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何だか、こんなにも楽しい学校での昼休みは初めてだった。
どこか恥ずかし気な表情を見せる高丘先輩に、その様子を見て笑っている諸岡先輩。
見上げれば快晴の空が広がっていて、暖かい日差しが私を包む。
そう、こんなにも、温かかったんだ。……今まで全然気付かなかった。
見るもの全てが、これまでとは全くの別物に見える。
無機質で、ただただ冷たいものだと思っていた。学校の校舎だけじゃなくて、クラスメイトたちも、先生たちも。
……でも、きっと今見たら少しは違って見えるような気がする。それくらい、世界が変わって見えた。
そんな気持ちの高揚からか、諸岡先輩が高丘先輩にじゃれている姿を見て、私はその中に入っていきたくなった。
――ちょっと高丘先輩を驚かせちゃおうかな。
なんて事が浮かんでくることに、私自身が驚いてしまう。
気付かれないようにそっと高丘先輩の背後に回って、タイミングを見計らって脇の下をくすぐっちゃおう。
行動方針を決めると、私はすぐさまそれを実行に移した。そっと高丘先輩の背後に回りこんで……そして――。
――そして思いっきり高丘先輩の脇の下をくすぐろうとしたとき、何ともタイミング悪く盛大に鳴り出す、私のお腹。
その音はしっかりと高丘先輩と諸岡先輩の耳に届いていたようで、二人同時に私に視線を向ける。
もう、凄く恥ずかしくて、みるみるうちに顔が熱を帯びてくる。……きっと顔は真っ赤になっちゃってるよ。
「あはははは! 水上さん、お昼ご飯食べてないの?」
「ゆ、優莉、そんなマンガみたいに腹鳴らして! あはははは!!」
私のお腹よりも盛大な笑い声をあげる二人。……もう、恥ずかしくって顔を合わせられない。
でも、一向に笑うのを止めない二人に、だんだん苛立ちを覚えてきた私。
「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですかっ!!」
「だ、だって、ハハ……そんな盛大にさぁ」
「ちょっと高丘くん、そんなに笑っちゃ……アハハ、水上さんが可愛そうよ」
もぅ、そんなに笑わなくたっていいじゃない!
私だって、好きでお腹鳴らしてるんじゃないんだから!!
……ホント、二人とも笑いすぎだよ。
お腹を抱えてずっと笑っている二人を見ていたら、何だか苛立ちを通り越してこっちまでおかしく思えてくる。
――いつの間にか、私も二人と同じように笑い声をあげていた。
「もぅ、いい加減笑うの止めてくださいよ! 何か……あはは、こっちまでおかしく思っちゃう」
「はは、何で優莉まで笑い出すんだよ! よ、余計に……ははは、笑いが止まらなくなっちゃうだろ?」
「ホントホント! もう……あははは! 水上さん、私を笑い死にさせる気ぃ?」
ホント、私何やってるんだろ?
でも今、すっごく楽しい。
――私たちの笑い声を歓迎するかのように、心地良い風が屋上の空間を爽やかに流れていった。




