7-4
「……えっと、改めて紹介するけど、こいつは諸岡環。俺と同じ2年A組で、小・中と同じ学校に通ってた……まぁ腐れ縁ってヤツだな」
「腐れ縁だなんて、またヒドい言い方ね」
「なんだよ、本当のことじゃないか」
諸岡先輩が姿を見せてから少し経って、ようやく高丘先輩の怒りが治まったころ、高丘先輩は改めて私に諸岡先輩のことを紹介してくれた。
何だかいちいち話し方がトゲトゲしく思えるけど、その表情は笑顔。……きっと、本当に仲が良いんだろうなぁって思う。
小・中と同じ学校で、高校になってもまた同じ学校に通う仲の良い友達同士……何だか、とっても羨ましいな。
「ねぇねぇ、それより水上さんのこと教えてよ! どうして高丘くんと知り合ったのかとか、どうしてその高丘くんと二人っきりで屋上に来たりしたのかとか。私、すっごくきょ〜みあるんだけどなぁ!」
「えっ? あの、それは……」
「環……」
諸岡先輩の笑顔での質問に私が言葉を詰まらせているのを見て、高丘先輩は真剣な表情で諸岡先輩を制止する。
その姿に、私は何だか少し悲しくなった。だって――。
――また、高丘先輩に気をつかわせちゃってる……よね。
高丘先輩は本当に優しい。今までだって、ずっと私のことを気遣ってくれていたし。
多分今のだって、さっきクラスで私がクラスメイトたちに冷ややかな視線を向けられていたことを無理に言わないで済むようにするための配慮なんだと思う。
……でも、このままずっと高丘先輩に甘えてていいの?
ずっと、高丘先輩に助けられてるだけでいいの?
私……高丘先輩に何かしてあげてる?
ダメだ……。私、ただ助けられてるだけだ。
……少しも自分で解決しようとしてない。
多分、高丘先輩のためになる『何か』をすぐにすることはできないと思う。
……でも、少なくとも自分のことで高丘先輩に迷惑を掛けるようなことは避けないと。
その為には、自分で……自分で一歩、踏み出さないといけない……よね。
――だから、怖がってないで自分で伝えないと。
「あの……高丘先輩は、私を助けてくれたんです。その、私、クラスで一人浮いちゃってて、クラスメイトからあまり良い目で見られてないんですけど、高丘先輩がうちのクラスに来てくれたときに、そんなクラスメイトたちから守ってくれたんです。……それで、教室には居づらいだろうって、ココまで連れてきてくれたんですよ」
私が視線を落としながらも何とか伝えると、諸岡先輩は何だか申し訳なさそうに言葉を返してきた。
「……そうなんだ。……何かゴメンね。その、何か軽い気持ちで聞いちゃって」
「い、いえ、そんな……」
「でも……ふ〜ん、じゃあ高丘くんは水上さんを守るナイトみたいなものなのね」
「お、おい! 何言って――」
諸岡先輩の言葉に、慌てて突っ込む高丘先輩。
……でも、諸岡先輩の言葉は、やけに私の中にすんなりと浸透していって。
何かこう、素直に納得できる言葉だなぁって、思えて。
「――はい、多分、そうなんだと……思います。高丘先輩が居なかったら、きっと私は、今こうして諸岡先輩とこんな話をすることなんて出来なかったと思いますから」
――私の言葉に呆然としている高丘先輩の姿が、何だかやけに可愛らしいものに見えた。




