7-8
周囲からの恐怖の襲撃に耐え続け、ようやく担任の先生から今日の投獄生活の終わりを告げる号令が掛けられたのは、ついさっきのことだった。
私はいつものように素早く荷物をまとめ、人目を避けるように教室から出る。小走りに廊下を進み、一段抜かしで階段を降りていく。
――学校から出さえすれば、この恐怖の大半からは解放される。
そのことがわかっているからこそ、私は少しでも早く学校の門を通過しようと急ぐ。
昇降口まで辿り着いて下駄箱を開けると、そこにはまたあの丸められたルーズリーフが。……でも、こういう風になっていることは予想していたから、少しも驚くことは無い。
丸められたルーズリーフは無視して靴だけ取り出す。……ご丁寧に靴の中にまで丸められたルーズリーフが押し込まれている。
歯を食いしばりながら靴の中の丸められたルーズリーフを放り出し、乱暴に靴を履いて昇降口から飛び出す。
空は相変わらずの快晴だけど、私の心は少しも晴れていない。学校に来れば、毎回のように嵐のような天候。
でも……それでも今日は少しだけ夢のような時を過ごすことができた。あの、屋上でのひと時は、私の心に久々の晴れ間を呼びよせてくれた。
校舎と校門の間で膝に手をついて肩で息をしながら、その時のことを想起する。そうしていると、何だか少しだけ心の空模様が明るくなったような気がする。
けして、あのひと時は夢なんかじゃない。だって、こんなにも私の脳裏に高丘先輩と諸岡先輩の笑顔が鮮明に映し出されているのだから。
「――私……まだ頑張れるよね?」
自分自身に言い聞かせるように呟きながら、私はゆっくりと校門に向かって歩き出した。
+ + + + +
「高丘、お前今日も午前の授業中寝てただろ?」
教室の窓から快晴の空を眺めていると、背後からそんな台詞が俺に向けられた。毎日のように聞いている、クラスメイトの三浦瞬の声。瞬は一年の頃から同じクラスで、何かと話しの合う良い友達だ。
「あぁ……まぁな」
「お前、いくら勉強出来るからって、こう毎日居眠りしてたら流石にマズいんじゃないのか?」
「まぁまぁ、そう固いこと言わずに。……それより、今日もいつもの頼むよ」
俺は心配してくれている瞬に向けて、両手を合わせてお願いのポーズをとる。ここのところ毎日のようにしている、お決まりのポーズだ。
「ったく、しょうがねぇな。……ちゃんと全部写してあるから。ほらよっ」
すると、瞬は軽く呆れながらも、しっかりと用意してくれていたものを手渡してくれる。――俺が授業中寝ていた教科のノートだ。
「サンキュ! マジで助かるよ毎度」
ホント、瞬には感謝しっぱなしだ。瞬は俺に『勉強が出来る』と言っていたけど、それは紛れも無く瞬が貸してくれるノートのおかげ。このノートが無かったら、俺は間違いなく赤点の常習犯になっているだろう。
俺が笑顔で感謝の意を伝えていると、瞬は呆れ顔を真剣なものへと変貌させていく。そして、何やら言うのを躊躇うような仕草を見せながらも、意を決したように話しだす。
「――なぁ高丘、お前……今日何かやらかしたのか?」




