12-5
「大事な友達が困っているときに何も出来ないのは……もう嫌なんです。今の私は、何も出来ないどころか逆に迷惑を掛けちゃってる……」
「迷惑を掛けてるだなんて、そんなことないよ……。俺は優莉と出会えて本当に良かったと思ってるし、それこそ迷惑だなんて思ったことは無い。……それは、多分大河も同じだと思う」
自分の想いを身体も使って表現している優莉に、俺は何とか気持ちをなだめるべく言葉を投げかける。……けして作り上げた言葉なんかじゃなく、本心からの言葉。
……でも、そんな俺の言葉を聞いた優莉は、顔をうつむかせて呟く。
「また……守られてる」
「えっ?」
「これじゃダメなんです! 倫人さんの優しさに甘えてるだけじゃ!! ダメなんですよ……」
「優莉……。そんな風に思う必要はないって」
俺は、優莉の気持ちをなだめるすべを見出せずにいた。優莉を納得させる文句が、全く浮かんでこない。
だから、結局そんな曖昧な言葉を掛けることしか出来なかった。
――そして、その曖昧な言葉は俺にとって悪い結果を生むことに。
「――ダメ……ダメなんですこのままじゃ!!」
言ってすぐ、優莉は背後を振り向いて走り出していた。突然のことに、俺はその後を追う一歩を踏み出すことが出来ない。
「優莉っ!!」
それでもそんな言葉で自らを奮い立たせて、俺は優莉のあとを追――おうとしたが、
「リント君!」
……ステラさんが、俺の身体を手で制していた。その真剣な表情に、行き先を遮断された身体は硬直する。
「少し一人にさせてあげましょ。……大丈夫、砦の入り口には門番もいるから、一人で外に出るようなことはないわ」
「そう……ですね」
ステラさんの言葉に、俺は弱々しくそう答えることしか出来なかった。
優莉……お願いだから、自分から危険に身を投じるようなことだけは止めてくれ……。
* * * * *
もう、何だか頭の中がグシャグシャだった。これ以上、高丘先輩や大河くんに迷惑を掛けないために、自ら決心してステラさんに戦い方を教えてほしいと頼んだ私。
……でも、そのステラさんには断られて、そして高丘先輩にまで否定されて。でも……このままじゃ、やっぱりダメ。
守られて、助けられて、甘えて……。そんなんじゃ、私はいずれ、折角出来た友達を失うことになってしまうかもしれない。
そういった想いが浮かんでくると、私は『迷惑を掛けないため』と言っておきながら、結局は自分のために行動しているだけなんだなぁと改めて実感してしまう。
自然と浮かんできてしまう思考を振り払うように、私は階段を駆け下りる。そして、砦の入り口の方へと向かっていく。
別に、その先に何か目的があるというわけではない。ただこうして動いていないと、また負の考えが頭を満たしてしまうような気がして仕方が無かった。
高丘先輩とステラさんが追ってこないかどうか、走りながら背後を振り向く。そして、そこに二人の姿が存在しないことを確認して視線を戻そうとした――そのとき、
――ドンッ!!
思いっきり何かにぶつかってしまった。前方不注意の、正面衝突。身体が跳ね返されて、私は床に倒れこむ。
「イタタタタ……」
思わず声を出しながら身体をさすっていると、
「――大丈夫ですか?」
――見たことの無い男性が、倒れこんでいる私の前に屈んで優しく話しかけてきた。




