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笑い疲れるってこんな感覚だったんだと、本当に久しぶりに気付かされた気がする。
笑いすぎて腹筋が痛い。……普段ほとんど笑ってなかったから、尚更そう感じるのかもしれない。
金網に寄りかかりながら、爽やかな風を全身に浴びる。
あまりの心地よさに、再びお腹の虫が鳴り始める。……けど、さすがにもうそれに対して笑うことはなかった。
その代わり、諸岡先輩が何かを思い出したかのように手をパンと叩いて話しかけてくる。
「――そうだ、買ったパンの残りがあるから、それ食べなよ!」
諸岡先輩は私の返答を待つことなく、出入り口の方に向かって行き、その側面にあるハシゴに手をかけた。
突然の行動に、慌てて後を追う私と高丘先輩。
すると、諸岡先輩はハシゴに手をかけたままこちらを振り向いて、ニヤッと笑って忠告する。
「高丘くん――覗いちゃダメよっ♪」
「の、覗かねぇよバカ!!」
「ホントにぃ? 水上さん、しっかり高丘くんのこと見といてねっ」
「は、はい! バッチリ見ておきます!!」
「ゆ、優莉……」
私の言葉を受けて満足気に頷くと、諸岡先輩は颯爽とハシゴを登っていく。
その間、私は諸岡先輩が言ったことを守るべく、高丘先輩を凝視。
手のひらを天に向けて降参のポーズをとる高丘先輩の姿に、何だかちょっと優越感を感じちゃうのは……ちょっと申し訳ないかな。
そんな高丘先輩の姿を見ていると、すぐに諸岡先輩はハシゴを降りてきた。
ハシゴの途中まで降りて、そこから勢いよくジャンプ。ふわっと舞うスカートを……うん、大丈夫。高丘先輩は見ていない。
「おまたせっ! 水上さん、高丘くんが変な気を起こしたりしてなかった?」
「はい! バッチリ見てましたから!!」
「だから覗いたりなんかしないって言っただろ!!」
「あら、そうなの。……折角パンチラチャンスを演出してあげたのにぃ」
「なっ!? そ、そんなチャンスいらねぇって!!」
明らかにうろたえている高丘先輩の姿に新鮮さを感じながら、私は諸岡先輩が差し出してくれたクリームパンを受け取る。
折角好意で渡してくれたんだもん。……無駄にしちゃいけないよね。それに、何よりこのままじゃまた私のお腹が悲鳴をあげそう。
素直に袋を開けてクリームパンを頬張る。諸岡先輩、おいしいです。
何も告げなくても表情で察してくれたのか、諸岡先輩は微笑みながら金網の方を指差した。
その仕草から私なりに判断して、口をもごもごさせながらも金網の方へと歩いていく。
私を真ん中に、三人揃って金網に寄りかかる。そして私の口の中が一段落ついたころ、ふと諸岡先輩がそっと囁いた。
「水上さん、さっきの話だけど……高丘くんがナイトなんだったら、私は魔法使いになってあげるわ。――とってもキュートな正義の魔法使いにねっ!」
そんな、どこか冗談に聞こえてしまうような言葉。
でも、諸岡先輩の表情を見たら、とても冗談で言っているようには思えなかった。……慈愛に満ちた、何とも朗らかな笑み。
――その笑みに応えるように、私はパンに包まれたクリームに口づけした。




