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慌ててその声が聞こえてきた方を向くと、屋上への出入り口を囲うコンクリートの上に人の姿が見えた。
涙で滲んじゃってて顔とかはよくわからないけど、スカートをはいているみたいだから女性なのは間違いないと思う。
何とか涙を拭って、改めてその姿をよく見てみる。
すると、その人はやっぱり女性で、出入り口の上の端っこに足をぶらっと垂らしながら座っていた。
その女性はやけにニヤニヤした笑みを、こっちに――多分、高丘先輩に向けている。だって、少なくとも私の知っている人じゃないもん。
「た、環……お前、何でこんなところにいるんだよ?」
高丘先輩は、その女性の姿を確認すると、苦渋の表情を見せながらそんな言葉を投げかける。
頭を撫でてくれていた手が離れて、何だか寂しい気分になる。
「何でって、別にどこに居ようが私の自由でしょ? ってか、そういう高丘くんこそ立ち入り禁止の屋上で後輩の女の子と二人きりだなんて、いけないんだぁ♪」
「な、何言ってんだよ!? 別に俺は……」
「あれれ〜? そのわりには結構良い雰囲気だったじゃない? その子――えっと、優莉ちゃんだっけ? ……泣かせちゃうし、頭撫でて『無理に止めなくてもいいんじゃないか?』だなんて、ホント高丘くんって罪なヤツ♪」
「お、お前……もしかして、俺らの会話全部聞いてたのか?」
「もっちろん! だって、高丘くんたちが来る前からココに居たんだもの」
女性はそう言うと、出入り口の上からヒョイと飛び降りて、私のもとへと近づいてくる。
そして、手が届くくらいの距離まで近づくと、私よりも身長が高いからか少し身を前かがみにして話しかけてきた。
「はじめまして! 私、諸岡環」
「は、はじめまして……。水上……優莉です……」
「よろしくね、水上さん。……あ、高丘くんはクラスメイトで、そんでもって私のカ・レ・シ♪」
「えっ……そうなんですか?」
私が諸岡先輩の言葉に何の意識もなく自然にそう返していると、隣で思いっきりずっこける高丘先輩の姿が。あまりのずっこけ方に、思わず手を貸したくなってしまうくらい。
「ちょっと待て! いつ俺がお前の彼氏になったんだよ!?」
「違うん……ですか?」
「あぁ、環が言ったことはデタラメだから、優莉は信じないでいいぞ」
「またまたぁ♪ ……もぅ、あんなに深〜く愛し合った中じゃない」
「だからっ、どうしてそんなありもしない事を!!」
「そ、そんなに深い仲なんですね……。あっ、ご、ごめんなさい! じゃあ私が高丘先輩と一緒にいるの、あまり良くないですよね……」
「ゆ、優莉、だからそれは違うんだって!」
私の申し訳ないと思っている姿に、メチャクチャ慌てている高丘先輩。
その様子を、諸岡先輩は何だかつまらなそうに眺めていた。
「――な〜んだ。せっかくカマかけてみたのに、水上さんって高丘くんのカノジョってわけじゃないんだ」
「えっ!? そ、そんな!! ……めっそうもない……です」
「こんのぉ! ――いい加減にしろ、環っ!!」
諸岡先輩ののほほんとした姿に、血相を変えて怒り狂う高丘先輩。
――その様子に、諸岡先輩は面白そうに口に手を添えて笑っていた。




