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「た、試すって……いったい何を……」
リギュンさんが提案してきた『アイドルの資質があるかどうか試す』ということ。それがいったいどういうものなのかわからず、素直な気持ちが口から自然と漏れていた。
本当に、リギュンさんはいったい何をするつもりなんだろう。『試す』ってことは、誰かに審査でもしてもらおうとしてるのかな?
……やっぱり、『アイドル』と『試す』っていったら、何とかコンテストみたいなのを想像してしまう。よくある『第何回ナントカ美少女コンテスト』みたいな、大勢の人たちの前で特技なんかを披露することで自分をアピールして、最終的に選ばれた人がグランプリで芸能界デビューといったものを。
テレビで見る限り、そういうコンテストには当然凄く綺麗な人ばかりが出てて、見た目だけじゃなくてみんな凄い特技をもってたりして、最終選考まで残った人が、おそろいの水着姿でドラムロールの中祈るような思いで審査結果を待っていて……。
ま、まさかそれと同じようなことをしようだなんて、思ってないよね? まさか……ね。こっちの世界にそんなものがあるとは思えないし……。で、でも、もし同じようなことをする気だったら……。
現実世界のアイドル像を想像していると、勝手に頭の中に水着を着た自分が大勢の人たちの前に立っている姿が浮かんできて、物凄く恥ずかしい気分になる。そんな私の心境を知ってか知らずか、リギュンさんは穏やかな笑みを見せながら軽快な口調で話しかけてくる。
「なに、簡単なこと。――砦にいる皆さんに、挨拶をしに行くのです」
「挨拶……ですか? それでしたら、昨日もうしてきましたよ? その、全員かどうかはわかりませんが……」
「いえいえ、そうではありませんよ。『行き倒れの娘』のユーリさんとして挨拶するのではなく、『アイドル』のユーリさんとして挨拶をしに行くのです」
「あの……意味がよく、わからないんですけど……」
いまいちその『挨拶』の意図がわからなくてそんなことを呟くけど、リギュンさんは私の言葉を表情だけで受け流すと、間髪入れずに話し続ける。
「アイドルたるもの、やはり相応な格好をしていなければなりません。砦にどこまでまともな衣服があるかはわかりませんが、それに関してはステラさんにでもお願いするとしましょう」
「あ、あの……」
「それに、やはりアイドルは笑顔が一番です。笑ってご挨拶出来るよう、心がけましょうね」
「リ、リギュンさん?」
まくし立てるように続く言葉に、私は少しも気持ちを整理することが出来ない。とりあえずそんな疑問系の言葉を投げかけるけど、リギュンさんの表情は少しも変わらない。……でも、私の声はしっかりとリギュンさんに届いていたみたいだ。
「大丈夫ですよ。間違いなく、ユーリさんにはアイドルの資質があるのですから。……そうだ。ユーリさんに一つ良いことを教えてあげましょう」
「良いこと……ですか?」
「えぇ。伝令の者から聞いたのですが、今、砦の中ではある一つの話題で持ちきりなんだそうです。……何だか、わかりますか?」
「い、いえ……わからない、です」
本当にわからなかったから素直をそう答えると、リギュンさんはクスッと笑ってその答えを教えてくれる。
「それはですね、『砦に凄く可愛い子がいる』っていう話題なんです。何でも、純粋そうでたまに見せる恥らうような仕草がたまらないのだそうですよ。――ユーリさん、あなたのことです」
「……へっ?」
――思わず声が裏返ってしまうほど、リギュンさんの話は私にとって全くもって信じがたいものだった。




