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全く、ホントわけがわかんないまま、流されるままに僕は建物――砦の外に出てディックって人から稽古を受けることになってしまった。まぁ、僕がこの世界でまともに生活出来るようになるためには仕方の無いことなんだろうけど。
でもこのディックって人、優莉とデートする口実を作るために僕を利用するだなんて、正直メチャクチャ頭にくる。いくら『デートの代わりに砦の周りを案内する』ったって、優莉と二人っきりで、弁当まで作らせるつもりで、それって紛れも無くデートそのものじゃないか。
……こうなったら、とっとと結果をだしてこれから始まる稽古ってやつを終わらせるしかないな。
そんなことを思いながら、砦の壁に寄りかかってディックの姿を見やる。倫人は優莉を部屋まで送りにいったから、今ここには僕とディックしかいない。
ディックは武器庫みたいなところから持ってきた色んな武器を地面に並べながら、僕の姿をまじまじと見ていた。そして、何やら少し考えた後に、僕に向けて二本の短剣みたいなものを差し出してくる。
「タイガ、お前はそれほど筋力がないように見える。長剣や槍を扱うには、ちょっと筋力不足だろう」
「……悪かったね。確かに僕は筋力には自信ないよ」
ふて腐れて言いながらも、ディックのその洞察眼にちょっと関心する。……倫人が言ってたとおり、確かにディックはそれなりの腕の持ち主みたいだ。
「別に責めちゃいないさ。何も、筋力が全てを決めるわけじゃない。筋力がなければ、その分別の力で補えば良い。タイガの場合、下手に重い武器を扱うよりは軽めの武器を扱ってスピードで勝負した方が良いだろう。それでいくなら、間違いなくコイツらがオススメだ」
ディックが差し出してきた二本の短剣は、それぞれ種類が違うみたいだった。一本はいわゆるナイフといった感じの形状をしていて、もう一本はナイフみたいなのよりも若干細長くて、柄の部分に円形の装飾が成されている。
まじまじとその短剣を見ていた僕に、ディックはそれぞれの短剣の解説を始める。
「こいつはダガー。まぁ、刺したり投げたりするのに適した武器だな。刃物としては確実に軽いし、威力はあまりないが小回りが利く。そしてこっちはマインゴーシュ。これは武器っていうよりは利き手じゃない方に持って防具として使うのがメインだな。もちろん武器として使うこともできるが……まぁ盾の代わりみたいなもんだ。柄の部分に円形のガードが着いてるだろ? これが盾の役割を果たすんだよ」
とりあえず、差し出された二本の短剣を持ってみる。確かに多少は重みを感じるけど、扱えないほどではなさそうだ。……それに、何故だかわからないけど手に馴染む気がする。
「ふふ、結構様になってるじゃないか。……それじゃあ、タイガの得物はそいつらで決まりだな!」
握りなおして、軽くダガーを振ってみる。――これが僕の武器。自分のものになったってだけで、何だか俄然やる気が出てきたような感じがした。




