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環と共に辿り着いた校門前。……しかし、そこに優莉の姿は存在しなかった。軽く周囲を見渡してみるけど、どこにもいない。
おそらく、優莉は校門から外へと出てしまったのだろう。まぁ、俺が教室の窓から眺めていたときにはもう校門の前まで来ていたのだから、当然といえば当然の結果だろう。
「もう外に出ちゃったみたいね、水上さん」
「そうみたいだな。……とにかく、学校の周辺を探してみよう。多分まだそんなに遠くまでは行ってないだろうし」
「そうね。……多分駅方面に向かってるでしょ。水上さん、自転車に乗ってはいなかったんでしょ?」
「あぁ、そういえば乗ってなかった」
「そういえばって……。まぁ、とにかく駅までは一本道なんだから、その道を進んで行けばきっと会えるでしょ。――急ごっ!」
環はそう言ってすぐに校門を通り抜けるべく走りはじめる。そしてその後を慌てて追いかける俺。
校門を出てすぐの道を左にずっと進んでいくと、隆総の最寄駅である隆山駅に突き当たる。おそらく優莉はその隆山駅に向かって歩みを進めているに違いない。
早速歩道を走って、少しでも速く優莉のもとへ――と思うんだけど、残念ながら学校前にあるこの道の歩道はこの時間帯、物凄い混雑を見せている。そのせいで、とてもじゃないけど歩道には全力疾走できるようなスペースがないんだ。
それでも歩道にいる学生たちを掻き分けながら、優莉目指して進んでいく。
「――ねぇ、別に変な意味で聞くわけじゃないんだけどさ。……何でそんなに水上さんのこと気にするの?」
そんな時、ふと環がそんな質問を投げかけてきた。途中から先行する状態になった俺の後ろから聞こえてきた声。環の表情は窺えないけど、その声はとても冗談を言っているようには聞こえない。
……環は今、こうして俺と一緒に優莉のことを探してくれている。そして、優莉のことを心配してくれている。
最早、環は俺と優莉にとって間違いなく『部外者』ではないんだ……。
――だから俺は、環に言える限りの本心を伝えた。
「悪い、詳しくは言えないんだけど……俺と優莉は同じ境遇に立たされた仲間なんだ。同じ目標に向かって進むことになった、仲間なんだよ。……だから、放っておくことなんか出来ない」
「仲間……ねぇ」
「それに――」
「ん? 何?」
「それに、何故かわからないけど、何か優莉といるとホッとするから……」
話しながらも足を止めずに進んでいると、歩道を歩く学生の数も少なくなり、だいぶ視界がひらけるようになった。
そして、そのひらけた視界の中に、ようやく俺と環は目的の人物の姿を発見することに。
「優――」
「水上さんっ!!」
俺の声を遮るように叫ぶ環。その声に反応するように、視線の先にいる人物はこちらを振り向く。
――驚きの表情を見せる優莉が、涙を溜め込んだ瞳でこちらを見据えていた。




