11-2
「優莉、とりあえず落ち着いて!」
「でも、でもこのままじゃ大河くんが!!」
見上げて高丘先輩の顔を下から望みながら、私は無我夢中に叫んでいた。高丘先輩だけが、頼みの綱だった。
高丘先輩は、そんな私を両肩を掴んで自分の身体から引き離す。そして、顔の位置を合わせるように少し屈みながら、透き通った瞳で私を包む。
「何があったのか教えてくれ! 優莉がその調子じゃ、出来ることも出来なくなっちゃうよ!?」
その言葉に、私の身体は一瞬のうちに硬直した。最悪の事態が、否が応にも脳裏に映し出されて、とめどなく漆黒の波が押し寄せてくる。
「いや……大切な友達なのに……」
自分が傷つくのは……嫌だ。……でも、大切な人が傷ついていくのはもっと嫌。自分の無力さをこれでもかというくらいに痛感し、思わず両手で顔を覆ってしまう。
そのとき、そんな私の頭に、温かな感触が伝わってきた。
――高丘先輩が、優しく私の頭を撫でていた。
「大丈夫……大丈夫だから」
「高丘先輩……」
まるで、魔法でもかけられたかのようだった。頭のてっぺんから、日だまりにいるような温もりが全身に染み渡っていく。感情の海が次第に穏やかになっていき、漆黒の波も立たなくなる。
「話してくれるね?」
手を下ろしてあらわになった私の表情を見て、高丘先輩は諭すように話し掛けてくる。小さく頷いてから、ようやく私は高丘先輩に現状を説明し始めた。
「……目が覚めたら、大河くんっていう現実世界の友達がいたんです」
「現実世界のって……じゃあ、あの文庫本を読んだってことか?」
「多分……そうだと思います。いきなりだったから何も聞けなかった…ですけど。私が目を覚ましたときにはもうステラさんも起きてて、大河くんを……どこかに連れていっちゃったんです。――然るべき処置を受けてもらうって」
「まぁ、そうなるだろうな。どうしてあの文庫本を手にすることになったのかはわからないけど、砦の中に出てくるなんて、その『大河くん』って人もついてない――って、ちょっと待った。『大河くん』って……もしかして、諸岡大河か!?」
「大河くんのこと……知ってるんですか?」
「やっぱりそうなのか……。知ってるも何も、大河は環の弟だよ。優莉こそ知らなかったのか? ……って、環のこと知らなかったんだから、当然か」
「諸岡先輩の!? そうだったんだ……あっ、もしかして!!」
初めて知った、大河くんが諸岡先輩の弟だという事実。その事実から、自然とある一つの推論が浮かび上がってきた。そしてそれは、高丘先輩も同じようで。
「あぁ。多分、環が怜也から受け取ったあの紙袋――あの中に、文庫本が入ってたんだろう。それを何でかはわからないけど大河が読もうとした……」
「大河くん……」
「……とにかく、何とかして大河を助け出さないと。傷つけられたりすることはないだろうけど、それこそ一人で砦の外に出されたりしたら、あいつの身が危ないからな」
――高丘先輩の真剣な眼差しが、事態の重大さを現しているように思えてならなかった。




