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「……つまり、あの姉ちゃんがもらってきた文庫本を読もうとしたことが原因で、僕はこの『アステル』って世界に来ちゃったってこと?」
「あぁ。そして、それは俺や優莉も一緒だ。さっき説明したとおり、この世界で寝れば現実世界に戻ることが出来るけど、それはあくまで一時的なこと。……本当の意味で現実世界に戻るには、あの文庫本に綴られるこの世界の物語を完結させる必要があるんだと思う」
会議室を出てから、私と高丘先輩、そして大河くんは、揃って高丘先輩の部屋に集まっていた。高丘先輩の部屋も私の部屋と同じで、もう一人寝泊りしている人がいるみたいだけど、その人は今外出していてこの場にはいない。だからこうして、周りを気にすることなく現実世界の話をすることが出来ていた。
大河くんはアレン様やステラさんからようやく解放されて少し疲れている様子だったけど、そんな疲れよりも今自分が置かれた状態の方が気になるみたいで、高丘先輩の部屋に入ってすぐにこの世界のことを聞いていた。そして、高丘先輩による答えを聞くと、何だかやけに落ち着いた表情を見せるようになっていく。
こんな現実離れした状況に巻き込まれているというのに、大河くんは凄いと思う。それこそ、私なんかわけがわからなくて高丘先輩やアレン様から逃げ出しちゃったっていうのに。
「とりあえず、一応は理解した……と思う。正直まともには信じられないようなことばかりだけど、信じないわけにはいかない状態だもんな。ただ、とりあえず物語を完結させるにしても、まずはそれ以前に何とか僕がここにいられるようにしないと。倫人の言った話だと、外にはゲームに出てくるモンスターみたいなのがうろうろしてるんだろ?」
「そうだ。だからこそ、何とかしてアレン様に大河のことを認めてもらえるようにしないと。そうしないと、下手したら大河だけじゃなくて、俺や優莉もここにいられなくなるかもしれないからな」
「……倫人はともかく、優莉に迷惑かけるのは嫌だし頑張るしかないけど」
「お前なぁ――」
「――でも、結局のところ、何をしてそのアレン様に僕のことを認めてもらえばいいんだ? どんな形でも良いって言ってたけど……何が手っ取り早い?」
「そうだなぁ……やっぱり、一番手っ取り早いのは何か武器を扱えるようになって、その実力を見せ付けるってことだろうけど。俺は一応、ここで剣が扱えるようになったけど、それでも人に教えられるほどのものじゃない。仮にそっちの方向で行くとしたら、誰か武器の扱いを教えてくれるような人を見つけないと――」
言葉はちょっと乱暴だけど表情は真剣な大河くんに向けて、高丘先輩が手を顎に添えて考えながら言葉を発していると、
「――何ならその役、俺が買って出てやろうか?」
突然、部屋のドアの向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。思わず、皆揃ってドアの方を向く。
すると、ゆっくりとドアが開き、そこにやはり見知った顔が姿を現す。
「やぁユーリちゃん。何だか困ってるみたいだけど、良かったらこの俺に助けを求めてみないかい?」
――高丘先輩や大河くんの姿は一瞥するだけで、すぐさま私に視線を向けてそんな言葉を放つディックさんの姿だった。




