればいいんですよね?」
「えぇ、もちろんそうです。別に『アイドル』という言葉を口にする必要もありません。……そんなことわざわざ言わなくても、きっと昨日挨拶をしに行ったときとは違った反応を見せてくれると思いますよ」
自信満々にそう言うリギュンさんは、部屋のドアをノックすると手の仕草で私が応対するよう促してくる。僅かな間の後に部屋の中から聞こえてくる、「誰だい?」と言う男性の声。
「あの……優莉です。ちょっと、よろしいですか?」
リギュンさんが放つべき言葉を考える時間を与えてくれなかったことに少し焦りながらも、なんとかそんな言葉を投げかける。すると部屋の中の男性は、
「ユーリちゃん? ちょっと待ってて、すぐ開けるよ!」
……何だかガサゴソと慌しい音と共に、そんな言葉を返してくれる。そして、胸に手を当てて軽く深呼吸をしている間に、部屋のドアは開かれた。
「お待たせ――!!」
「すいません突然お邪魔しちゃって。……あ、あの、どうしたんですか?」
男性の様子に、私は心配になって思わずそう呟く。……男性は、何故か驚きながら私のことを呆然と眺めていたの。
「あの……」
「いけませんよ。いくら見とれてしまっているからって、黙ったままでは失礼ですよ?」
「――リ、リギュン様!? し、失礼しました!!」
「その言葉は、私ではなくユーリさんに言ってあげてください」
リギュンさんと会話することで落ち着いたのか、男性は私に謝ってくれたのに続いて質問してくる。
「えっと、ところで何の用事? リギュン様やステラまで一緒で、それに……随分と綺麗な格好で」
「あ、その、リギュンさんから『砦の皆さんに改めてご挨拶を』と言われたので……」
「ユーリさんには、相応の姿で挨拶をしてもらいたかったのでね。私からユーリさんにお願いしたのですよ」
リギュンさんはそう言うと、そっと男性に近づいて何やら耳打ちする。
「実は、ユーリさんに我々のアイドル的存在になってもらおうかと思っているのですが……あなたはどう思われますか?」
リギュンさんは私には聞こえてないと思ってるのかな? しっかり聞こえちゃってるよ……。それに……。
「――それは本当ですか!? リギュン様、もちろん私は大賛成ですよ!!」
それに、男性の声はよりハッキリと私の耳に届いていた。耳打ちの意味なんて全然無いよ……。




