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カフェMay'sと読書少女  作者: 深那 優
11.始まる試練と読書少女
68/117

11-5

「――俺なら剣でも槍でも教えられるぜ?」


 自信満々にそう告げてくるディックさん。どう答えていいものかわからずに高丘先輩の方を向くと、高丘先輩はディックさんの方を向いたまま小さく頷いていた。


「確かに……ディックさんほどの腕の持ち主が教えてくれるなら心強いですけど……。でも、どうして……」

「なに、単に放って置けないと思っただけさ。……タイガって言ったか、君のことを必死に守ろうとするリントとユーリの姿を見てたらな」

「でも、下手に俺たちに加担したりしたら、ディックさんの立場だって……」

「そうかもな。でも、別にアレン様は俺に『リントたちに協力するな』とは言ってないだろ? 結果がどうなるかはわからんけど、稽古を手伝うくらいは問題ないだろ」

「ですが……」


 ディックさんの言葉を聞いても、まだどこか納得できていない様子の高丘先輩。その様子に、ディックさんはニッと笑って私に告げてくる。


「まぁ、確かにリントの言うとおり、俺の立場も少なからず関わってくるかもしれないな。――それじゃあここは、お互いに利益があるようにしようじゃないか。俺はタイガの稽古を手伝う。その代わり、俺はユーリちゃんとの一日デート権をもらえる……ってのはどう?」

「えっ……。デ、デートって!? わ、私なんかと……ですか?」


 ディックさんの突拍子も無い言葉に、私は一瞬何を言われたのか良くわからなかった。でも、私の聴覚は正常みたいで、すぐにその内容は脳内にインプットされる。

 ……そして私は、急に紅潮しだす顔を逸らしながら何とかそんな言葉を返す。


「あれ? 俺じゃ役不足かい?」

「い、いえ、そういうわけじゃないんです、けど……」

「おい! 黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって! 別に僕はあんたに頼むつもりは――」


 私とディックさんのやりとりを聞いて何故だか怒っている様子の大河くんが、私とディックさんの間に割り込むように近づきながら叫んでいたけど、それを高丘先輩が静かに手で制していた。その真剣な表情に、大河くんは放つ言葉を失ってその場でむくれっ面を見せたまま立ち止まる。

 高丘先輩は、大河くんの気持ちを代弁するかのように、大河くんをチラッと一瞥してからディックさんに話す。


「ディックさん。手伝っていただけるのは本当にありがたいです。……ですが、その『ディックさんの利益』は別のものにはならないですか? その、やっぱり優莉だっていきなりそんなこと言われても困っちゃうと思いますし」

「えぇ~!? ユーリちゃん、どうしてもダメなのかい?」

「……ディックさん、もしかして大河のこと放って置けなかったんじゃなくて、優莉とデートするのが目的なんじゃ……ないですよね?」

「な、何を言ってるのかなぁリントは。そんなわけないじゃないかぁ」


 おどけて返すディックさんに、大きなため息を吐いてうな垂れる高丘先輩。

 私はその様子を、笑って見過ごすことは出来なかった。高丘先輩が言うからには、ディックさんの腕前は本当に凄いんだと思う。そんな人に教えてもらえるなら、大河くんだって短い期間でも上達して、アレン様を納得させることが出来るかもしれない。

 でも、そんな良い話が私の決断一つで無かったことになってしまうかもしれない。……そんなのは、嫌だ。



「あ、あの、デート……っていうのはちょっとあれですけど、今度砦の周りを案内してもらうっていうのじゃ……ダメですか?」



「おっ! それって、俺とユーリちゃんだけで? ステラとか連れてったりしないよな?」

「えっ、あの……は、はい」

「案内するの結構時間掛かると思うけど、お昼の弁当とか用意してくれちゃったりもする?」

「あ、あの……お口に合うものが作れるかはわからないですけど、それでも良ければ……」


 何だか圧倒されながらも答えていると、ディックさんは両拳を突き上げてまさに歓喜の表情を見せた。そして、その表情のまま大河くんに視線を移して高らかに宣言する。


「よっしゃ! そうと決まればすぐにでも稽古始めるぞっ!! なに、俺に任せておけばすぐに上達するの間違いなしさっ!!」


 ――そんなディックさんの変わりように、高丘先輩と大河くんは何か諦めたかのように天を仰いでいた。


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