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「ア、アア、アイドルだなんて、そんな……」
リギュンさんの突拍子も無い提案に、私がようやく放てたのはそんな動揺の色を色濃く滲ませた文句だった。リギュンさんはいったい何を言い出すのだろう。私がアイドルになるだなんて、そんなの……無理に決まってるよ。
それに、仮に私がアイドルになったとして、いったいそれがどう砦の人たちのためになるというのだろうか。
私がそんなことを動揺しつつも思っていると、リギュンさんはどこか見透かしたように私を見据えながら話す。
「――私はこれまで、多くの部隊で参謀役を務めてきました。だからこそ、わかるのです。……いくら素晴らしい能力を持っている者たちの集まりであっても、団結力や士気の高まりがなければけしてその能力が活かされることはないということを。ユーリさん……あなたには、その団結力や士気を高める役割を担っていただきたいのです」
「団結力と、士気……。でも、私にそんな、アイドルだなんて……」
何だか恥ずかしい気持ちになりながらも視線を逸らしつつそう呟くと、リギュンさんは私の姿をまじまじと眺めて微笑んだ。そして、そっと私の手に触れて強制的に視線を自分に向けさせる。
「大丈夫です。ユーリさんなら、プレストの砦のアイドルになれますよ。あなたはとてもお美しい。……そして、砦の者たちのことを想っている。間違いなく、アイドルの資質をお持ちですよ」
私が……アイドルの資質を持っている? リギュンさんには悪いけど、とても信じられない。アイドルって言ったら、タイプはいろいろあるかもしれないけど華やかな舞台に立ち、多くの人たちから親しまれるような存在であるはず。私がそんな存在になれるだなんて……。
……そうだ。多分、リギュンさんは私に会ってまだ間もないから、私のことをよくわかっていないんだ。うん、きっと……そうだよ。
「――ユーリさん、どうしました?」
思案が自然と表情を沈ませていたのか、リギュンさんは心配そうに私に声を掛けてくる。その様子に、私は慌てて言葉を返した。
「あ、すいません、大丈夫です。……ただ、やっぱりどう考えても私にアイドルだなんて、無理ですよ。……リギュンさんは、まだ私のことをよくご存知ないんです。ですから……多分、リギュンさんのご期待に副うことは出来ないと……思います」
「そうでしょうか? ……やはり私は、ユーリさんにはアイドルの資質があると思いますが。これでも、結構私の勘は当たるのですよ」
「あの、ですから私には――」
どうしてか納得してくれないリギュンさんに、私は尚も否定の言葉を投げかけようとした。……けど、リギュンさんは私の言葉の完結を待たずして新たな提案を投げかけてきた。
「――そこまでおっしゃるのでしたら、あなたがアイドルの資質をお持ちかどうか、試してみませんか?」




