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「――悪いが、いくらリントの頼みでもそう簡単に無罪放免というわけにはいかんな」
緊迫した空気が辺りを包んでいた。応接室よりもさらに一回り大きい会議室。そこに、ステラさんと大河くん、そしてアレン様はいた。会議室のドアの前には、ディックさんの姿もある。
大河くんが連れられた場所を高丘先輩が砦の人たちから聞いて、この会議室に着いたのは今から少し前のこと。今までずっと、高丘先輩がアレン様に大河くんのことを必死に説明していた。
私と一緒に登場した高丘先輩の姿を見て、大河くんは凄く驚いているみたいだった。多分、大河くんはもともと高丘先輩のことを知ってたんだと思う。だから、この世界に高丘先輩がいるって事実に驚いていたんだ。
でも、大河くんが私や高丘先輩に話しかけてくることはなかった。……きっと、大河くんなりに判断して、下手に話したりしないほうが良いと思ったんだろう。
……でも、高丘先輩の必死の説明も実らず、アレン様が掛けてきた言葉はそんな内容だったんだ。
「タイガといったか。……彼が、リントやユーリの知り合いだということはわかった。そのことを信じないつもりはない。その必死さを見れば、それが真実だということは疑いようが無いだろう。だが、事が事だからな。例え我々に危害を加える気が無かったとしても、示しはつけなければなるまい」
「どうしようもないのですか!? 私に出来ることでしたら何でもします! ですから、無罪放免とはいかなくとも、どうかせめて大河も砦で生活させてあげてください! 一人で砦の外に出されたりしたら、いつ魔物に襲われてしまうか……」
本当に、高丘先輩は必死だった。幾度となくアレン様に頭を下げ続け、どうにかして大河くんの未来を切り開こうとしている。
「――うぬぼれるなよ、リント」
でも、アレン様が放った言葉は、そんな高丘先輩の行動を全て無にしてしまうようなものだった。その言葉に、アレン様を軽く睨むのが精一杯な高丘先輩。
「確かにお前は我々の仲間だが、お前やユーリの感情だけでものごとを判断するわけにはいかない。他の仲間たち、それにマーブック地方の民たちからの信頼を裏切るような行為はできない。……わかるだろう?」
「……………」
高丘先輩は、そんなアレン様の言葉をしっかりと聞き取りながらも、アレン様を睨むのを止めなかった。……高丘先輩の、無言の抵抗。
それは、アレン様が逆に高丘先輩のことを睨み返しても、変わることはない。
どちらが折れるわけでもなく、しばらく続く無言の睨み合い。……だけど、その沈黙を破ったのはアレン様だった。
「……そんなに、彼のことが大事か?」
「はい。――誰だって、かけがえの無い友を見捨てることなど、出来ないでしょう?」
何の迷いもなく放たれたその言葉。それを受けて、アレン様の表情がこの会議室で会って始めて緩んだ。
「……ならばリント、彼が我々やマーブック地方の民たちに危害を与えないものであること。そして、我々の仲間として迎えても問題ないということを証明して見せてみろ! 数日の猶予を与えてやる。武芸を磨かせるでも、あらゆる知識を吸収させるでも、どんな形でも良い。その間に、私を納得させて見ろ!!」
――こうして、この世界での大河くんの未来を左右する数日間の幕は切って落とされた。




