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――いったい何でこんなことになっちゃったんだろう。
私は部屋のベッドの上に並べられた控えめだけど慎ましやかな装飾の成された薄い水色のドレスを見て、改めてそんなことを思っていた。
応接室での話が一段落つくと、私はリギュンさんにステラさんの元へと連れられていた。ステラさんはリギュンさんの姿を見ると「お勤めご苦労様です」と敬意を表しながらも、私をアイドルにする計画を知ると満面の笑みを浮かべて「それは素晴らしいアイデアです!」と、リギュンさんの手を半ば強制的に握って上下にブンブンと振って喜びだす。さすがのリギュンさんも、そんなステラさんの様子に少し呆れているようだった。
そして、リギュンさんから衣服の調達を命ぜられると、ステラさんはすぐさまどこかへと走っていき、大して待つこともなくこのドレスを調達してきたんだ。
「さて、リギュン様はちょっと外に出ていてくださいね。――ユーリちゃん、早速着替えてみてよ!」
リギュンさんが部屋から出て行ったのを確認すると、ステラさんは目を輝かせながら心底楽しそうに告げてくる。……そんな姿を見てしまっては、今更『やっぱり私には無理です』とは言えない……よね。
ステラさんに感づかれないように小さくため息を吐きつつ、私は無駄な抵抗をするのを諦めてドレスを手に取った。そして、手伝ってもらいながら何とかドレスを着終えると、ステラさんは手を叩いて賛美の声を上げる。
「凄く似合ってるよユーリちゃん! さすが、リギュン様が砦のアイドルにしたがるだけのことはあるわ!!」
「あ、ありがとうございます……」
何だか、面と向かってそんなことを言われるとちょっと恥ずかしいけど……何だかんだいって、やっぱり褒められて悪い気はしない。どうせもうこの流れからは逃れられないんだろうから、素直に喜んでおいた方が良い気がする。
でも、褒めてくれていたステラさんだったけど、次第に表情が困っているかのようなものに変わっていく。どうしたんだろうと思っていると、ステラさんはドレス姿の私をまじまじと眺めながらポツリと呟く。
「う~ん……でも、何か足りないような気がするんだよなぁ。……あっ、そうだ!」
そして、何か思い出したのか、突然クローゼットの中を漁り始める。……暫くして、目的の物を発見したらしいステラさんが、手に持ったものを私に見せてくれた。
――それは、吸い込まれるような蒼い宝石が煌くネックレスだった。控えめにあしらわれた金の止め具が、より蒼い宝石の存在感を引き立たせているように見える。
「うわぁ……綺麗な宝石ですね……」
「そうでしょ! これ、私のお婆ちゃんからもらったものなの。これを着ければ、もうバッチリよ!!」
「えっ? でも……大切なものなんじゃないんですか?」
「う~ん……まぁ大切なものだけど、だからこそずっとクローゼットの中にしまいっぱなしだなんてもったいないじゃない。私は中々着ける機会がないから、ユーリちゃんに着けてもらいたいなって思うんだけど」
ステラさんは何やら物憂げにそう言って、ネックレスを差し出してくる。その様子に、私は素直に受け取って早速着けてみることにした。
果たして、ちゃんと似合っているのだろうか。……鏡が無いから確認しようがない。
……でも、ステラさんの満足気な表情を見る限り、きっと似合って無くはないんだと思う。




