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「――その、そういうわけで、私は周りに迷惑が掛からないように、自分のことくらい自分で守れるようにしたかったんです。だから、戦い方を教えて欲しいって頼んだんですけど、反対されてしまって」
昨日、高丘先輩と二人きりになってこの世界のことをいろいろと教えてもらった応接室。そこで、私はリギュンさんに悩みを打ち明けていた。
私が説明をしている間、リギュンさんはずっと黙って話を聞いてくれていた。その姿に、リギュンさんは本当に親身になって私の悩みを共有しようとしてくれているんだと実感する。
リギュンさんは私の話を聞き終えると、優しさを湛えた双眸を見せつつ語り掛けてくる。
「……タイガさんのことも、伝令から聞いています。ユーリさんにとっては残念なことかもしれませんが、やはりアレン殿やステラさんの決断は間違っていないでしょう」
「そう、なんですよね……」
「ですが、アレン殿がタイガさんにチャンスを与えたというのは、正直驚きました。本来なら、間違いなく即刻砦から追放されてもおかしくない状況ですからね」
「えっ?」
私が驚きを隠すことなくそう呟くと、リギュンさんは小さく笑いながら話を続ける。
「よほど、リントさんやユーリさんのことを信頼なさっているんでしょうね。きっと、アレン殿もリントさんやユーリさんの友人だというタイガさんのことを信じたいのでしょう」
「そんな風に……思ってくださってたんですかね」
「えぇ、間違いないですよ。あれでも、アレン殿は『白銀の盾』の副団長ですからね。ザイウェンのことを最も重要視すべき方です。そんな方がザイウェンの民を裏切りかねない決断を下したんですから」
「アレン様……」
私がアレン様の決断に感謝していると、いつの間にかリギュンさんは表情を真剣なものに戻していた。そして私に、ある意味当然のことであろう宣告をしてくる。
「とりあえず、あとはタイガさんに頑張ってもらうしかないでしょうね。……それでユーリさん、あなたのことですが、やはりあなたは戦地に赴くべき方ではないと思います。……失礼ですが、あなたはとても戦いに適した体つきをしているとは思えない」
「あっ、はい……」
「ステラさんやリントさんの言うとおり、戦い方を覚えるなどということは避けたほうが良いと、私は思うのですが」
……予想はしていた。でも、やっぱり実際に宣告されると改めて自分の不甲斐なさに悲しくなってくる。
結局、私はまともにみんなの役に立つことなんて出来ないんだ……。アレン様が言っていたように、せいぜい家事的な作業をこなすことしか、出来ないんだ。
そう思い、顔をうつむかせてため息を吐く私。……でも、リギュンさんはそんな私の姿まじまじと眺めつつ、一つの提案を持ちかけてきた。その提案に、私は思わず呆けてしまう。
「ユーリさん、もし『砦の皆さんのためになることをしたい』と思って戦い方を教えてもらいたいと思っていらっしゃったのでしたら、何もその手段は戦うことだけではないですよ。……これはあくまで私の個人的な提案ですが、ユーリさん……もし良かったら、プレストの砦の――魔物討伐隊のシンボルになる気はありませんか?」
「……シンボル?」
「えぇ、ようは魔物討伐隊の精神的支柱――アイドル的な存在になってみませんかということです」
そんなことをいたって真面目に告げてくるリギュンさんに、私はしばらく返すべき言葉を失っていた。




