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かなり頑張っている様子の大河に安心した俺は、ディックさんに軽く挨拶を済まして砦の中に戻ることにした。今日は見回りの予定もないし、大河を見習って俺も剣の腕でも磨くことにしようか。
とりあえず自室に戻って今日の方針を決めようと砦の中を進んでいると、その途中、部屋に送り届けたはずの優莉がステラさんと何やら話しこんでいるところに出くわす。
真剣な眼差しで何やら伝えている様子の優莉に、明らかに困った様子のステラさん。それなりに距離があるから何を話しているのかは聞き取れないけど……いったい何の話をしてるんだろうか。
疑問に思いながらも近づいていくと、次第にその会話の内容が聞き取れるようになってくる。……優莉の懇願するような言葉が、耳に飛び込んできた。
「――お願いします! 私に、戦い方を教えてください!!」
……一瞬、聞き間違えたのかと思った。あの、初めて会ったときに魔物相手にあんなにも怯えていた優莉が、まさかそんな言葉を放つだなんて。
でも、返答に困っているステラさんに対して尚も告げる言葉は、やっぱり戦い方の教授を願うもの。どうやら、聞き間違いではないらしい。
いったいどんな心境の変化が起きたのかはわからないけど……正直、優莉には無理だろう。どう見ても華奢な優莉が、どんなに軽いものでもそれなりの重みを持つ武器を扱うことなんて出来るとは到底思えない。
それに、それ以前に優莉には戦いの場に出てもらいたくない。わざわざ自ら危険に身をさらすようなことを、してほしくはない。
俺が更に近づいていくと優莉とステラさんは俺の姿に気付き、揃って視線を向けてくる。二人の表情に、それぞれ変化が窺えるようになる。ステラさんはどこかホッとしているような表情。……そして優莉は、より必死さを感じる表情に。
俺はそんな優莉に、自分の気持ちを伝えるべく声を掛けた。……優莉を、危険な目にあわせるわけにはいかない。
「『戦い方を教えて』って聞こえたけど……どうしたんだ、急に」
「た――倫人さん……。私、今日自分の無力さを改めて痛感したんです。だから……せめて自分で自分の身を守ることくらい、出来るようになりたいんです!」
「優莉……。そういう気持ちは大事かもしれないけど、何も戦うことで自分の身を守らなくたって良いだろ? それに、きっと優莉は自分で思ってるほど無力なんかじゃないよ」
「ほら、リント君もこう言ってることだし。ユーリちゃんにはユーリちゃんに出来ることをやってもらいたいって、私は思うんだけどな」
俺の諭すような言葉に、便乗するように追言するステラさん。……でも、俺とステラさんの言葉を聞いた優莉は、思わず絶句してしまいそうなほどの悲哀に満ちた表情を見せていた。そして、急激に震えだした声で呟く。
「――倫人さんも……わかってくれないんですね。倫人さんなら……わかってくれると思ったのに!!」




